
J1昇格争いに踏みとどまっている磐田。選手たちもようやく口にした二文字。指揮官は「見えるものは見えてきてる。期待してます」
ジュビロ磐田がJ1昇格戦線に踏みとどまっている。シーズン途中の安間貴義監督の就任後は3勝1敗。前節は2位のV・ファーレン長崎を1-0で下し、6位の昇格プレーオフ圏まで勝点1差に迫った。
ただし、次節の相手レノファ山口FCは、残留争いの直接のライバルであるロアッソ熊本に勝利するなど、2連勝中と勢いがある。前回対戦では磐田がホームで敗れており、さらに山口からすれば磐田戦は残留を懸けた重要な一戦となる。
磐田は長崎戦で、安間体制の強みを明確に示した。3バックを採用し、前線からの守備で相手の縦パスを制限。中盤では金子大毅、中村駿、上原力也の3ボランチが高い運動量を維持し、3バックとともに相手エースのマテウス・ジェズスを封じた。
右サイドでは倍井謙が左ウイングの笠柳翼と激しいマッチアップを演じて、外側からの強引なクロス以外、ほとんど仕事をさせなかった。
M・ジェズスが最前線に上がってきた終盤は、怪我明けのリカルド・グラッサとの交代で投入された森岡陸が力強く対応して、1-0の勝利を締め括った。安間監督が“ジュビロ・スタンダード”とする球際の強度、切り替え、ハードワークが形として表われた内容であると同時に、相手のストロングを消しながら自分たちの良さを出す戦い方は、昇格プレーオフも含めて、毎試合が決勝戦のようになる残り数試合には適しているだろう。
「気持ちで勝てるわけじゃないけど、気持ちがなかったら勝てない」。安間監督はそう語り、練習での激しい競争がチームの粘り強さにつながっていると強調する。紅白戦では選手同士がぶつかり合い、終了後には互いにハイタッチを交わす。見た目に派手な変化よりも、そうした小さな積み重ねが、試合での集中力と連動性を支えている。
今シーズンの磐田は上位相手に高い勝率を誇り、ルヴァンカップでは清水エスパルスやガンバ大阪といったJ1クラブにも競り勝つなど、強者と正面からぶつかり合うような試合では強さを発揮している。一方で下位チームとの対戦ではもろく、特にアウェーではカターレ富山、熊本、ブラウブリッツ秋田、藤枝MYFCといった二桁順位の相手に、ことごとく勝点を落としてきた。
「僕的にはメンタルの部分が大きいと思うんですよ」
そう語るのはセンターバックの森岡だ。「ジョン(・ハッチンソン前監督)の時は上位に勝っても、下位のチームに負けてしまっていて。ただ、安間さんになってからは、相手に持たせてもいいというか。そこで変にプライドを持たないことが、勝てる要因になってくるんじゃないかなと思います」と森岡。山口は“格上”と見られる相手には割り切った堅守速攻で勝機を見出してくるだけに、なおさらそこが鍵になりそうだ。
山口について、指揮官は「ボールを素直に入れて全員で追ってくる。長崎とは違い、個人で崩すよりも集団で仕掛ける」と分析する。縦に速い攻撃は長崎にも通じるというが、中盤に山口蛍やディエゴ・ピトゥカを擁し、M・ジェズスという明確な起点がある長崎と違い、全体でボールを追いかけてくる怖さがある。
「山口は入れてみんなで追っかける。そこでチョロチョロしたことをやると、奪われてショートカウンターになる。いやでも僕らは後ろ向きになっちゃう」と安間監督も警戒。組織的な守備とサポートの速さが鍵となる。日常的に行なわれているミニゲーム形式のトレーニングも、そうした局面対応の徹底を狙ったものだ。
チーム内の変化も見逃せない。アスルクラロ沼津との練習試合では、18歳の川合徳孟がキャプテンを務め、試合前の呼びかけも任されるなど、強い自覚が促された。試合後には自然と「昇格するぞ」という声が選手たちから上がった。
昇格争いのライバルであるRB大宮アルディージャに、ホームで大逆転負けを喫した試合を最後に、磐田はハッチンソン前監督との契約を解除。残り7試合となった段階で、U-18を率いていた安間監督に命運を託した。
指揮官は苦しい時こそ、あえて“昇格”というワードを強調して使うことで、選手たちに前向きな自覚を促してきた。「(就任当初から)馬鹿みたいに言ってたのは僕だけだったじゃないですか。だけど、ようやく選手から“昇格するぞ”という声が出てきた。見えるものは見えてきてると思うので、すごく期待してます。やることやってくれてるので」と安間監督は表情を緩めた。
磐田の残り3試合は、アウェーの山口戦、ホームのモンテディオ山形戦、アウェーのサガン鳥栖戦だ。長崎のような相手であれば、自然と選手のモチベーションが高まることは安間監督も認めるが、ここまで来たら、どこが相手だろうと関係ないはず。
「せっかく自分たちで、自力での昇格が見えるところまで持ってきたので。そこに関してはもう選手を信じてます」と安間監督。相手の山口も残留に向けて必死だが、それを打ち破った先にしか昇格への道はひらけてこない。
長崎戦で決勝点となるPKを決めた渡邉りょうは「それがまた最後の方に巡ってきたっていう。そこも乗り越えなきゃいけない自分たちの試練だと思う」と語る。開幕前の目標だったJ2優勝の可能性が消滅し、2位の長崎とは勝点6差。得失点差も考えると自動昇格はかなり厳しい。それでも3試合で最大勝点を獲得すれば、自力での昇格プレーオフは掴める位置にいる。
取材・文●河治良幸
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