ウエスタン・カンファレンスで昨シーズンのチャンピオン、オクラホマシティ・サンダーが快調なスタートを切っているのとは対照的に、東の王者インディアナ・ペイサーズは、エースのタイリース・ハリバートンの不在も響いて最下位の1勝7敗(現地11月6日時点)と苦戦中だ。
代わってイーストでは、シカゴ・ブルズやデトロイト・ピストンズら、数シーズン前まで上位争いとは縁がなかった球団の躍進が目覚ましい。
とりわけ一昨季にリーグワーストの28連敗を喫し、フランチャイズ史上最低の14勝68敗を記録したピストンズの成長は見事と言うほかない。
そんなチームのどん底シーズンにルーキーとして迎えられたアサー・トンプソンが、最近『The Players' Tribune』に寄稿したコラムの中で、苦難の時からいかにチームが再生したかを綴っている。
2023年のドラフトで全体5位という高順位で指名を受け、「僕のキャリアはここから始まる!」と胸を踊らせたトンプソン。デビュー2戦目と3戦目に連勝したところまではよかったが、そこから未曾有の28連敗が待ち受けていた。
高校卒業後に在籍した若手のリーグ、オーバータイム・エリートでも2年連続で優勝するなど、順風満帆だったそれまでのキャリアで経験したことのなかった事態に、「2勝29敗の時点でまだ残り51試合。半分も消化していなかった。途方もなくシーズンが長く感じられて、『燃え尽きるってこういう時に起きるんだ』と初めて知った」と、メンタル的にも疲弊していたと振り返る。
個人的にも、血栓除去のために3月以降の試合を全休するというつらいルーキーイヤーとなった。
しかし同年のオフ、12年目のティム・ハーダウェイ Jr.や14年目のトバイアス・ハリスといったベテランが加入したことで、チームは大きく動き始めた。
トンプソンいわく、2人は夏の間のキャンプから集中して取り組むことを選手たちに求め、少しでも緩みが見られると「勝つチームというのは、そういうことはしない」と戒めたという。そこでトンプソンら若手選手たちは「勝つチームになるためにやるべきこと」を叩き込まれた。
とりわけ以前にもピストンズに所属し、2015-16シーズンにはプレーオフ進出も経験していたハリスは、「デトロイトに再びプレーオフの景色を呼び戻すんだ!」と仲間たちに訴えかけた。
それがチーム全体の目標になり、トンプソン自身も「だんだんハリスの言葉が現実になることを信じられるようになっていった」と語っている。
そして実際にピストンズは昨季、6シーズンぶりにプレーオフ進出を果たした。ニューヨーク・ニックスに2勝4敗で敗れて1回戦敗退に終わったが、前年が球団史上最悪のシーズンだったことを思えば、奇跡のような復活劇だった。 トンプソンは、28連敗を喫した要因は「自分たちのゲームプランを最後までキープできなかったこと」にあったと指摘している。
「第2、第3クォーターまではシステム通りにプレーするのに、終盤になると『絶対に勝たないと』と焦るあまり、本来自分たちのベストを出せるはずのシステムから逸脱してしまっていた。でも勝つチームというのは、最初のクォーターと同じ戦い方を第4クォーターでもできているんだ」
そんななかでもトンプソンは、リーダー役を担ったケイド・カニングハムの、「どんな時も決して愚痴を言わず、他人を責めたりしない。そんな彼の姿がチームを導いた」とも語っている。
敗因から学んだゲーム運び、ベテランたちの統率力、そして若きエースのリーダーシップ。それらが融合して、ピストンズは勝てる集団へと再生したのだった。
そして今季、3年目を迎えたトンプソンが己に課しているのは、がむしゃらなディフェンスだという。
「どの街でプレーするかは、自分のプレースタイルを形作る上でものすごく影響を与えると僕は常々思っているんだ。先駆者たちが残したものは完全に消え去ることはない。とりわけデトロイトみたいな街ではね。デトロイトで頂点に立ったチームには必ず、粘り強いディフェンダーがいた。スチュ(アイザイア・スチュワート)はその典型。僕自身もその一員だと感じている」
同じ年のドラフトでヒューストン・ロケッツから全体4位指名を受けた双子の兄アメンは、昨季オールディフェンシブチームに選出された。その彼と幼少期から1オン1を繰り返してきたことも、アサーの守備的メンタリティーを養うのに役立ったという。
2023年のデビュー戦ではいきなり7リバウンド、5ブロックをマークして周囲をあっと言わせたが、今季も8試合を終えた時点でスモールフォワードの中ではリーグ3位の平均6.9リバウンドを記録するなど、トンプソンはディフェンスに心血を注いでいる。
チームとしてもディフェンシブ・レーティングは現在イーストで1位、リーグ全体でも3位と、守備意識の高さは成績にも表れている。
トンプソンは、生まれて初めてプレーオフでの勝利を経験した、昨季のマディソンスクエア・ガーデンでの第2戦を、「一生忘れない」と語る。
「デトロイトはまたプレーオフの景色を見る必要がある。僕はそれを手に入れるために必死に戦った。最後はファウルアウトしてしまったけど、でもあれが初めて経験したプレーオフの勝利だった。絶対に忘れないよ」
今季も再びその景色を見るために、伸び盛りの22歳は、いっそう奮起することだろう。
文●小川由紀子
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