既存の映画から離れて「ワラスボ」を参照した
──宇田さんは練馬区のPRアニメ『タイムカプセル+』のインタビューで、小学生のときに見た『スター・ウォーズ』の映像に圧倒された、『ジョーズ』の台詞を全部覚えるほど影響されたとおっしゃっていましたが、今回の劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』でも参考にされた映画はありますでしょうか。
宇田 ないと言えばウソになりますけど、意図的に既存の映画のネタを入れたりする部分はほとんどなくて、逆にそこから「離れよう」ともしていたんです。
──そうなんですね。見ている側としては、シチュエーションは『宇宙戦争』っぽくもありますし、宇宙人が音に反応することは『クワイエット・プレイス』も思い出したりもしました。
宇田 目の見えない怪物が音に反応するっていうのは、映画ではなく「ワラスボ」という、佐賀の干潟にいる奇妙奇天烈な魚から影響を受けているんです。ワラスボは目はあるにはあるんですけど、ほとんど見えてないんですよね。
──ワラスボは見た目が映画の『エイリアン』に似てると言われていますね。(筆者注:第2シーズンの『リベンジ』 の第6話の競艇レースシーンで「ワラスボターン」が披露されており、峰竜太選手によるワラスボターン実演動画も公開されていました)
宇田 そうですね。だからこそ、最初にエイリアンと戦う話が出てきたときに、ワラスボがやっぱり浮かんだんです。やはり、映画よりも佐賀にあるものからアイデアを得ていますね。
──宇宙人と宇宙船の見た目はオリジナリティーを感じさせました。
宇田 宇宙人や宇宙船の造形、さらには佐賀万博の会場のデザインは、フランス出身で日本でも活躍されているアートディレクターのロマン・トマさんにお願いしたんですよ。
既存の映画から離れようとしたのは、それらのデザインにもあったかもしれません。初期の段階でいろいろな方に案をもらったりしたんですけど、それらはやっぱり僕らが想像する「メカメカしい宇宙船」だったんです。そこから「宇宙のテクノロジーなんだから、地球の概念を持ち込むのをやめよう」「機械的なものより有機的な感じがいい」という話し合いをしたり、監督の石田くんからは「T字カミソリみたいのが縦に来るのはどうですか?」という提案もありましたね。それらを踏まえてロマンさんにデザインしていただいたことで、オリジナリティーが持たせられたと思います。
──そういえば、映画の冒頭で巽幸太郎がしている変顔の元ネタってあるんでしょうか。
宇田 元ネタはないです。あれは佐藤くんのアイデアで、「質問に答えられません」ということで変顔をしているだけ。意味はないですね。
──意味ないんかい(笑)! でも、それも巽幸太郎らしくていいですね。
宇宙人に感情移入をさせてはいけないと思った
──『ゾンビランドサガ』は全体的にコミカルでかわいい作風だと思うのですが、今回の映画の宇宙人の見た目や動きは、いい意味で容赦がないほどに気持ち悪かったですね。
宇田 その気持ち悪さにはちゃんと意図があります。そもそも『ゾンビランドサガ』という作品はそもそもがぶっ飛んだ設定ですが、テレビシリーズを含めて、ストーリー部分ではけっこうリアルなことをやっているんですよ。キャラクターの内面だったり、アイドルとしてのアイデンティティだったり、ときにはすれ違いによるケンカがありますからね。
そういった部分が『ゾンビランドサガ』の本質とするならば、「映画での宇宙人との戦いもファンタジーでは済まされないんじゃないの?」っていうのが疑問としてあったんです。どうしたってフランシュシュが活躍して、最終的には宇宙人を退治しなくちゃいけないと考えたときに「宇宙人に感情移入させてはいけない」と思ったんです。
同じようなことは『ワンピース』でも注意していて、ルフィが敵を殴ったときに、爽快感を持って見られるようにしなくてはならないと思っていました。今回の映画で、敵とは意思疎通ができない、感情移入の余地がないように描くというのは、絶対的な条件だったんですよ。それでこそ、フランシュシュが宇宙人を倒したときに、観客も「わぁーっ!」って一緒に喜べますからね。
──そうですよね。ある種の割り切りとして、敵を倒される存在として定めることも、エンターテインメントとしての正解だと思います。
宇田 ですから、映画の宇宙人を気持ち悪いと思ってくれたのであれば、僕ら的には成功したと思ってます。

