MLBのポストシーズンは世界最高のスポーツエンターテイメントだ――文字通り“死闘”と表現するほかないワールドシリーズが終わり、改めてその思いを強くした。
球団史上初、そしてMLB全体でも1998~2000年のヤンキース以来となる世界一連覇を狙うドジャースと、1993年を最後に遠ざかっていた頂点を目指すブルージェイズとのワールドシリーズ第7戦は、歴史に残る名勝負となった。
3回のボー・ビシェットの先制3ラン、4回のアンドレス・ヒメネスへの死球をめぐる小競り合い、第5戦で新人シリーズ最多12奪三振を記録したトレイ・イェサベージの救援登板、9回1死からのミゲル・ロハスの起死回生の同点弾、その裏、昨日96球を投げたばかりの山本由伸のスクランブル登板、両軍とも満塁のチャンスを作りながら無得点に終わった延長10回の攻防、そして11回のウィル・スミスの決勝弾――延長18回、試合6時間39分に及んだ第3戦すら1ヵ月くらい前の出来事のように思えるほど劇的なドラマの末に勝利をつかんだのはドジャースだった。
これほどのスリルとサスペンスに満ちた熱戦が現実に起こり得たのは、それだけ両軍の選手たちのチャンピオンリングへの思いが強かったからだ。
長い長いシーズンの終わりを迎え、誰もが身体のどこかしこに痛みを抱えている。それでも、彼らはこの試合で持てる力をすべて振り絞った。 第4戦で脇腹を痛め、第6戦で強行復帰したジョージ・スプリンガーは、スウィングのたびに何度も激痛に顔をしかめ、ダグアウトでは常にコルセットを巻きつけていた。オフにFAとなるボー・ビシェットも左膝を故障中だったが、ワールドシリーズから復帰。怪我の状態が悪化し、FA市場での低評価につながる可能性も覚悟しながら、「最悪1年契約でもいい」と気丈にプレーを続けた。トミー・エドマンも左足首の状態が悪く、シリーズ終了後の手術の可能性に言及するほどだったが、最後は守備の負担が大きいセンターを守った。
そして、もちろん山本に言及しないわけにはいかない。第3戦では、延長17回から中1日のリリーフ登板に備えてブルペンで準備を開始。その試合は結局マウンドには上がらなかったものの、第7戦では前夜に続く登板で勝利を手繰り寄せた。
ポストシーズンの出場枠が拡大しているとはいっても、頂点に立つのは30チーム中1つだけ。この「30分の1」という希少性が、ワールドシリーズを特別なものにしている。
ブルージェイズの主砲ブラディミール・ゲレーロJr.の同名の父はメジャーで16年間プレーし、MVPを受賞するほどのスーパースターだったが、最後までチャンピオンリングをその指にはめることはできなかった。同様に、ビシェットの父ダンテも二冠王に輝くなど実績十分だったが、メジャー14年のキャリアでワールドシリーズの舞台に立つことすらなかった。
9月にデビューしたばかりのイェサベージはリーグ優勝決定シリーズ開始前、エースのケビン・ゴーズマンに「これまでポストシーズンで一番勝ち進んだのはいつですか?」と訊ねた。メジャー13年目、通算112勝を誇るベテランから「今がそうだよ」と聞かされたルーキー右腕は、10月の舞台で戦うこと自体が貴重な経験なのだと痛感したという。
個人タイトルをいくつも獲得し、大金を稼ぐスーパースターだからといって、自動的にワールドチャンピオンになれるわけではない。頂点に立つためには自分だけではなく、優れたチームメイトやフロントオフィス、さらには幸運の女神のサポートも必要になる。しかも、その好機はそれほど多くは訪れない。それをよく理解しているからこそ、選手たちは疲労困憊でも、故障を抱えていてもフィールドに立ち続けるのだ――そのことを改めて痛感するポストシーズンだった。
それだけに、敗れたブルージェイズの選手たちのことを思うと胸が締めつけられる。 このポストシーズンを通じて、最も質の高いプレーを続けたチームがブルージェイズだったことを疑う者は少ないだろう。1番~9番まで文字通り切れ目のない打線と固い守備、要所をしっかり抑える投手陣。地区シリーズから次々に好投手を攻略し、ドジャースの超強力先発陣も打ち崩して32年ぶりの歓喜まであと2アウトに迫った。それでも、あと一歩届かなかった。
おそらくブルージェイズの選手たちは今頃、「自分たちには何が足りなかったのか?」と自問自答しているに違いない。「足りないもの」などほとんどなかった。だが、繰り返すように頂点に立つのは「30分の1」。ブルージェイズは、その最後の1チームにはなれなかった。
メジャーリーグの醍醐味を凝縮するような名勝負の連続だった2025年のワールドシリーズは、勝者と敗者の残酷なまでの明暗を浮かび上がらせつつ幕を閉じた。
文●久保田市郎(SLUGGER編集長)
【記事】MVP山本由伸、“中0日”登板でWS史上初の快挙達成!「第6戦と第7戦の両方を…」データ分析企業が指摘
【記事】「みんなから優勝リングを奪ってしまった」劇的ロハス弾を浴びたBジェイズ守護神が“悔恨の失投”に悲痛な叫び。「最悪な気分だよ」「たった一球、それだけだ」
【画像】大谷真美子さんら世界の美女がずらり! 常勝軍団ドジャースの名手たちを支える“ゴージャスでセレブな妻&パートナー”を一挙紹介!

