10代はアイドルグループ「チェキッ娘」の一員として活躍した熊切あさ美。グループ解散後はグラビアを中心に人気を博し、現在もバラエティー番組でタレントや俳優としても活動中だ。最近では「クインケ浮腫」という持病を告白したことや、「おひとり様生活を楽しみたい」といった発言で、同性からも支持を得るようになった。
芸能生活27年、そして45歳を迎えた今、グラビア撮影についての思いやメンタル面で気をつけていることを聞いた。(前後編の前編)
若い頃は下剤を飲んで撮影に
「最近は以前ほど撮影はしてないんですけどね」(熊切あさ美、以下同)
そう謙遜しながらも、グラビア撮影に意欲をみせる熊切あさ美。その体型維持の秘訣を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「ずばり筋トレですね。最初は本当にダイエットでやっていたんですけど、もう生活の一部になっちゃって。ジムに行ったらスッキリするし、健康にもいいし、ストレス解消にもなるので」
筋トレは7年、キックボクシングは10年続けているという。彼女はトレーニングについて笑顔でこう話す。
「40過ぎても身体が変わるっていうのがもう面白くて。45歳になった今も変わり続けてるんですよ。若いときは、歳をとってからやっても変わらないだろうと思っていたんですけど、結果が見えるほど楽しくて」
背中にできた筋肉の線。メリハリのある身体はまさに努力の賜物だ。自分の身体を育てていく感覚が、彼女の日々のモチベーションとなっている。
そんな熊切がグラビアアイドルとして本腰を入れ始めたのは、所属していたアイドルグループ「チェキッ娘」が解散した20代の半ばをすぎてから。当時のことを振り返ると「遅咲きだったので、焦りもありました」と話す。
「私、食後にお腹がポコっと出るんですよ。それがコンプレックスで、今はもちろんしないのですが、撮影前には下剤を必ず飲んでいました。下剤って常用していると癖になって、飲まないと便秘になってしまうからますます薬の量を増やすことになったり。自分の身体のことを全然考えていなかったな…と後悔してます。
それに『痩せる』という情報には、すぐに飛びついていました。中でも『お菓子だったらお腹が出ない』という変な噂を信じ込んでしまい、一時期食事は摂らずにスナック菓子やチョコレートなどばかり食べていたことがあります。むしろ肌が荒れてしまって、さんざんでしたけどね(笑)」
当時流行していたダイエット薬に次々と手を出し、極端な食事制限を繰り返す日々。
「痩せていることが美しい。細いことが当たり前」という強迫観念に追い込まれていた。
「きれいと言われている人たちはみんな細かったので、とにかく細くなきゃいけない、って。食事はまともに摂らなくて、摂るのはダイエットサプリくらい。一番ひどいときは、下剤じゃもう出なくなってしまい、浣腸をしてまで出したりとかもしてました」
今のグラビア業界に思うこと
熊切をはじめ、当時のグラビアアイドルたちをそこまで過酷なダイエットに駆り立てていたのが、写真修整の技術的限界だった。今では当たり前すぎて実感がわかない人も多いかもしれない。
「私が若いころは、まだ写真のレタッチ作業が一般的ではなくて、別料金が発生する専門的な領域だったんです。
『ちょっとウエストを細くできますか』『肌をきれいにしてください』ってお願いしても『ダメだよ、その作業料金だけでいくらかかると思ってんの』って言われるのが当たり前でした。
売上を見込めて予算が出るような有名人だったらやってもらえたのだと思いますが、普通のグラビアの子たちには無理な願いでした」
今では当たり前のように行われる修整作業も、20年前のグラビアアイドル業界では予算的に気軽にできるものではなかった。
「胸は水着などでなんとか盛れるんですけどね。私だけでなくて、当時のグラビアの子たちは下剤を飲んでいる人が多かったし、ウエストをどうにかして細くしたいと悩んでいましたね」
当時のグラビアアイドル業界の過酷ぶりを語ってくれた熊切だが、興味深いことに、「今の方が過激」だと指摘する。
「昔って、グラビアアイドルのデビュー当初は水着の生地の幅が大きかったんですね。それが、売れてくると生地が小さくなってくるんです。
でも、今のグラビアを見ていると、最初からとんでもなくきわどいものからスタートしてますよね。あと、『それは水着なの!?』という衣装だったり。『え、こんなに売れてる子がこんなグラビアしちゃうんだったら、これから続く人はもっと脱がなきゃいけないの…?』って思うこともあります」
透けている水着、極端に生地の面積が少ない水着。インパクトを追求するあまり、デビュー当初から過激なコンセプトを強いられる現在のグラビア界に、彼女は複雑な思いを抱いている。
「逆にもっと着ているグラビアがあってもいいんじゃないかなと思うんです。みんながみんな、ちょっと同じ方向に行きすぎている気がします」

