バーチャルなアバターを用いて動画を配信する「VTuber」。今ではすっかり数え切れないほど増えて、町中でも頻繁に見かけるようになりました。
そんなVTuberの中でも、専門的分野に特化した活動をしている、個性の強いVTuberが増えています。先日は「特化Vまつり2025 秋」という企画が開催され、あらゆるカルチャーについて発信するVTuberが大集合しました。
今回紹介したいのは、そんな特化VTuberのひとりである「やすらぎこふぃん」。現役で納棺師かつ特殊清掃員を行っているという異例の経歴を持っているVTuberです。彼女は、普段は楽しくゲーム実況配信や雑談配信を行っていますが、たまに自身の実体験を元にした解説配信を行っています。
死を見続けてきたVTuberが語る「人間の死の現場」の話は、想像だけでは補えないような強烈さがあります。誰もがいつかは接することになる「死」への考え方を刺激してくれる、非常に貴重な話がいっぱい。重たい話には違いないので、苦手な人は閲覧注意な内容もありますが、新しい視点を与えてくれるVTuberとして、今回紹介させていただきます。
納棺師シスター「やすらぎこふぃん」の楽しい配信の日々
2024年にIRIAMで初配信をはじめたやすらぎこふぃん。故人に最期の手向けのお手伝いをする、納棺師シスターという触れ込みで活動を開始しています。
2024年4月29日にはYouTubeでのLive2D初配信を行っており、自己紹介も実施。このとき、彼女のデビューのきっかけが既に異彩を放っていました。
「現役納棺師・特殊清掃員 とにかく明るく楽しく生きていきたい」
「終活をきっかけに身辺整理やEDノート、やりたい事を100個まとめた結果、気になっていた配信活動に目覚める」
最近はXで自分がデビューしたきっかけについてもまとめて投稿していました。
いわゆるVTuberのバーチャルな生い立ちではなく、現実世界で納棺師であり特殊清掃員として活動している彼女。
「死」を生活の中で見ている彼女の語りは、極めて明るく、軽快です。アニメやゲームなどのカルチャーについて、優しさと元気さを持ち合わせた魅力的な声で、とても楽しそうにはつらつと語ります。「ウマ娘」や「ブルーアーカイブ」などのゲーム配信は元気いっぱいで、好きなことを存分にやっているのが伝わってくるため、見ていて非常に楽しめます。
そんな彼女が自身の経験を元に、じっくりと「死」について語るアーカイブは、いつもポジティブな彼女だからこそ、重みのある内容になっています。
フィクションではない世界の「特殊清掃員」の仕事
特化Vまつりにあわせて配信された「【#特殊清掃】現役特殊清掃員が現場を解説【#vtuber /やすらぎこふぃん】」のアーカイブが、彼女の活動と配信スタイルを知るにはもってこいだと思うので、最初に紹介します。このときの衣装は特殊清掃員バージョンです。
特殊清掃員とは、一般的な掃除では処理できない場所の清掃を行う仕事。たとえば孤独死した後に放置されてしまい、体液などが部屋に染み付いてしまった場合、普通の清掃では片付けられません。床まで浸透してしまった状況や虫が大量発生してしまった場合などは、一体どう対処するのかというのは、他のメディアで語られる機会は多くありません。
この回ではやすらぎこふぃんが、今まで話してきた実体験をまとめながら「ベットの上で自宅死」「ゴミ屋敷の中で」「残された家族」について紹介しています。仕事を請け負う会社によっていろいろなケースがあるそうなので「すべて個人の見解です!」という念押し付き。
たとえばこの回の場合、話が始まってすぐに「特殊清掃は24時間対応」などのような、経験者じゃないと言えない話が出てきます。現場によって軽度・中度・重度にわかれていて、重度の場合はどのくらい匂いでわかるか、連絡をもらったあとにどういう流れで作業が行われるかなど、具体的に語られています。下水清掃、火災現場清掃、害虫駆除、ペット屋敷、事故現場などなど、孤独死以外の特殊清掃にはどのようなものがあるかについても、どんどん話題が飛び出します。
本人はサラッと話していますが、実際に見ていないと発言できないような話がバンバン飛び出します。出てくる話題がびっくりさせられるものだらけなので、序盤から目が離せません。
実際に虫がわいたらどうなるのか、体液が床まで浸透してしまった場合の対処法、風呂場でのヒートショックによる現場などなど、ぼかしはありますが、実際の映像も取り上げられているので、苦手な方はご注意ください。でもこれが、リアルです。起きたことはどうしようもない、やるしかない、という姿勢のもとで、現実でどのように対処してきたかをじっくり語ってくれます。
やすらぎこふぃんは語っている内容について、できるだけ理解しやすい言葉選びをしています。誇張して嫌な気持ちや好奇心を煽るような語りをしません。起きている現実を、ソフトな言葉を用いながら語ります。
悲惨な話という印象を特に持たせることなく、事実として飲み込みやすい話し方、プロフェッショナルならではの慣れた語り口をしているのも特徴です。画像的にキツめな部分があるのは事実ですが、おそらく彼女のいい塩梅の話し方を聞いていたら、聞くのがしんどくて仕方ないというふうには、そこまでならないでしょう。むしろ貴重な資料を聞かせてもらっていて、しっかり最後まで聞きたいという感覚になっていくと思います。
なにせ、起きたことはしょうがない、どうにかするしかない。感情は一旦おいておいて、仕事としてするべきだったことを、ひとつひとつ順を追って語ります。なかにはペットが残されてしまった場合や飼い主のそばで死んでいる状態の話も出てきます。こういう話題は人の心の奥底を揺さぶってしまうのでなかなか感情抜きには語れませんが、彼女はそこで起きた様々な事例について、事実をそのままに語っています。
後半では、孤独死を見てきたからこそ言える、減らすための努力について語られます。社会問題としてものすごく大きな話題です。深刻に語ろうと思えば、いくらでも語れる話だと思います。しかし彼女は軽快に、あくまでも聞いてくれている人が少し笑顔になりながら、ちょっと心に留めておいてくれたらいいな、くらいの明るさで語っています。決して激しく主張はしていません。聞いている側が「そうなのかー」と興味を持てるような優しい匙加減です。

