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〈WシリーズMVP〉ドジャースはなぜ山本由伸を開幕投手に指名したのか?…開幕前に期待された「2年目のアップデート」

〈WシリーズMVP〉ドジャースはなぜ山本由伸を開幕投手に指名したのか?…開幕前に期待された「2年目のアップデート」

ロサンゼルス・ドジャースが球団史上初のワールドシリーズ連覇を達成した。同シリーズのMVPには、メジャー挑戦2年目となる山本由伸が獲得。山本は第2戦、第6戦では先発し、連覇のかかる第7戦では中0日で好リリーフの活躍だった。

そもそも今季は開幕投手の大役を担ったが、『山本由伸  常識を変える投球術』の著者、中島大輔氏はシーズン前に2年目の山本の“上積み”への期待を指摘していた。

メジャー2年目で開幕投手に 

オリックス時代に23歳で自身初の沢村賞を獲得してから4年。ドジャースに加入して2シーズン目の山本が、3月18日、カブスとの東京シリーズでメジャーリーグでは初の開幕投手を務める。

「ついに東京シリーズが目前のところまで来たなという気持ちです。しっかり体調も整えて、万全の状態でマウンドに上がれたらと思っています」

ドジャースが大熱狂とともに来日した翌日の3月14日。大谷翔平、佐々木朗希とともに会見に臨んだ山本は、初の大役にそう照準を合わせた。

2023年シーズンオフ、12年総額3億2500万ドル(約465億円)というMLBの投手史上最高額でドジャースと契約すると、1年目は18試合に登板して7勝2敗、防御率3.00。右肩の故障で約3カ月の離脱もあり、契約金に見合う活躍ではないという声も上がった。

3月16日、阪神とのプレシーズンマッチの試合前会見に出席した山本は、メジャー1年目をこう振り返っている。

「すべての面で違いがありました。これがっていうより、すべての面が少しずつ違うなと感じました」

マウンドやボールが違えば、メジャーではピッチクロックも導入されている。環境や文化、食事の違い、さらに言葉の壁もあり、適応するのは容易ではない。

何よりNPBと異なるのが、相手バッターの質だ。それをよく表すのが、被ハードヒット率という指標だ。打球の初速が153km/h以上だったボールの割合で、速い打球を打たれればヒットや長打のリスクが高まる。

昨季の山本の被ハードヒット率は41.3%で、MLB平均(38.9%)を上回った。ストレート(フォーシーム)に限ると、45.5%。オリックス時代の山本は強いストレートで打者をねじ伏せる場面も多くあったが、メジャーでは同じようにいかなかった。

それでも、デーブ・ロバーツ監督は今季開幕投手に山本を指名した。「昨季終盤はエース級の働きを見せて、今季は風格が漂っている」と感じたからだ。

今やメジャーで他29球団を寄せ付けない資金力を誇るドジャースにとって、2025年は今世紀初のワールドシリーズ連覇を目指すシーズンになる。開幕前にはサイ・ヤング賞を過去2度受賞した左腕投手ブレイク・スネルを5年総額1億8200万ドル(約282億円)で補強、さらに昨季開幕投手の豪腕タイラー・グラスノーも控えるなか、山本が大役を任された。

メジャー2年目に上積みが期待できる理由

 昨季右肩の故障から復帰以降は好投、さらにポストシーズンでは4試合に先発し、2勝を含め安定した投球でワールドシリーズ制覇に貢献したことが、ロバーツ監督の信頼の裏にあるのだろう。

もちろん、東京ドームに慣れていることもあるが、メジャー2年目の今季は上積みを期待できる要素がたくさんある。

特に大きいのは環境面だ。昨季終盤の活躍は、異国のリーグに適応していったこともあるだろう。特にシーズン終盤、変化量の多いカーブとフォークをうまく織り交ぜ、ストレートも制球よく投げていくスタイルは、ヤンキース在籍時の田中将大(現巨人)を彷彿とさせるようなピッチングだった。

それを今季どうアップデートしていくのか。特に使い方も含めてストレートをいかに改善するかは、今季の大きな見どころの一つになる。

「(去年は)ドジャースの方々にいろいろな面で助けていただきました。今年は2年目なので、チームの一員としてやっていけるように頑張ります」

謙虚に語った山本自身だが、2023年から取り組むクイックのような投げ方は完成度を増していくはずだ。

今の投げ方の原点にあるのが、オリックスに入団して1年目のオフ、やり投げやブリッジを始めとする独特な練習(BCエクササイズ)に本格的に取り組み、身体の使い方をフルモデルチェンジしたことだった。

呼吸法や歩き方から始めて身体全体を青竹のようにしならせて使う独自の投球フォームを身につけると、高校時代から悩まされていた右肘痛から解放されると同時に、強い威力の速球や鋭く落ちるフォーク、カットボールに磨きをかけた。

そうして高卒5年目の2021年から史上初の3年連続MVP&沢村賞という偉業を達成し、ドジャースと巨大契約を結んだ。

高卒2年目に右腕を大きく引いて投げるような投球フォームに変えた当初、オリックスの首脳陣は反対し、周囲は「アーム投げ」と否定したが、そうした見方をする者はもはや誰もいない。

逆に、山本の取り組みは“模範”とされている。その一つが、やり投げと言われる練習法だ。正確にはフレーチャ(スペイン語で「矢」の意味)という器具で、山本が師事する矢田修トレーナーが監修した。

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