アメリカ最大の都市、いや経済と環境も含め、世界No.1の都市。そのニューヨーク市の市長選で「マムダニ旋風」が吹き荒れた。弱冠34歳、アフリカ生まれ、イスラム教徒、元ラッパーという異色の経歴で、選挙前はニューヨーク州議会議員だったが、全くの無名。
その男、民主党候補ゾーラン・マムダニ氏が、トランプ大統領が推すアンドリュー・クオモ元ニューヨーク州知事らを破る、番狂わせを演じた。
「マムダニ市長」を誕生させた原動力はトランプ政権下、ニューヨーク市で進む異様なインフレなどへの、市民の猛反発だ。800万市民の多くはとりわけ、異常な家賃高騰に悲鳴を上げている。今、ニューヨークの1ベッドルームの平均家賃は、日本円で60万円前後。いかに異常かがわかるだろう。
「他の物価高騰も重なり、年収800万円でも貧困層に入ってしまうという異様な状況。マムダニ氏はこれに敢然とノーを突き付けると、『家賃値上げ凍結』『保育料や市営バスの無料化』など、生活費負担の軽減を謳う政策を公約に掲げた。そして瞬く間に、トップランナ―に駆け上がり、当選したわけです」(アメリカメディア関係者)
さて、問題はこれからだ。トランプ大統領はマムダニ氏を「共産主義者」と非難して、「兵糧攻め」で市政運営をスットプさせる姿勢だ。第一弾として早くも、ハドソン・トンネル・プロジェクトなどの連邦資金、日本円にして2兆7000億円を凍結させている。
そしてなんといっても、これからの最大の焦点は、選挙中もトランプ大統領の最大の後ろ盾として「マムダニ潰し」に動いたトランプ政権の首席デザイン者であり、旅行プラットフォーム「エアビーアンドビー」創業者のジョー・ゲビア氏、投資家ビル・アックマン氏らとマムダニ氏の、市長選後の対決だ。
「総資産1兆円超えのゲビア氏とアックマン氏は、反マムダニのクオモ元ニューヨーク州知事らに、選挙資金としてそれぞれ3億円前後もの巨額を投じて反マムダニ・キャンペーンを展開したものの、敗れました。そこでマムダニ氏が市政運営のために富裕層から、あるいは大企業増税で集めようという1億5000万円超の資金を枯渇させるため、富裕層らにニューヨーク大脱出キャンペーンを仕掛けようとしています。トランプ大統領に倣った、第二の兵糧攻めでしょうか」
ニューヨークから飛行機で3時間、企業への税金優遇と各種支援策を展開するテキサス州などにニューヨークから移転する大企業の動きは、選挙前から活発だ。その最たるものが、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどの金融大手。モルガンはすでに、テキサス州に3万人を超える社員を配置する準備を進めている。市長選を境に、こうした動きが企業や富裕層でさらに加速するのか。
「それでもいざニューヨーク脱出となると、簡単ではないですが…」(シンクタンク関係者)
欧州の諜報機関関係者は、こうも指摘する。
「一部でマムダニ氏の当選をよしとしない暴徒が、テロに走る懸念が増している」
ニューヨーク市の政治情勢はアメリカばかりか、世界への影響も大きい。今後もニューヨーク市の動きから目が離せないゆえんである。
(田村建光)

