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高齢者はアキレス腱が「柔らか過ぎて」バランスが悪くなっていた

高齢者はアキレス腱が「柔らか過ぎて」バランスが悪くなっていた

『腱トレ』で転倒リスクを下げられるか?

『腱トレ』で転倒リスクを下げられるか?
『腱トレ』で転倒リスクを下げられるか? / 左の装置は筋力計(ダイナモメータ)で、足首をしっかり固定したままふくらはぎに力を入れてもらい、そのときに小さな“超音波カメラ”を当てて腱がどれくらい伸びるかを映します。超音波は、ふくらはぎの内側にある内側腓腹筋(medial gastrocnemius=mGAS)とアキレス腱のつなぎめ、つまり筋腱接合部(muscle-tendon junction=MTJ)に置き、筋が引っぱる→腱がどれだけ“たわむ”かを直接見るための位置取りです。右の模式図は直立の測定で、まっすぐ立ったまま体がわずかに前後にゆれる様子を記録します。図中の「+」は解剖学的な標準姿勢から見て反時計回りの動きを示す符号で、どちら向きに体や関節が回ろうとしているかを数字で整理するための約束事です。立位のときは超音波プローブを内側腓腹筋の“おなか”(筋腹)に固定しておき、外からは見えない筋肉と腱の細かな動きを、足裏の圧力の変化と同時に追いかけます。要するに、座って力を入れる場面では「腱の伸びやすさ」を、立っている場面では「ゆれと筋・腱の動きの連携」を、それぞれ超音波でのぞき込んだ、というわけです。Credit:The medial gastrocnemius fascicle shortening and tendon lengthening in static standing are associated with age-related postural instability in older adults

この研究は、高齢者のバランスの問題を「筋力」だけでなく「腱の硬さ」という新しい視点から考える大切さを教えてくれます。

筋肉を鍛えることはもちろん重要ですが、それだけでは十分でないかもしれません。

自分の持っている筋力をしっかり発揮するためには、腱に適度な張り(コシ)が必要です。

腱が柔らかすぎると筋力の伝わり方が変化し、結果としてバランスの低下と関連している可能性があると示唆されました。

この知見は「転ばぬ先の杖」として、シニア世代のバランス能力を評価・改善するための新しい考え方を与えてくれます。

では、具体的にどのように応用できるのでしょうか。

研究チームは今回の成果を踏まえ、筋肉を鍛える「筋トレ」だけでなく、腱の張りを保つための「腱トレ」という新しい運動法の有用性を今後検討しています。

アキレス腱の硬さを“適度に”保つ運動プログラムを開発できれば、高齢者のバランス能力を向上させる可能性があります。

また、「年をとると足が遅くなる」「久しぶりに運動したら走れなくなった、ジャンプできなくなった」といった現象にも、腱の柔らかくなりすぎが関係しているかもしれません。

今後、腱を意識した新しい運動法が具体化すれば、より安全に年齢を重ねることにつながるでしょう。

そして未来の社会では、リハビリ施設やジムに「腱トレ」のコースが並ぶ日が来るかもしれません。

【編集注 2025.11.06 00:30】
誤字の修正を行いました。

参考文献

「アキレス腱の伸びやすさとバランス能力の関係性を解明」~高齢者はアキレス腱が柔らか過ぎてバランスが悪くなる~
https://www.spu.ac.jp/news/?itemid=2613&dispmid=508

元論文

The medial gastrocnemius fascicle shortening and tendon lengthening in static standing are associated with age-related postural instability in older adults
https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00431.2025

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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