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驚異の中断6回! “風の街”が牙を剥く。アゼルバイジャンGPはF1予選史上最多の赤旗記録を樹立……大混乱を振り返る

驚異の中断6回! “風の街”が牙を剥く。アゼルバイジャンGPはF1予選史上最多の赤旗記録を樹立……大混乱を振り返る

計6回の赤旗によりセッションが度々中断されたため、アゼルバイジャンGP予選は約2時間を要した。舞台であるバクー市街地サーキットは、超高速の長い直線区間と狭くテクニカルな低速区間を直角コーナーでつなぐ、ウォールに囲まれたコース。予選で多くのドライバーがウォールの餌食になったという事実は、コンディションの厳しさ、ミスに対する容赦のなさを如実に物語っている。

 今年のアゼルバイジャンGP予選での赤旗中断6回は、昨年のサンパウロGPと2022年エミリア・ロマーニャGPで記録された5回を上回り、予選における史上最多赤旗回数を更新した。

 カスピ海西岸に突き出したアゼルバイジャンの首都バクーは“風の街”として知られ、サーキット周辺で風向きがコロコロと変わることがドライバーたちを苦しめた。マクラーレンのランド・ノリスは予選を終えて「本当に信じられない状況だった。今回のクラッシュの半分は風の影響だったと言えるほどで、風の難しさをみんなに理解してほしい」と語っていたほどだ。

 もちろん、ドライバーのミスによって発生したクラッシュもあった。ウォールが非常に近いこのコースでは、あるラインでコーナーに進入したら最後、後戻りはできない。ターンインを極端に早く中断しないかぎりは、退避路に逃げることはできないのだ。計6回の赤旗を振り返ってみよう。

1回目:アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)

 ウイリアムズのアレクサンダー・アルボンはQ1のタイム計測に臨んだ際、ターン1でステアリングをわずかに早く切ったことで左フロントタイヤをイン側のウォールにヒット。ステアリングアームが即座に破壊され、アルボンはピット出口ライン脇にマシンを止めることとなった。ここで1回目の赤旗が提示された。

 アルボンはグリップ不足を予想し、ターンインをわずかに早めることでそれを補おうとしたが、自身の想像以上にターン1にはラバーがのっていたという。

「完全に僕のミスだ。言い訳の余地はない。アマチュアじみている」とアルボンは語った。

「多分僕が最初にコースに出たと思うんだけど、1周目のターン1は本当にグリップが不足していた。2周目に同じコーナーを攻めた時、グリップ差が極端に大きかった。フロントが少しスライドすると思っていたんだ。通常なら少しスライドしてウォールギリギリを抜けられるはずだった。ウォールに近づくタイミングで少しアンダーステアが起こるよう合わせ込むんだ」

「でも今回はアンダーステアが起きなかった。ドジだし悔しい。マシン自体は速かった。ほぼ全てのセッションでトップ8に入っていたし、週末を通してマシンの感触も良かった。Q3進出が確実なマシンを手にしながら脱落というのは本当に悔しい」

2回目:ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)

 マクラーレンのオスカー・ピアストリはQ1序盤に有効なタイムを計測できていなかったが、2回目の赤旗が提示されるわずか2秒前にQ2進出を事実上確定させた。2回目の赤旗はザウバーのニコ・ヒュルケンベルグがターン4でロックアップを起こして、テックプロバリアに突っ込んだことが原因で提示された。

 ヒュルケンベルグは比較的低速でクラッシュを喫したことで、フロントウイングを失ったもののリバースギヤを使って走行ラインに戻り、ピットへ帰還することができた。多重クラッシュの危険はあったものの、このアクシデントに対して赤旗が提示されたのはやや早計だったかもしれない。

 ヒュルケンベルグはノーズを交換してQ1最後のアタックに挑んだものの、17番手でQ2に進出することはできなかった。

「他のセッションよりもはるかにフロントのロックアップに苦しんだ」とヒュルケンベルグは説明した。

「それが決定的な差を生んだ。全くフロントロックが発生しないラップは1周もなかった。このコースではかなりの痛手だ。本当にイライラするし悔しいよ」

3回目:フランコ・コラピント(アルピーヌ)

