
2022年に刊行され、第167回直木賞候補作にノミネートされた小説を原作とした映画「爆弾」が10月31日より上映中。東京都内で勃発する連続爆破事件を舞台に、取調室での謎解きゲームや爆弾探しが行われるというハラハラドキドキのストーリーは、映像でどのように表現されるのか気になっている方も多いだろう。今回WEBザテレビジョンでは、警視庁捜査一課・強行犯捜査係の刑事である類家を演じた山田裕貴と、刑事たちを翻弄していく謎の中年男・スズキタゴサクを演じた佐藤二朗にインタビューを実施。自身が演じる役柄との共通点や、撮影中のエピソードについて話を伺った。
■山田裕貴が語る、類家との共通点「“悪意を持った人”の気持ちが絶対に理解できる人」
――映画「爆弾」に出演が決まった時の気持ちや、原作を読んでみての感想を教えてください。
佐藤二朗(以下、佐藤):あるプロデューサーさんとお話をしていた時、偶然小説「爆弾」の話題になったんです。そこで「スズキタゴサクは二朗さんにピッタリだと思うんだよね」と言われまして。その後、本当に映画のオファーが来たので驚きました。原作を読んだ時は、その面白さに圧倒されましたね。
山田裕貴(以下、山田):僕も原作を読んでいて、二朗さんに(タゴサクを)演じて欲しいと思っていました。出演が決まった時のエピソードとしては、原作が本当に面白すぎて、プロデューサーさんに「この映画は前後編ですよね?」と聞いた覚えがあります。また原作と台本を読んでみて、自分と類家のマインドはすごく似ているなと感じました。
――山田さんは、どのようなところが類家と似ていると思いましたか?
山田:僕や類家は、タゴサクのように“悪意を持った人”の気持ちが絶対的に理解できる人だと思っていて。多分世界や人間に対して悲観している部分を、これまでの人生で体感してきているからこそ共感できるんだと思います。
プロデューサーの岡田(翔太)さんとは、映画「東京リベンジャーズ」シリーズでもご一緒させていただきましたが、「本当の山田くんはこっちだよね」ということで提案していただいたこともあり、「よく見抜いたな」と思いました。

――佐藤さんも、スズキタゴサクとの共通点があったら教えていただきたいです。
佐藤:小太りの中年であったり、中日ドラゴンズファンだというところですね(笑)。あと物語の舞台が「野方警察署」なんですけど、僕も東京に来てはじめて住んだのが野方だったので、その点も印象に残っています。
――映画を拝見させていただき、スズキタゴサクの内に秘めた狂気に圧倒されました。佐藤さんは役作りをするにあたって、どのような気持ちで臨んでいましたか?
佐藤:現場で起きること、監督の演出、共演者の芝居、それらに敏感に反応しようと思って臨みました。撮影現場では渡部篤郎さんや染谷将太さん、そして(山田)裕貴くんが僕の前に立ち替わり来るわけですけど、その時は夢のように楽しかったです。実際に家で晩酌の時に妻に「俺、楽しいわ」と毎日言ってました(笑)。

――本編では「取調室での謎解き」と「都内での爆弾捜索」、さらに「タゴサクの秘密を探る単独捜査」の3つに分かれていたと思います。伊藤沙莉さん、坂東龍汰さんなどが活躍されていた「爆弾捜索」側の映像を観た感想を教えてください。
佐藤:僕は一部のキャストとしか接していないので本編を観るのが楽しみでしたし、実際に観た感想としては倖田(伊藤)と矢吹(坂東)のコンビが本当にチャーミングで、「お見事」と拍手を送りたくなりました。「爆弾」は捜査会議のシーンもあって、出演者がかなり多かったと思うのですが、本当に皆さんの演技が素晴らしかったですね。
山田:僕は佐藤さん演じるタゴサクと対峙するので手一杯で、本編を観た時は皆さんの凄さに驚かされました。こういう大きな作品って、どこかにリアルっぽくないところが見えてくるはずなんですけど、それが皆さんのお芝居で一切無くって。「取調室」と「爆弾探し」の場面が変わる部分は基本行ったり来たりになるので、お客さんに話を理解してもらえるか不安でしたが、何も気にならないくらいしっかりできていると思います。
佐藤:「皆が最後の大事な試合を戦っている感じだった」と渡部(篤郎)さんも話していました。出演者全員が原作の面白さを知っているので、演者として外してはいけないという空気が漂っていましたね。


■「お客さんがずっと見ていられるような演技」タゴサクならではの演じ方
――おふたりが役を演じるにあたって気をつけたことや、映画として上映するからこそ心がけたことは?
佐藤:タゴサクはセリフの量がとにかく多いので、お客さんがずっと僕の芝居を見ていられるような演技をするようにしていました。演じるにあたってすごく意識していたわけではないのですが、その点に関しては気をつけていた記憶があります。
山田:「僕が類家だったら、こういう喋り方をするだろうな」という感覚で演じていました。原作には類家とタゴサクによるポップな会話もありましたが、映画では基本事件の話題になっているので、メガネで遊んでみたりと類家のユニークさをふとした仕草に込めています。
あと僕がとにかく守りたかったのは、“類家とタゴサクが似た者同士”だという点です。類家は割に合わないから犯罪に手を染めていないだけであり、“自分のことをヒーローだと思っていないとやってられない人”に見えればいいなと思って芝居をしていました。
――取調室での類家とタゴサクの掛け合いも本作の見どころだと思います。撮影時のエピソードを教えてください。
佐藤:類家を演じる裕貴くんは本当に大変だったと思いますよ。渡部篤郎さん演じる清宮(類家の上司)とタゴサクの長いやり取りを、のちに自分もそこに座ると分かりつつ、プレッシャーを感じながら見ていたと思います。
また、僕は本読みの時点でセリフを覚えていったんです。いつもはそんなことはしないんですが、キャストやスタッフに自らの覚悟をプレゼンするつもりで。それを見た裕貴くんが「僕も頑張ります」と言って、リハーサルの時にはセリフを覚えてきたんです。裕貴くんはもっとリハーサルをやりたかったんじゃないかな。
山田:本来リハーサルは苦手なタイプなんですけど、このセリフの量はヤバいと思って(笑)。あと類家はどんな時でもタゴサクを圧倒しなきゃいけないので、その点はかなり心配でした。
撮影の時は監督に対して、僕も類家のように頑固になっていました(笑)。監督には「タゴサクのまわりを歩きながら謎を解いてほしい」と言われていましたが、僕は「席を立つ」ことが、類家にとってリングから降りる行為だと思っていたので、ちゃんと目を合わせた状態でずっと座っていたり、ゲームが終わるまでメガネを外さなかったりと、監督の提案を全部断っていたんです。そしたら打ち上げで監督に「一番言うこと聞かなかったよな。でも類家っぽいなと思ってた」という言葉をいただきました(笑)。

――おふたりは数々の作品に出演されていると思います。お仕事をするにあたって、特に大切にしていることは何ですか?
山田:人に優しくすることと、期待を超えることです。「山田くんに任せてよかった」と言われるような働きができるよう、日々努力しています。
佐藤:“その場を生きる”ですかね。ドラマや映画の撮影って寒かったり暑かったりと、コンディションにもかなり左右されるのですが、短いカットでも気を抜かずに、その場を精一杯生きるようにしています。
◆取材・文=渡辺美咲



