経済評論家・勝間和代が、家電やテクノロジーを活用した効率化のノウハウをまとめた新刊『仕事と人生を変える 勝間家電』(ダイヤモンド社)を刊行した。2,000点以上の家電を自腹で試した経験から、具体的な「最強ツール」とともに、時間を取り戻すための思考術を紹介している。
彼女はなぜここまで家電やガジェットに惹かれるのか。また、どのような基準で選び、日常に取り入れているのか。本人に聞いてみた。〈前後編のうち前編〉
幼少期から「何はなくとも家電」な生活だった
––––経済評論家である勝間さんですが、そもそも家電やガジェットに強く惹かれるようになったきっかけはなんだったのでしょうか?
勝間和代(以下同) もともと父がAV家電の下請けの仕事をしていたんですよ。だから家には部品がよく転がっていましたし、“ノルマ”みたいなものがあって最新家電を買うことも多かった。当時は下町の長屋に住んでいたのですが、父はよく「この辺りで、うちが最初に洗濯機とテレビを買ったんだぞ!」と自慢していました(笑)。
––––幼少期から最新テクノロジーが身近にある環境にいらっしゃったんですね。
そうなんです。だから今回執筆した書籍に対して「集大成だね!」と言ってくれている方もいらっしゃいます(笑)。
CDプレーヤーもかなり早い段階で持っていましたし、中学1年(1981年)のときにはすでにパソコンを所有していました。社会人になってからも、「何はなくとも家電」。なけなしのお金で乾燥機を導入したり、型落ちの家電を買ったり。ISDN(インターネット回線)を自宅に引いたときは、業者に「葛飾区で2軒目」と言われましたね。
––––新刊『勝間家電』を読むと、家電を単なる便利な道具としてではなく「自分の代わりに働いてくれる存在」として捉えていらっしゃる印象があります。勝間さんにとって、家電への投資はどんな意味を持っていますか?
仕事を辞めて自宅にいる時間が増えたとき、「もう人を雇う時代じゃないな」と思ったんです。働いていた頃は週に何度か家事代行をお願いしていましたが、家にいるなら自分でやったほうがいいな、と。
そのタイミングでホットクックや新型ルンバが登場して、「これは人を雇うより家電を雇う時代だな」と実感しました。そこから、“人を雇う”のではなく“家電を雇う”ようになったんです。
––––「自分でやって質が下がるなら、家電に任せて質を上げて時間を取り戻す」という考えですね。
そう。洗濯も皿洗いも、機械のほうがずっときれいで効率的なんです。だから「洗濯は機械でやるのに、なぜ皿は手で洗うの!?」って、周りにもよく言っています(笑)。
家電への投資は「使用頻度で決める」
––––家電にお金をかける・かけないの線引きは、どのように判断していますか?
これは簡単で、「使用頻度」です。どれだけ使うかで決めています。
例えば私は35万円くらいするパナソニックの最上位洗濯乾燥機を使っていますが、1日3回は稼働しますし、外に干す手間もなくなる。だから高くても価値があります。掃除機も同じですね。
一方で、フードプロセッサーのように数週間に一度しか使わないものはコスパが悪い。使用頻度で割り算して、一回あたりのコストを見れば“投資すべき家電”が自然に見えてきます。
––––家事において「家電に頼るのはズルい」「手間をかけるのが愛情だ」という考え方も依然ありますが、それについてはどう思われますか?
それはテクノロジーへの考え方の違いだと思います。生活のいろいろなシーンで最新技術に頼っているのに、「家事だけは手作業じゃないとダメ」とするのは矛盾ではないかなと。もちろん、全部自分でやりたい人を否定するつもりはありません。でもそうでないなら、効率化できるところは機械に任せるのが自然。家電だけ例外扱いするのは不思議ですよね。
––––普段、どのような基準で家電を選んでいますか?
基本的には、気になったものは一度自分で買って試します。使ってみて合わなければ、売るか、人にあげるか、返品します。Amazonで買う場合も、品質が悪かったり互換性がなかったりしたら返品ポリシーに従ってすぐに返します。レビューやスペック表だけを見ても、本当の使い勝手はわからないんです。
その際、「自分が必要としていることが、きちんとできるかどうか」を見極めます。
たとえば最近モバイルモニターを3台買って、2台返品しました。16:9の表示比率と求めていた給電方式を両立できるものがなかなかなくて、実際に使わないと分からないんですよ。いちいち電源やバッテリーをつながなければならないような製品は、結局使わなくなります。
「これだと使わなくなるな」と思うような家電は、最初から買わない。人間って、繰り返しの行動に20秒以上手間がかかるとやらなくなるものなんです。だからこそ、操作や準備にストレスを感じないことが、私にとって大事な選定基準のひとつです。

