フィクションだけど現実も参照している
──映画化に当たってのアプローチで、これだけは決めていたということはありますか。
宇田 テレビシリーズの続編で、ファンムービーに徹するのか、それともストーリーをしっかり成立させるのかとスタッフと話し合ったときに、「やっぱりストーリーをしっかり成立させた方が良いね」という結論になったんです。もちろんテレビシリーズを見ていればわかるファン向けのネタはどんどん入れているんですけど、宇宙人侵略ものの物語としては、けっこうリアルになった気がします。
── 序盤に「これまでのあらすじ」も説明されますし、テレビシリーズを見ていなくても1つのエンタメ作品として楽しめる内容になっていましたね。
宇田 そういうふうに感じていただけるなら、すごくありがたいことですね。それでも、ゾンビがアイドルをやってるっていう事実を、テレビシリーズを見たことがない人が、どう受け止めるんだろうと心配もしてしまいますが(笑)。
── そのゾンビのアイドルが今回はさらに宇宙人と戦うのですから、確かにぶっ飛んでいますよね(笑) 。それでいてゾンビとアイドルの設定を生かしたアイデアがしっかりありましたし、エイリアンとの攻防戦はリアルに感じてハラハラできました。描写でこだわったことはありますでしょうか。
宇田 例えば宇宙人のメガネをかけると、赤外線的なもので感知していることが分かるシーンでは、実際にサーモカメラを借りてきて撮って参考にしていました。ただ、実際に花火をサーモカメラで撮ったら、ぜんぜんサーモカメラには花火が映らなかったりしたので、そこはウソをついている部分ですね。他には佐賀にこういう危機が訪れたときに、自衛隊や危機管理センターがどう動くのかという部分は、専門家にヒアリングをしました。本編では見えにくい部分かもしれませんが、実は時間をかけて検証しているんです。
──「佐賀が侵略を受けて、他の国はどうなるんだ」みたいな、政治的なことも少し描かれてましたね。やはり大枠の設定はぶっ飛んでいながらも、細部は現実を参照しているからこそ、『ゾンビランドサガ』は面白い作品になっているのだと思い知りました。
宇田 他にも第2シーズンの『リベンジ』の第10話では水害が出てくるのですが、実際に佐賀で起こった水害の日にちとほぼ合ってるんですよ。駅前不動産スタジアムでのライブの日を設定したときに、さかのぼって実際の佐賀の天気を調べていて、前日に小雨が降っていた日に、劇中でも小雨を降らせたりしています。そうしたところでフィクションでありながら現実も描いていますし、佐賀の人たちを鼓舞したいという気持ちもありましたね。
フランシュシュは劇中で「戦いに行っていない」
──今回の映画は、アニメシリーズではしゃべれなかった山田たえが「覚醒」することも物語の焦点になっていますね。
宇田 どういう形でたえが目覚めるかとかは、話し合いのなかでどんどんアイデアが出てきて、決めていった感じですね。
──姪っ子と甥っ子が、あの予告編を見て「たえちゃんがしゃべってる!」ってめちゃくちゃびっくりしたんですよ。
宇田 姪っ子さんと甥っ子さんには『美少女戦士セーラームーン』を見せてあげたらいいかもしれませんね(笑)。
──三石琴乃さんの声が一緒ですからね(笑)。初めこそ宇宙人と戦うのはほぼたえだけでしたが、フランシュシュのみんながそれぞれの個性を生かしてバトルする流れも良かったです。
宇田 でも、実はフランシュシュは劇中で「戦いに行っていない」んですよ。彼女たちは、たえを連れ戻したいだけなんですよね。結果的には宇宙人との攻防戦はありますけれど、それは彼女たちが望んでいるわけではありません。たえちゃんと合流して、たえちゃんの目的も果たされているならば、「とっととここから帰りたい」っていうのが、彼女たちの本音ですから。
また、サキやゆうぎりは「実戦」の経験があるといえますが、他のキャラクターは「戦おうって言われたって困っちゃうよね」っていう話がシナリオ会議のときにもあったんです。そこは彼女たちの「これまで」もあって活躍ができるようにも気を遣いました。

