高市早苗首相は11月5日の参院本会議での答弁で、自民党の裏金事件に関与した佐藤啓官房副長官(参院議員)を起用したことを陳謝した上で、続投させる考えを示した。
佐藤氏をめぐっては野党の反発により、参院議院運営委員会などに副長官として出席できない状態が続いているが、問題を複雑化しているのは、自民党参院執行部も野党に歩調を合わせていることだ。
9月の自民党総裁選で高市首相を支持した杉田水脈前衆院議員は、佐藤氏が議運に出席できないことについて、自身のフェイスブックに次のように書き込んだ。
〈自民党内が一丸となって高市政権を支えなければならない時に、野党と一緒になって足を引っ張る勢力がいる…。高市内閣の支持率は高いが、自民党の支持はさほど伸びていない原因がここにあります。少数与党の現状を自覚して、今こそ一枚岩になるべきでは?〉
名指しこそしていないが、石井準一参院幹事長を指しているのは明白だ。
石井氏は10月28日の記者会見で、野党からの佐藤氏出席拒否は起こりうると政府に警告していた、と明らかにし、佐藤氏の「出入り禁止」状態が続くことは「望ましくない」と、官邸側の対応に不快感を示していた。
自民党参院関係者によると、石井氏はかつて旧茂木派に所属していたが、参院で旧安倍派が最大勢力を誇っていた状況を苦々しく思っていた。裏金事件で旧安倍派が窮地に立たされたのに乗じて勢力を伸ばし、参院幹事長まで上り詰めた。この参院関係者は、
「高市首相に自身の力を見せつけているのだろう」
と語るのだ。と同時に、対応を疑問視。
「石井氏はネット上での高市支持者の怖さを知らないのだろうか」
石井氏は立憲民主党の蓮舫参院議員とは、青山学院大学仲間(石井氏は中退)ということもあり、仲がいいのか、参院予算委員会の場で「準ちゃん」と呼ばれたことがある。野党寄りの立場をとりすぎると「蓮舫の回し者か!」と、熱烈な高市支持者の怒りを招くことになりそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)

