最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
【北中米W杯出場国紹介|第2回:イングランド】組織的に走るタレント集団。明確な哲学のもとで機能する“トゥヘル式トランジション”

【北中米W杯出場国紹介|第2回:イングランド】組織的に走るタレント集団。明確な哲学のもとで機能する“トゥヘル式トランジション”


 フットボールの母国イングランド。ボビー・チャールトン、デイビッド・ベッカム、フランク・ランパード、スティーブン・ジェラード、ウェイン・ルーニー、そしてハリー・ケイン――いつの時代も才能に満ちたワールドクラスの名手が揃いながら、世界の頂に立ったのは1966年、自国開催のワールドカップだけだ。それから60年。再び黄金のトロフィーを掲げるための準備は、静かに、しかし着実に整っている。

 2026年北中米W杯の欧州予選で、イングランドは欧州勢の中で最速となる本大会出場を決めている。予選グループKの第6節・ラトビア戦を5-0で制し、6連勝&6戦連続無失点と完璧な内容で北中米行きのチケットを手にした。

 とりわけ守備陣の安定感は群を抜き、限られた活動期間の中でも、トーマス・トゥヘル監督の緻密な戦術が見事に機能しているのは、選手たちが元々持っている戦術眼をうまく結び付けているからだろう。

 最終ラインの軸となるのは、経験豊富なジョン・ストーンズだ。さらにエズリ・コンサ、マーク・ゲイといった新世代のセンターバックが周囲を固め、個人能力と組織的な対応力を兼ね備えた布陣を形成している。

 いずれもプレミアリーグの激しい強度の中で鍛え上げられた猛者たちであり、対人戦・ビルドアップ・戦術理解の三拍子が揃う。6試合で無失点という数字は、偶然ではない。
 
 中盤にはデクラン・ライスとエリオット・アンダーソンが並び、現代フットボールらしい強度を実現しながら、守備と攻撃のバランスを高い水準で維持している。ライスはボール奪取のスペシャリストとして知られ、鋭い読みに裏打ちされたインターセプトは絶品。アンダーソンは正確なパスに加えて、縦への推進力と運動量でチームのテンポを操る。彼らが築く中盤の秩序が、前線の自由を保証しているのだ。

 チームの象徴的な存在は言うまでもなく、キャプテンのハリー・ケインだ。最も厳しい戦いが予想されたアウェーのセルビア戦で、5-0勝利の口火となる先制点を奪うなど、欧州予選でも重要なゴールを決めてきた。

 得点だけでなくポストプレーやゲームメイクにも秀でたケインは、チームの精神的支柱としても頼れる存在だ。「イングランド代表は何よりも大切なものだ」と語る彼の力強い言動は、間違いなくチームの求心力につながっている。

 ドイツ出身のトゥヘル監督は、イングランド代表ではスウェーデン人のスベン=ゴラン・エリクソン、イタリア人のファビオ・カペッロに続く、3人目の外国人監督となる。緻密な分析と柔軟な戦術構築で知られる智将だ。

 ここまで4-2-3-1をベースとしながら、試合展開に応じて可変的に形を変える。もちろん欧州予選より、相手が多種多様となる本大会に向けては、選手選考も含めて柔軟な戦術を再構築していくはずだ。
 
 サイドアタッカーの層も厚い。右にブカヨ・サカ、左にアンソニー・ゴードン、さらにノニ・マドゥエケと、いずれもプレミアリーグの第一線で活躍する俊英たちだ。もちろん現在はスペインのバルセロナで奮闘するマーカス・ラッシュフォードも健在。彼らの推進力と1対1の突破力は、イングランドの攻撃を決定づける“ホットゾーン”となっている。

 また、フィル・フォーデンの所属クラブでの復調も朗報だ。サカやマドゥエケとも違うリズムがあり、決定的なフィニッシャーでもあるフォーデンが復帰すれば、世界制覇に向けた有効なオプションになるのは間違いない。

 ケインと縦のホットラインが期待されるのは、23歳のモーガン・ロジャーズ。流動的な動きで守備のギャップを突くのがうまく、縦に早くなりやすいイングランドの攻撃にあって、緩急の明確なアクセントにもなっている。

 もちろんジュード・ベリンガムが帰ってくれば、ポジション争いは熾烈を極めるだろう。トゥヘル監督は「特定のスターに頼らないチーム作り」を掲げるが、世界の頂点を狙うにはベリンガムという“ビッグピース”が必要不可欠という、現地の評論家や世間の声も強い。ベリンガムの状態も見極めながら、トゥヘル監督がどう判断していくか。
 
 イングランド代表の強みは、選手層の厚さと競争の厳しさにある。代表チームの土台となるプレミアリーグは“世界最高峰”と称され、各国代表級のスターが主力を争う舞台だ。イングランド代表クラスの選手であっても、上位を争う強豪クラブで主力を張るのは容易ではない。

 その熾烈な環境を勝ち抜いた者だけが、トゥヘルの下に集う。所属クラブで出番を失えば、名前のある“実績組”でも容赦なく切り捨てられる過酷な環境。だからこそ、このチームには閉鎖的な空気が見られない。

 欧州予選の成績が示す通り、現在のイングランドは攻守のバランスが極めて高い次元で保たれている。組織的なプレッシングでボールを奪い、そこから素早く攻撃へ転じる“トゥヘル式トランジション”。それは単なる個の集まりではなく、明確な哲学のもとに統率されたチームとして機能している。

 ただ、そうした機能性の追求だけで世界一を獲れるほど、W杯は甘くないだろう。気鋭の指揮官はここから何を加えていくのか。イングランドにとって縁あるアメリカ大陸の地が、挑戦の舞台になる。

文●河治良幸

記事:【北中米W杯出場国紹介|第1回:カーボ・ヴェルデ】ブルーシャークスの奇跡。彼らのサッカーはまるで音楽のようだ

【画像】モデルに久保建英! 北中米W杯でも着用、日本代表の“新ユニホーム”を特集!

【画像】どこもかしこもデザイン刷新! 世界各国の北中米W杯“本大会用ユニホーム”を一挙公開!
配信元: SOCCER DIGEST Web

あなたにおすすめ