今回のテーマはテニスシューズの「インナーソール」です。新しくシューズを買えば、最初から当たり前に装着されているインナーソールを、わざわざ別売で求めるメリットは何なのでしょうか?
皆さんがお店でラケットを購入する時、自分の好みやスタイルによって「ガット(ストリング)はどれにしますか?」と聞かれますよね。でもテニスシューズの場合はどうでしょうか? きっと多くの人が、買ってそのままを履くでしょう。
でもシューズを「買ったまま」で履くのは、極端に言うと「ストリング張り上げ済みのラケット」を買うのと同じようなものです。シューズだって、自分に最適な「インナーソール」を選んで使うことができるのです。
筆者の知る限り、日本で最大規模のテニスシューズ売り場を持つ「ウインザーラケットショップ渋谷店」のシューズ責任者である笠原将充氏は、月間数百セットのインナーソールを売ると言います。彼に「どのくらいのお客さんがシューズ購入と同時に別売インナーソールも買いますか?」と聞いてみました。
「ご来店のお客様には、綿密なフィッティングをして購入いただきます。その段階で別売インナーソールの存在についてお話しすると、かなり多くの方がシューズと同時にお買い上げくださいます」
「特に女性の方は、自分に適したインナーソールの必要性をご存知です。またジュニアプレーヤーの親御さんも、お子さんの足が安全に成長することや、ケガ防止のためには、多少の投資は当たり前と考えるケースが増えています」
テニスシューズって自分にベストな状態で売られているわけではないんですね。
テニスシューズにとって衝撃緩和の「クッション性能」は重要な必須機能ですが、クッション性能とクッション感は違います。クッション性能は主にミッドソールが担うもので、履いた瞬間に「柔らかぁ~い」という感触がクッション感です。
当然シューズメーカーも足裏をしっかり支えることが必要と知っていますが、「試履き」での印象を良くするため、クッション感を優先せざるを得ないのが実情です。我々はそれをわかった上で自ら対策しなければならないし、そういうアドバイスをしてくれるスタッフがいる店を探したいですね。
テニス専門店などで別売される、いわゆる「挿し替え用インナーソール」には大きく分けて2種類あります。シューズメーカーが交換用として販売している物は、デフォルトのインナーソールの表面が擦り切れたり、インナーソールに穴が開いた場合に使いますが、足裏感触の復活に留まります。
一方、それとは大きく役割が違うのが、足裏のクッション感を少なめに抑える「足骨挙動制御系」のインナーソールです。足の機能を正しく導く、あるいは挙動を矯正するには、足裏を硬めにしっかり支える必要があり、履いた瞬間だけのクッション感では、足裏の挙動をコントロールすることはできないのです。
競技者は「安定性確保」と「蹴りパワーのレスポンス」を得るために、硬めのインナーソールが必要ということを知っていますが、足に痛みや異常を感じる方にも、硬めのインナーソールが有効です。
足の異常を放っておくと変形が進行し、歩くだけで痛みを感じる場合があります。こうなったら足専門の外科医か、足のことを熟知したシューフィッターに相談することを勧めますが、異常な挙動を正常に近づけてくれる機能矯正系のインナーソールもあります。
現在、一般に広まっているのが「スーパーフィート」と「シダス」の2大ブランド。どちらも足医療系オーソティクとしてスタートしたブランドですが、正常に機能しなくなってしまっている足を挙動補正してくれるアイテムであり、それを必要としている人がたくさんいるのです。特にスポーツでは、足にかかる負担が大きく、障害を抱えやすいため、その必要性が広く認知されています。
それぞれ足挙動制御の考え方に違いがあり、シダスはアーチサポート系。スーパーフィートは足骨の挙動制御系の違いがあります。共に主張があり、どちらが自分に適切かは、信頼できるシューフィッターやフットドクターに相談しつつ選んでいきましょう。
高機能インナーソールはケガしてから使う人もいますが、ケガを防ぐために使っているジュニアもたくさんいます。周囲の子たちがどんどん足に障害を抱えていく中、高機能インナーソールを使っているジュニアは、明らかに故障しづらいようです。
ジュニアを育てる親としては、消耗品のシューズを頻繁に買わなければならない上に、特に高価格のオーダーメイド・インナーソールなど、経済的負担が大きくて大変ですが、子どもの将来を考えると、足の安全を守ってあげるのは親の務めかもしれません。学習塾に通わせることを考えれば、はるかに軽微な負担と思います。
シューズは非常に大切なギア。高額な消耗品ではありますが、それだけに別売インナーソールを併用して、最高な状態に仕上げ、足を正しく機能させることで、足とシューズを守ってあげましょう。
文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2024年4月号より抜粋・再編集
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