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首位鹿島を力強く下支え。“どこで出るか”より“どこで何をするか”。小池龍太の献身「『誰かのために』をより一層、表現したい」

首位鹿島を力強く下支え。“どこで出るか”より“どこで何をするか”。小池龍太の献身「『誰かのために』をより一層、表現したい」


 前回対戦は1-1のドロー。これに象徴される通り、対浦和レッズ戦は過去7試合、引き分けが続いていた鹿島アントラーズ。今季こそ2016年以来のJ1タイトルを手にするためにも、9月20日に埼玉スタジアム2002で行なわれた大一番は負けられなかった。

 浦和の方もこの一戦を落としたら、優勝争いから脱落する。凄まじい危機感を持ってぶつかってきたが、鹿島は14分に先制する。ハイプレスを仕掛けていた鈴木優磨がGK西川周作のパスミスを見逃さず、左足のシュートでゴールに流し込む。この1点を90分間、守り切り、勝点3を上乗せ。ラスト8戦というところで再び首位に浮上した。

「声も通らず、飲水タイムもなく、勝ち筋を見つけるのが難しかったが、選手たちで解決してほしいと伝えて送り出した。みんながまとまって非常によくやってくれた」と鬼木達監督も前向きにコメントしたが、GK早川友基を中心とした守備陣の高度な集中、タフな守りは改めて高く評価すべきだ。

 その一員としてチームを力強く支えたのが、今回は左SBでスタートし、終盤は左MFにポジションを上げた小池龍太だ。

 ご存じの通り、今季に横浜F・マリノスから鹿島に赴いた30歳は当初、本職の右SBで起用されると見られていた。が、開幕の湘南ベルマーレ戦で右MFに入った荒木遼太郎が今ひとつ機能しないと見るや、指揮官は続く東京ヴェルディ戦から小池を一列前で起用。これが予想以上に的中し、攻撃陣がスムーズに。快進撃が始まったのだ。
 
 そこから4月2日のサンフレッチェ広島戦までその形が続いたが、このタイミングで小池が負傷離脱。それとともに鹿島は停滞を強いられる。背番号25は1か月の空白期間を経て、5月6日のアビスパ福岡戦で復帰。その時点では濃野公人が離脱中ということで、しばらく本来の右SBに入っていたが、濃野が万全の状態になった7月末以降は小池・濃野がスタートから右の縦関係を形成するゲームも出てきて、チームに活力がもたらされた。

 さらに9月以降は小池が左SBに移動。これは小川諒也の状態を鬼木監督が不安視したためと見られるが、実際に守備強度はアップ。エウベルとの左の縦関係も効果を発揮するようになり、湘南戦、そして今回の浦和戦で勝利し、連勝を飾った。

 つまり、今季の小池は左右のSB、MFと複数ポジションを臨機応変にこなしているということ。横浜FM時代にはボランチでもプレーしていたことを考えると、凄まじい多彩ぶりである。これだけのマルチロールぶりは、今季のJリーグを見渡してもそうそうなく、鬼木監督は最高のピースを手に入れ、見事に使いこなしているのである。
 
「僕自身はできることをやっているだけ。『どこで出たい』とかは正直ないし、チームで求められているプレーをすることが一番成長できる。マリノスに移籍した時も、今回もそうですけど、『どこで出るか』より『どこで何をするか』が大事なんです。

 自分がどのポジションで必要とされるかは、その時々で変わる。特別な選手じゃないっていうのは自分でも分かっているんで、僕みたいな選手が周りの選手の能力を少しでも上げられたり、勇気づけられたり、楽ができたりする状況を作れたらいいですね。それが選手としての寿命を長くする1つの要素でもある。

『誰かのために』っていうのをより一層、表現したいと思っているので、それをピッチでかみ砕いてやっている感じですかね」

 小池は浦和戦後、高度な適応力と柔軟性の秘訣を語っていた。その能力は彼自身が歩んできたキャリアによる部分も大きいかもしれない。

 JFAアカデミー福島から2014年に、当時はJFLのレノファ山口FC入りした頃はアマチュア契約。小池自身もサッカースクールでコーチのアルバイトをしながら高みを目ざしていた。その後、柏レイソル、ベルギー1部のロケレンでプレーし、2020年夏に横浜FMに加入して、22年にJ1優勝を経験。同年のE-1選手権で日本代表デビューも果たしたが、ここまで辿り着くまでに、血のにじむような努力と苦労があったはずだ。
 
「自分は特別な選手じゃない」と言い切り、コツコツと地道にチームを支え続ける愚直な姿勢には、本当に頭が下がる。ゴールを奪った鈴木、スーパーセーブを連発した早川の輝きは誰もが認めるところだが、“影のMVP”は小池だと言っても過言ではないだろう。

「(優勝した)マリノスがみんな同じ方向を向いていたように、今の鹿島はそういうところが長けている。そこが守り切れる、勝ち切れるところにつながっている」と語る小池が潤滑油として奮闘し、チームがさらに強固な集団になっていけば、今季の鹿島は頂点に立てるのではないか。

 シーズンはラスト8試合。賢く万能なマルチ職人の仕事ぶりが、より重要になってきそうだ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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