業界最高峰の誉れ高いキャバクラ「ジャングル東京」。数多くのVIPが通う名店としても知られる。そんな同店に在籍する、たまごあゆみさん(25)は、早稲田大学から外資系戦略コンサルティング会社を経て入店した才媛だ。
一見、変わったキャリアに思えるが、高額な売上はほとんどインデックス投資に回すという戦略的な一面も。彼女はなぜ、そこまで”お金”を追い求めるのか――。納得の人生哲学に迫る。
高3で不登校に…大学受験で気がついた自分の弱点
たまごあゆみさんは、まさにうずらの卵のような小顔が特徴的だ。都内中高一貫校から早稲田大学文学部に進学し、英文学を専攻した彼女は、高校時代にも大学時代にも留学を経験している。
さぞ裕福な家庭で育ったのだろうと問えば、「とんでもない」と彼女ははにかむ。
「実家は都内にありますが、非常に裕福というわけではありません。ただありがたいことに、興味関心が向いたことはやらせてもらえました。特に教育への投資を惜しまない両親だったので、自由に学びたいものを学ばせてもらえました」(たまごさん、以下同)
あゆみさんは理解のある両親のもとで多くのことを学んだ。英語への興味は小学1年生のころからあり、英会話にも通わせてもらっていた。元来国語力にも自信があり、「中学受験もそこまで勉強せず、作文力で突破した」と笑う。だが大学受験は、彼女にとって苦痛以外の何物でもなかった。
「大学受験に際して自分の性格に気がついたのですが、私は単調な作業を繰り返していくのが非常に苦手らしいのです。毎日似たような問題を解き続け、勉強以外の娯楽は悪とされる受験期は、かなり精神的に追い込まれました。
高校3年生の最後の半年、抑うつ気味になって、不登校になったんです。受験生なのに家にこもって、特に勉強などもせずに『もう受験はやめて将来はネイリストになるんだ』などと言って家族を困らせていました。
第一志望は早稲田大学だったのですが、模試でA判定を取っても自分が受かるとは思えず、自暴自棄になっていました」
それでも「ダメ元」で受験し、早稲田大学からは無事に合格を勝ち取ったが、あゆみさんは思わぬ形で自らの弱点を認識することになった。
早稲田大学入学後は、複数のサークル活動を並行したが、バンカラな校風にありがちな”飲み”の洗礼を目の当たりにする。
「私がいたサークルの飲み会は、飲みがかなり激しかったと思います。幸い、入学当時に未成年だった私は、先輩から飲まされるようなことはありませんでした。ただ、高田馬場駅のロータリーで度数の高いお酒をあおっては吐くという文化の残るサークル内には、『お酒が強い人がサークルの役職につける』雰囲気があって、私はやや冷静に見ていました」
あゆみさんの「冷静」な分析はいかにも興味深い。
「私がいつも不思議だったのは、サークルという金銭の発生しない関係性の中で命を削るように飲む人たちでした。『飲み屋で働いている訳でもないのに、何でそんなに一生懸命になれるんだろう……』と思っていました(笑)」
コンサル→キャバ嬢で資産は同世代の20倍に
そして実際、あゆみさんは成人してから、ラウンジに勤務するようになる。大学時代は週に1回、あるいは学業が忙しいときには月に1回程度と、当時はいわゆる「かじった程度」。
だがこの経験によって、あゆみさんは新卒で就職したのちにも、人生には夜職という選択肢があることを知ることができたと話す。
あゆみさんが新卒で入社し、2年ほど勤務した外資系戦略コンサルティング会社の初任給は、現在の日本の平均年収よりもはるかに高い。だが、あゆみさんがジャングル東京で稼ぐ金額はその初任給の5倍以上にもなる。
そんな収入の大部分を突っ込むというのが、インデックス投資だ。これで築いた資産は、同年代の中央値の20倍以上だという。
なぜ彼女はここまで堅実にお金を貯めるのか。
「私は文学部出身ということもあり、哲学に傾倒した時期があるんです。『制限だらけで自由に生きられない人生は本当に幸せなのか? 生きていると言えるのか?』と考えているうちに、会社員として朝から晩まで拘束された人生を何十年も歩むより、早めにお金を貯めて起業し、FIREしたいと思うようになりました。
受験勉強ごときでギブアップしかけた自分が、会社員を何十年も続けられるとも思わないですし」
自ら率先して金を生み出そうとするその原動力には、大学時代に経験したアメリカ留学も深く関係するという。
「よく『女なら適当にOLをやったのち、玉の輿に乗れば良かったのに』と言われます。しかし、私は旦那さんからいただくお金だけでやりくりをする専業主婦には向いていないと思うんです。
というのも、アメリカ留学中に親からの仕送りで暮らしていたとき、とてもストレスを感じたからです。留学ビザのため就労はできないのに、円安と物価高のダブルパンチ。普通のランチを食べるだけでも3000円、ちょっと美味しいものを食べるなら5000円。ディナーで美味しいものが食べたければ2万円の世界線のなか、仕送りだけで何とかやりくりしないといけない。
自分の意思でお金を増やすことができない状況で、初めてひもじい思いを経験し、『人のお金に依存して生きるストレス』を知りました。だから自分でお金を生み出せないと意味がないんです」
華やかな外見とは裏腹に、あゆみさんが派手にお金を使うことは滅多にない。
「昔から、なぜか貯金するのが好きなんですよね。さかのぼれば、お小遣いとかお年玉も、散財した記憶はありません。
キャバクラで働く際に100万円ほどするネックレスを買って自分を鼓舞しましたが、それも売ればどのくらいになるか、その後の出口を計算したうえでの判断なので……。散財ではなく投資かもしれません」

