先日行なわれたF1アメリカGP終了後、メルセデスのジョージ・ラッセルは、ポールポジション(PP)の優位性についてコメント。「今のF1は、ターン1へ向けてのレースだ」と指摘し、追い上げを強いられるレースとなってしまうと、挽回するのはほぼ不可能だと語った。
実際、予選の優位性は確実に高まっており、今シーズンはそれが特に顕著だ。
2025年シーズンはここまで、20戦のレースが行なわれてきた。そのうち実に14戦で、PPからスタートしたドライバーが優勝している。驚異の勝率70%である。
速いマシンがPPからスタートするのだから、そうなって当然。多くの方がそう思われるかもしれない。しかしレッドブルが22戦21勝を記録した2023年シーズンであっても、PPの勝率は22戦中14勝の63.6%止まりであった。
近年でPPからの勝率が最も低かったのは、実は2019年のことであった。38%という低さである。この年はフェラーリが一発の速さでは秀でていたものの、レースペースではライバルに及ばず、ポジションを下げるというレースが多かったのだ。ルクレールはこの年、実に7回PPを獲得したものの、実際に勝利に繋がったのは2戦のみ。チームメイトのセバスチャン・ベッテルは、2度PPを獲得したものの、いずれも勝利を逃した。
ただその傾向は、フェラーリ勢だけのことではない。メルセデスのルイス・ハミルトンは、5回のPPのうち2回で優勝を逃し、そのチームメイトであったバルテリ・ボッタスも、5回PPのうち3回で勝利を逃している。
今シーズンは、開幕4戦は全てポールシッターがそのまま優勝を手にした。第5戦サウジアラビアと第6戦マイアミでは、いずれもフェルスタッペンがPPを獲得したが、レースで勝ったのはオスカー・ピアストリ(マクラーレン)であった。その後エミリア・ロマーニャGPでは、フェルスタッペンがスタート直後にポールシッターのピアストリに飛びつき、首位を奪ってそのまま逃げ切り。確かにラッセルが指摘する通り、”1コーナーまでのレース”になっている。
この他、イギリスGPでのフェルスタッペン、ベルギーGPでのノリス、そしてハンガリーGPでのルクレールは、PPを獲得しながら優勝を逃した。しかしその後メキシコシティGPまで、全てのレースでポールシッターが勝っている。実に6戦連続だ。
こういう状況に陥っているのは、ふたつの要素があると言える。ひとつはオーバーテイクが難しくなったこと、そしてふたつ目はマシン同士の差が実に小さくなったことである。
現在のグラウンド・エフェクト・カーは、前を走るマシンの乱気流を受けにくくし、接近戦が数多く繰り広げられることを目指して生み出された。しかしこのレギュレーションが施行され、定着していくに連れ、マシンから発生する乱気流が激化。以前のように、オーバーテイクするのが難しくなった。その上マシン同士の戦闘力の差が小さいため、オーバーテイクを成功させるための決定打がなくなった。マシンの空力的効率は高く、直線でのスリップストリームの効果も小さくなった。高速サーキットではリヤウイングが以前にも増して小さくなり、DRSの効果も減った……これらの理由により、ポールシッターの勝率が急激に上がったと言える。
今季残りは4戦。タイトルは予選結果で決まるのか?
ここまで見てくると、残り4戦で有利なのは、PPを獲得したドライバーと言いたくもなる。しかしそう単純にはならないかもしれない。残りの4戦は、いずれも異なるタイプのサーキット、コンディションであるからだ。最終戦のアブダビGPは、確かにPP有利。それ以外の3戦は、そう簡単にはいかない。
サンパウロGPは、悪天候の影響を受ける可能性がある。特に現時点での予報では、土曜日が雨になる可能性が高いようだ。雨が絡めば、一気に何が起きるかわからない。
ラスベガスは11月の砂漠地帯、しかも夜間に行なわれるレースであるため、非常に低い気温/路面温度になる可能性がある。そうなると、タイヤが作動に最適な温度までなかなか温まらず、グレイニング(ささくれるように摩耗してしまうこと)に悩まされる。特に普段はタイヤに優しいとされるマクラーレンにとっては、厄介なことになる可能性が高い。カタールは、タイヤに厳しいサーキットとして知られる。
もちろん予選は重要だ。しかし残り4戦のうち特に3戦は、他の複雑な変数が絡んでくる。つまり予選だけが、チャンピオンシップの行方を決めるわけではない。