 3回目の赤旗はQ1最終盤に発生した。アルピーヌのピエール・ガスリーが突風の影響でターン4を曲がりきれず退避路に進んだことで、当該コーナーには既に黄旗が振られていた。ガスリーがコース復帰を試みる中、チームメイトのフランコ・コラピントがこの右コーナーへと差し掛かった。

 しかし昨年のアゼルバイジャンGPフリー走行1回目と同様に、コラピントはコーナー進入速度が速く、ブレーキングでコントロールを失った。大きくラインを外れたコラピントは左リヤタイヤからテックプロバリアに接触。その衝撃でフロントが浮かび上がり、ウォールに2度打ち付けられた。これによりQ1は赤旗終了となった。

 ドライバーの判断ミスという要素も関係しているが、ノリスはこのターン4は突風の影響を最も受けやすいコーナーのひとつだと指摘していた。

「多くのドライバーがロックアップしていた。人生で走った中で最悪のコーナーのひとつに感じた」とノリスは言う。

「50km/hみたいに感じられる追い風が吹いたと思ったら、次の周回では10km/hくらいに変わって、もう少し速く走れる気がするんだ。それで速く走ったら、次の周回でウォールに激突……本当に難しいよ」

4回目:オリバー・ベアマン(ハース)

 Q1では3回の赤旗中断が発生したが、続くQ2は1回で済んだ。ハースのオリバー・ベアマンは通常通りターン2に進入し、エイペックスを捉えた後はウォールに近いラインを取った。しかしリヤがスライドし、右リヤタイヤがウォールと軽く接触……しかしトラックロッドが破損するには十分過ぎるダメージであり、マシンはカニ歩き状態に。ターン3へと向かう直線でベアマンはマシンを止めることを選んだ。

 ベアマンはターン2出口では風の影響があったと説明したもの、クラッシュ自体は自身のミスだと受け止めた。

「週末を通して僕らは速かったのに、僕は予選で馬鹿なミスを犯してしまった」とベアマンは語った。

「コースは非常に風が強くて、完全にそれに翻弄されてしまった」

5回目:シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 アゼルバイジャンGP予選で4連続ポールポジションを獲得していたフェラーリのシャルル・ルクレール。予選の序盤はフェラーリが好調さを見せ、今年もポールポジションが狙えると予想されていたが、ルイス・ハミルトンがQ2で失速しルクレールは1台でQ3に進んだ。

 しかしルクレールは旧市街地エリアを駆け抜け、ターン15に差し掛かったところで左タイヤをロックアップ。テックプロバリアに正面から激突した。

 これでこの予選5回目の赤旗が振られた。当時は風が強まり小雨がポツポツと落ちてきたことで、路面はやや滑りやすいコンディションとなっていたが、ルクレールはこうした状況がクラッシュの原因ではないと考えている。むしろQ3をミディアムタイヤで走り出したフェラーリの判断に問題があったと考えているのだ。

「Q1とソフトタイヤでの全周回ではるかに良い感触を覚えていた。その後、ベストなタイヤと考えて温存していたミディアムに履き替えたけど、今回の路面温度ではこのタイヤを機能させることは不可能だった」とルクレールは言う。

「コンディションの良し悪しに関わらず、これが原因だとは思わない。ミディアムタイヤでは純粋にペースがかなり不足していた。ミスをする前でも、おそらく0.7〜0.8秒遅れで、必死にプッシュしていたんだ」

6回目:オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

 ピアストリはミスが少ないドライバーだが、Q3が残り4分を切ったところでのアタックでクラッシュを喫した。これが予選6回目の赤旗となった。

 ソフトタイヤでタイム計測を開始したピアストリは90度コーナーのターン3でエイペックスにつけず。レーシングラインを離れてアウト側のウォールに吸い込まれていった。

「ターン3で少し無理をしすぎたと思う」とピアストリは語った。

「実際に何を間違ったのかはまだ見ていない。それほど大きく違うとは思わないからね。でもほんのわずかな違いが大きな結果を生むこともある」

 Q3では2度の赤旗中断によって3台のみがタイム計測し、ウイリアムズのカルロス・サインツJr.が暫定トップという状況だった。セッション再開後の最終アタックでは、唯一レッドブルのマックス・フェルスタッペンのみがサインツJr.のタイムを上回り、ポールポジションを獲得した。

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