「市長として中退ではなく除籍でしょうか」
田久保市長は7月に一度表明した辞意を撤回した会見で、「わたしに与えられた使命を全身全霊を傾けて実現してまいりたい」と上ずった声で続投の決意を強調したことがあるが、その時とは涙の量が明らかに違う。あたりにはたちまちカメラのシャッター音が響き、フラッシュが光る。
田久保市長は、騒動で迷惑をかけた職員だけでなく、自分に好意的な市民との出会いを思い出しても泣いた。
「市民の皆さんが話しかけてきていただいて、声援送ってくださって『頑張ってください』『負けないでください』って(言って)いただいて、嬉しかったです。
さっきも(不信任決議の文面で)『平然としてる』とか『図々しい』とかありましたけれども、実は決してそういうわけではなくてですね、街中や食事してる時も知らない方が声かけていただいて、ちょっと思い出すと泣けてきちゃうんですけども…」
そう言って顔を覆う田久保市長。これまで頑なに隠していた感情が一気にあふれ出たかのようだ。
見かねた秘書広報課の職員がティッシュの箱を差し出すと、受け取った紙ではなをかみ、また市長は話し続けた。
そんな中、TBSサンデージャポンの名物レポーターがいつものように「市長を務めたことの卒業証書は欲しいですか」とツッコミを入れる。
これに田久保市長は「私の市長としての卒業証書は市民の皆さんからもすでに頂いてると思っております」と優等生的な答えを返す。
しかし在任5カ月での卒業は早すぎる。サンジャポがさらに「任期を務められなかったことでの中退では?」と切り込むと、市長はムッとすることもなく「そうですね。私からの申し出ではなく今日は議会の決定を受けてのことですので、除籍ということなのかなという風に思っております」と返答したのだ。
東洋大から除籍されながら怪しげな“卒業証書”を見せて大卒と名乗ったのが騒動の原点となる学歴詐称疑惑だ。ここでまた除籍という言葉を使う自虐ネタには報道陣も虚を突かれてずっこける。感情が高ぶっても会見の主導権はメディアに渡さないという田久保市長流の発信術かもしれない。
中島議長は「退学だと思いますよ!」と怒り
いっぽうで会見のさなか、田久保市長は何度も「今後は立場が変わる」と口にした。「やり切ったという思いでいっぱいです」とも述べ、出直し長選に出ることをあきらめたかのようにも見える。
そこで集英社オンラインの記者は念のため「次の市長選にはもう出ない?」と確認してみた。
ところがこれには田久保市長は「進退については、例えば市長選に出るとか出ないとかを申し上げる時点ではないと考えています。(支持者の)皆さんと一緒に考えていきたい」と繰り返し、未定だと強調するのだ。
肝心の疑惑についても、「卒業証書」とされるものの公表や説明を求める声には「刑事告発を受けて捜査の対象になっており、公式の場で発言できないので(答えないことを)ご容赦いただきたいと」とこれまで通りのゼロ回答。疑惑解消に役立つ発信はなかったのが実態だ。
田久保市長の囲み取材が終わった後、次に記者に囲まれた中島弘道議長は、市長が仕事を「やり切った」と言ったと聞かされると「私たちから見れば、何も本当にやってない状況ですので、本当にこの4カ月 、満足のいく姿勢ではなかったと思っております」と憤った。
記者からは中島議長にも、田久保市長は市長職を除籍されたか中退したか、それとも卒業したか、との質問が出た。これに中島議長は「退学だと思いますよ!」と怒りを込めて言い放った。
退学も除籍も途中で辞めるという点では変わらないが、田久保氏は“再入学”を試みて選挙に出るのか。騒動は簡単には終わらない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

