宮崎で行われている巨人の秋季キャンプでは、攻撃面の基礎技術を磨くバント練習に力が入れられている。打撃スペースには反復練習に適したバント専用ケージが設けられ、選手が入れ替わりでフォームや角度を確認。中軸候補の大城卓三、中長距離砲として期待されるリチャードの姿まで目撃されている。
阿部慎之助監督は今キャンプ、機動力や小技を絡めた攻撃練習に重点を置き、投手が生きた球を投じる実戦形式で、バントやエンドランなどのサインプレーを反復。11月8日と12日の紅白戦では、練習で積み上げた動きが試合で再現できるかが、大きなポイントとなる。
この背景には、ワールドシリーズを連覇したドジャースの戦い方があるという。
「短期決戦はいいピッチャーが次々に来る。連打では点が取れない」
そう語る指揮官は長打頼みではなく、確実性のある得点手段の必要性を感じているようだ。
来季へ向け、コーチ陣は再編された。従来のヘッドコーチや野手総合コーチを廃止し、オフェンス(攻撃・打撃)、ディフェンス(守備・走塁)、バッテリー(投手・捕手)の3分野にチーフコーチを配置。カテゴリー間の情報共有を密にし、指導の一貫性を高める狙いがある。中でも通算533犠打のギネス記録を持つ川相昌弘コーチの1軍復帰は象徴的。小技の精度を高める上で、重要な存在となるからだ。
一方で、バント練習の優先順位アップには疑問も生じる。今季の巨人は得点力に苦しんだだけに、打撃力の向上は必須事項だ。
セイバーメトリクス(統計学的分析による選手評価、戦略)上でも、多くの局面で送りバントは得点期待値を下げるとされ、とりわけメジャーリーグでは、採用例が減少傾向にある。巨人はセ・リーグでバント数は多いが、成功率が高くない。だからこそ、阿部監督が精度アップにこだわる理由があるのだろうが…。
もちろん、1点を奪う小技が生きる瞬間は存在する。ワールドシリーズでも、バントで局面を変える場面は確かにあった。その再現性に価値を見い出す指揮官の考え方は理解できるが、豪快な一発や連打で試合の空気を一変させる攻撃もまた、胸躍るシーンだ。
秋季キャンプで鮮明になった「小技重視」の方針が来季、どのような形で表れるのか。開幕を迎えた時、その成果と方向性がはっきりと見えてくるだろう。
(ケン高田)

