
鹿島の中堅・若手はタイトル未経験。松村は危機感「早くこの壁を越えなきゃ」。常勝軍団復活へ。植田も強調「必ず優勝しないと」
11月8日のJ1第36節。首位に立つ鹿島アントラーズは、ホームに横浜FCを迎えた。残留争いを戦う相手は「絶対に負けられない」という闘争心を前面に押し出してきたが、鹿島も2016年以来、9年ぶりのリーグ制覇のために1ポイントも落とせない。勝利への強い意識は序盤から色濃く感じられた。
前半は堅守から長いボールを多用する横浜FCの割り切った戦いに苦戦し、シュートは3本しか打てなかったが、ハーフタイムに鬼木達監督が「自分たちは負けない戦い方を選んでいないか」という問いかけがあり、選手たちも消極性を反省。「後半は自分たちから点を取りにいこう」とスイッチを入れた。
その結果が、2-1の勝利につながった62分と65分のゴールである。1点目を奪ったのはエースのレオ・セアラだが、起点となるドリブル突破を見せたのは、7月5日の川崎フロンターレ戦以来の先発となった松村優太。彼の巧みなスルーパスを田川亨介が受け、ンドカ・ボニフェイスをかわした田川が折り返したボールを背番号9が流し込む。見事な連係だった。
「久々に僕とか田川選手が先発で出たのは、僕たちの特長を活かして、背後を狙っていこうという意図があった。前半のうちにそうできれば良かったけど、相手がブロックを引いてきたんで、なかなかスペースがなかった。そこで後半、『間で受けてみよう』と修正したことで、1つ得点につながった」と松村は冷静に話した。自身がスタメンで出た試合で大きな足跡を残したことで、彼自身も手応えを掴んだに違いない。
2点目は小川諒也の右CKから知念慶が打点の高いヘッドで仕留めた形。その前段階で、後半から出場の右サイドバックの濃野公人が高い位置まで攻め上がり、L・セアラにスルーパスを供給。これによって貴重なCKを得られたのだ。
守護神の早川友基、終盤に投入された舩橋佑、津久井佳祐、徳田誉にしてもそうだが、鹿島の20代半ば以下の生え抜きプレーヤーたちは、タイトル未経験。そういう彼らが要所で良い働きを見せ、横浜FCの粘りに屈することなく勝利に貢献し、9年ぶりのリーグ制覇に王手をかけたことは注目すべき点だ。
松村は以前、「自分は2020年に鹿島に入ってきてから、一度も優勝していない。早くこの壁を越えなきゃいけない」と危機感を吐露したことがあった。今の鹿島のメンバーを見ると、30代の柴崎岳や植田直通、29歳の鈴木優磨、三竿健斗らは辛うじて9年前のJ1優勝を知っているし、移籍組の小池龍太や知念、小川もタイトルの経験があるが、大半はタイトルの味を知らない。中堅・若手世代が頂点に立つ経験をしなければ、常勝軍団復活への布石を打つことはできないのだ。
オズワルド・オリヴェイラ監督体制の2007~09年のリーグ3連覇の前も、似たような状況があった。01年のリーグ制覇の後、鹿島は5年間、リーグ優勝から遠ざかっていた。当時は柳沢敦、小笠原満男、曽ケ端準ら90~2000年代の黄金期を知る面々がチームを引っ張っていたが、彼らより下の野沢拓也、青木剛、岩政大樹、中後雅喜ら中堅・若手はタイトル獲得という成功体験を得られずにいた。
「自分たちが優勝しないと周りの見る目も変わらないし、評価も上がらない」と20代前半だった岩政もよく話していたが、彼らに強い危機感があったのは確かだ。その重圧は9年間、リーグ制覇から遠ざかっている今よりも大きかったかもしれない。
それを2007年に死に物狂いで跳ね返し、悲願の頂点に立った後、鹿島は第二次黄金期に突入。岩政や田代有三、興梠慎三、内田篤人らが日本代表へ飛躍した。
この事例を見ても分かる通り、松村や荒木遼太郎、濃野らは今、サッカー人生の分岐点にいる。ここで成功を収められるか否かで今後のキャリアは大きく変わってくる。そのくらいの強い自覚を持って、残り2戦を戦ってほしいのだ。
「自分もそうだったけど、若い選手がタイトルを取る喜びを味わえれば、次のタイトルが欲しいという気持ちになる。それがあることによって、チームはさらに強くなる。だからこそ、今年は必ず優勝しないといけない」と植田も語気を強めていた。それを松村らが確実に遂行することが肝要なのだ。
「鹿島入りから5年経ってやっとここまで来た? そういう思いはシーズンが終わってから感じること。今は一選手として鹿島にしっかり貢献して、勝利に導くことだけを考えてやりたいと思います」
松村も神妙な面持ちで話したが、ここまでの紆余曲折を含め、経験してきたことを還元するのは、まさに今。同期の荒木、同い年の濃野とともに彼らが若手を引っ張る姿勢でラスト2戦を乗り切れば、必ずや頂点に立てるはず。中堅世代以下の自覚と奮起が、東京ヴェルディ戦と横浜F・マリノス戦を大きく左右するだろう。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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