
『デビルマン』画業50周年愛蔵版 第5巻(小学館) (C)Go Nagai/Dynamic Production
爽快感を感じさせる最終回が「良かった」
先日、令和7年秋の叙勲で受章された永井豪先生にとって、1970年代に発表したマンガ『デビルマン』は代表作のひとつで、今もなお語り継がれる名作です。実は、この作品のアニメ版では、最終回がふたつ存在しました。なぜ、最終回が複数、誕生することになったのでしょうか?
ふたつの最終回はなぜ生まれたのか?
テレビ朝日(当時のNET)および系列局では38話「妖獣ドリムーン 月は地獄だ」が最終回として放送されましたが、それ以外の地方局では39話「妖獣ゴッド 神の奇跡」が最終回として放映されていました。この珍しい事態が生じた背景には、「プロ野球」が関わっていたのです。
放送当時、関東圏での『デビルマン』はNETで土曜の20時30分から放送されていました。この時間帯はプロ野球の放送と重なることがあり、特に1972年7月22日には「プロ野球オールスターゲーム第1戦」の中継が予定されていたため、その回分を除いた38話構成で制作されることになっていたのです。
しかし、NET系列以外の地方局ではオールスターゲームが放送されなかったため、1話分の放送枠が空いてしまいました。この「穴」を埋めるために、39話「妖獣ゴッド 神の奇跡」が追加制作されることになったのです。
一部の人しか見られなかった、39話の最終回「妖獣ゴッド」
39話「妖獣ゴッド」では、「デビルマン(不動明)」が、デーモン界の上役である妖獣「ゴッド」と対峙します。ゴッドは明が「牧村美樹」への愛からデーモン一族を裏切ったことを熟知しており、ミキに正体を明かすと脅迫して地上破壊の邪魔をしないよう命じました。明はいったん屈しますが、ミキの弟たちが危機に瀕したことでゴッドとの戦いを決意します。
約束を破られたゴッドは、ミキの目の前で「不動明がデビルマンである」と正体を暴露しました。追い詰められた明はデビルマンに変身しますが、ミキは動揺することなく「神の名を騙る化け物! 明くんを元の姿に戻してよ!」とゴッドを非難したのです。
ミキの予想外の信頼に動揺したゴッドは、デビルマンの攻撃を受けて消滅します。人間の姿に戻った明は、ミキに「俺を信じてくれたことさ、目の前でデビルマンになった俺を……」と感謝を伝えました。ミキは「どんな格好になったって、中身は同じ明くんじゃない」と変わらぬ信頼を示し、物語は原作とは異なり、爽やかなハッピーエンドで幕を閉じます。
最終回後には衝撃的なOVAも
ちなみにアニメ放送後には数々のOVAが展開されています。なかでも2000年に発売された『AMON デビルマン黙示録』は、原作終盤の時間軸をもとにしたオリジナルストーリーで、多くの読者にトラウマを植えつけた「牧村美樹惨殺」から物語が展開され、多くのファンに衝撃を与えました。
「ドリムーン」が最終回として放送された地域の視聴者が「ゴッド」の回を見ることができたのは、再放送のときでした。『デビルマン』は1970年代から80年代にかけて何度も再放送されているため、今となっては「ドリムーン」を最終回として見た経験を持つ方が貴重な存在と言えるでしょう。
このように、プロ野球中継という予想外の要因から生まれたふたつの最終回は、半世紀を経た今でも『デビルマン』の魅力を語る上で欠かせないエピソードとなっています。
※記事の一部を修正しました(2025年11月5日9時56分)
