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「ライフルを使ってクマを駆除するのか?」自衛隊出動で“クマ擁護派”が役所に勘違いクレーム、「殺すな」と「お前らが駆除をしっかりしないから…」の板挟みにも苦悩

「ライフルを使ってクマを駆除するのか?」自衛隊出動で“クマ擁護派”が役所に勘違いクレーム、「殺すな」と「お前らが駆除をしっかりしないから…」の板挟みにも苦悩

連日「クマ被害」のニュースが報じられるなか、環境省によると、今年度のクマ被害による死者数は全国で13人(11月5日時点)となり、統計を取り始めた2006年度以降で過去最悪の数字を記録している。

 

事態の深刻さを受け、防衛省は秋田県に陸上自衛隊を派遣し、5日午後から活動を始めたが、秋田県では“クマ擁護派”による苦情の電話があり、業務にも支障をきたしているという。

「駆除」という言葉が、悪い印象を与えてしまっているのか

防衛省は5日、秋田県でのクマ対策を支援するために、陸上自衛隊を秋田県鹿角市に派遣した。陸上自衛隊は、さっそく5日午後から活動を開始している。箱わなの設置や見回り、ハンターが捕獲したクマの運搬を行なういっぽうで、武器による駆除は行なわない。

しかし、秋田県庁や自治体の役場、猟友会にはこんな問い合わせがきているという。

「自衛隊の派遣をすごく誤解されている方が多く、なかには自衛隊がライフルを使ってクマを駆除したり、捕獲したりするのはどうなのかと、“クマ擁護派”による苦情の問い合わせが相次いでいます」(秋田県・行政関係者)

秋田県庁の担当者は、「自衛隊まで出動させるのはどうなのかといった旨の問い合わせは確かに来ています」と認めたものの、「苦情の数や具体的な内容については控えさせていただきます」とした。

そのいっぽうで、「ここ1~3週間はクマによる事故が多発し報道量も増加しているせいか、『クマを殺すな』などの苦情電話が多く、業務が止まる傾向にあり、支障が出る場合がほとんどです。訛りなどからして、県外からのお電話が多いなという印象です」と述べた。

“クマ擁護派”による苦情は秋田県だけではない。

北海道の南に位置する福島町の住宅街で今年7月12日、新聞配達員の佐藤研樹さん(52)がクマに襲われて死亡した。佐藤さんは事故が起きる前に、3回ほどクマを目撃していたという。

社会部記者によると、佐藤さんが襲われた事故が起きたのは午前3時前の出来事だった。

「襲ったクマはヒグマで、約1~1.5メートルの大きさでした。事故現場には血痕が約30センチ四方に広がっており、現場の至る所にも血が点々とついていました。佐藤さんの遺体は近隣のやぶで見つかり、腹部をひどく咬まれており、全身に爪痕が残っていました。

近隣住民は事故当時、悲鳴を聞いており、自宅玄関を出たところでヒグマを目撃。その後、佐藤さんの体を口でくわえ、引きずりながらヒグマは移動したそうです」

さらに佐藤さんを襲ったクマは4年前に町内で女性を襲い死亡させたクマだったことも判明した。同月 18日にこのクマはハンターによって駆除されたという。

 事故を受け、北海道庁と福島町役場には200件以上の抗議の電話があったという。福島町役場の担当者が語る。

「クマを駆除した18日以降、県外の方からの問い合わせ(電話やメール)が急増しました。一番多いのは、『クマを殺すな』といったものです。細かい数字までは集計しておりませんが、1日1~2時間ほどは職員が対応に当たらなければならず、業務に支障が出ていました。

苦情の問い合わせは9月まで続き、クマによる事故の報道がされると、福島町で起きた事故の映像が使われたりもするので、思い出したかのようにご連絡を頂くケースもあります」

苦情が来た場合、担当者によると「町民の安心安全を守るための手法なんです」と伝えることを心掛ける。ただ、それでも話が進まないことがほとんどで、「向こうのご意見を一方的にうかがうことになる」と肩を落とす。

「あくまで捕獲して山に返しなさいというようなご意見もいただきますが、到底無理な話です。『駆除』するということがやっぱりなかなかご理解いただけないのが実態です。『駆除』という言葉が、相手に悪い印象を与えてしまっているのかなとも感じております」(同前)

「クマとの共生なんて出来ないんだって」

いっぽうで北海道庁の関係者によると、今年、北海道庁の関係先に対して、以下のようなメールが送られてきたという。

「お前等が熊の駆除をしっかりしないからまた人が殺されたじゃねーかーよ。日本で一番危険害獣の熊との共生なんて出来ないんだってのお前等どんだけバカなんだ? 絶滅させろって種を残したいなら適当に檻の中で管理しろよいい加減にしろって無能集団が!」 (原文ママ)

また、“クマ擁護派”からはこんな電話も受けている。(カッコ内はおおよその通話時間)

「なんでもかんでもクマを殺すな。 クマを山に返すべきだ。 里山を復活させるべきだ」(約5分)

「動物たちは意味があって生きている。麻酔で眠らせて動物園に送り、 その姿に癒やされるべき。 クマを殺さないでほしい」(約10分)

「クマを殺すのはかわいそう。 動物の命を何だと思っているのか。 殺すのではなく、 山へ返せば良い」(同じことを話し続け、約30分)

ある関係者は、「こういった電話はこちらから切ることができません」と苦しい胸の内を明かす。

東北地方のある猟友会は“クマ擁護派”の動きについて、こう解説する。

「抗議の電話なんて今日始まったことではないですよ。クマの駆除については1980年代から抗議が出始めました。当時は、猟友会に直接訪れて『なんでクマを殺すんだ!』と怒鳴り込んできたりしていましたが、こちらとしても駆除する必要性をきちんと話し、説得していました。

現代になって、発信する方法が変わって、『猟友会は自由に動物を殺している』などのデマも広がっているのか、すぐ調べたらわかるのに何も調べないで一方的に匿名で電話や手紙などで抗議してきます。

ここ最近では1日10件は必ず苦情の電話がきますが、『まあまたか』という感じで対応しています」

クマによる被害は深刻で、今後も被害者が多く出る恐れがあると見込まれている。役場や猟友会、そして自衛隊もクマの対応に追われる中、さらにクレームの対応にも追われなくてはならないのか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

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