オールラウンダーたれ

百瀬はキロロスノーアカデミーの校長を務めて9年になるが、デモンストレーターとして指導に注力してきた年月は19年にもなる。その間、インタースキー日本代表としても活躍。
技術選の成績よりも指導者である自分を常に意識してきたという。といっても、百瀬のいう「指導」は、スキーの滑走技術を単に教え込むものでは、決してない。
「とにかく『スキーって本当に楽しい』ということを伝えたいんです。僕ね、2011年からずっと北海道で春先に『ジュニアオールラウンダーチャンピオンシップ』という大会をやっているんです。僕が、まず燃えつき症候群で一度スキーから離脱してるからなおさら、そういう子どもたちを増やしたくなという思いがあって。
スキーってやっぱり本当に楽しいから、ずっと楽しいスキーをして欲しいなって気持ちから大会を企画したんです。世界を目指す子供にとって専門分野を追求していくことは大切なんですけど、滑ることを素朴に楽しむことも含めて、スキーは基礎、アルペンだけじゃないし、フリーライドだけでもないので。
アルペンの子もたまにちょっとコブ滑ってみようよとか、コブ滑ってるモーグルの子たちもたまに大回りしてみようよ、基礎の子たちもポール滑ってみようよ、面白いゼって。オールラウンドに滑りを楽しむ大会です。子どもたちは、もっと幅を広げてスキーの時間を作ったほうがいいんじゃないかなって思うし、種目の垣根を超えた楽しい交流の場が作れたらいいなって。

最近、すごくやっててよかったなって思うのは、最初は基礎の子たちだけだったところにアルペンの子が入ってくるようになって、最近はフリーライドの子たちも来てくれるようになった。すると子供たちのネットワークがぐっと広がって他のジャンルの子たちとコミュニケーションがすごく出てきたんですよ。で、インスタで友達になったり、大会中一緒にリフトに乗って楽しそうに喋っている姿を見てると、ああ大会やってきてよかったな~って実感してます」

具体的には、どんな内容の大会なのか?
「一つにはコブの中にゲートを立てて、タイムを競ってGS 大会ですね。2種目めがポールを全部外して同じバーンでフリーライド。3種目めはコブでの自由滑走?? まさに基礎、モーグル、フリーライド、アルペン、全部のカテゴリーが集約されてる。本当に雪山を楽しめる技術っていうのは、こういうもんだよっていうことを体験してもらうんです」
アルペン競技から基礎スキーに入ったが、常にパウダーやバックカントリーも楽しんできた百瀬純平。まさに自身が基礎スキー界きっての「オールラウンダー」であった。百瀬純平にとって「スキーのうまさ」とは、「オールラウンドなスキル」。
「パウダー、カービング、コブ、あとジャンプ、こういうのができるとやっぱり本当のうまさってのが出てくるんじゃないかな。かっこよさも出てくるし。もちろん、コンマ1 秒を争うアルペンスキーもめちゃくちゃかっこいいんすよ。でも、アルペンはいわばF 1マシンじゃないですか ? でも、オールラウンダーのスキーは雰囲気が違う。どこでも圧倒的に走破していく無敵のRV というか、そういうイメージかなって。山まるごと楽しめたら絶対に楽しいじゃないですか」
子どもたちへの眼差し

「ツカサホームPOWDER FREERIDE ‘25 with Bonz Crew」
その眼差しが、未来ある子どもたちに注がれていることは、他の活動を見てもよくわかる。昨シーズン? 百瀬は昨年、北海道の仲間である児玉毅らと「北海道フリーライドネットワーク」を立ち上げた。

「2030年の東京オリンピックに向けて、北海道の子供たちにFWT大会に出れるチャンスを与えてあげたいというのが、まず目標であります。いま北海道にはFWT のポイントを取れるFW?とかのレースがないんです。
パウダー王国といわれる北海道にノーチャンスっていうのは、いかがなものかって。僕らがやってきたスキーの歴史を次世代に繋いでいくためにも、ここは大事だなと思っています。
とくにFWT がFISの傘下に入ったので今後、世界的に動きが出てくると思うので。北海道で生まれ育った僕らがチャンスを作ってあげたい。そんな思いから立ち上げたんですが、それは子どもたちにスキーの選択肢を増やすことにもなるし、世界に日本・北海道のフリースキーを強く発信できることにも繋がると思うんです」
