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なぜSNSにはデマを流す“インプレゾンビ”が増え続けるのか…「信じたいものを信じ、信じたくないものを信じない」人間の本能とアルゴリズム

なぜSNSにはデマを流す“インプレゾンビ”が増え続けるのか…「信じたいものを信じ、信じたくないものを信じない」人間の本能とアルゴリズム

意識的にアテンションを払うべきものは?

このアテンション・エコノミーの原理は、プラットフォーム企業側の収益獲得の最適化だけでなく、プラットフォームを利用するユーザー側の発信行動とも強く関係している。

SNSで投稿するユーザー自身、意識する/しないにかかわらず、いかにして他のユーザーのアテンションを集め、いかにして「バズる」かを競うようになっているのだ。

そしてSNSのアルゴリズムは、アテンションが集まるような人気コンテンツを優遇するロジックに最適化されているために、このようなユーザー間の競争に拍車をかけることになる。

また、アテンションが集まる人気コンテンツは一度アルゴリズム上で優遇されると、さらにアテンションを集めやすいという再帰的な構造をもっている。

たとえば、一定以上の「いいね」数を集めて人気のあるコンテンツ(=アテンションが集まっているコンテンツ)だとみなされれば、アルゴリズムはそれをより多くのユーザーの表示候補リストに含めるようになり、「おすすめ」などのタイムライン上に出現する頻度が上がる。

そうすると自然と多くのユーザーがその投稿に接触するようになるため、さらにそこに「いいね」などの反応が集まる、という循環が発生するのだ。そのときそのコンテンツが真実かどうかなどの信頼性や正確性はほとんど関係がなく、単に多くの人のアテンションを集められたかどうかが重要な指標になってしまう。

そこに他のユーザーのシステム1による直観的な判断(確証バイアスなどの偏った判断を含む)が重なることによって、ちょっとした投稿が予想外に拡散したり、誹謗中傷や炎上となって拡大したりする構造が構築されるわけだ。

SNSをはじめとするプラットフォームの情報に接する際は、直観的な反応に身を任せるのではなく、このようなアテンション・エコノミー環境におけるアルゴリズムを用いたメディアの特性と、認知バイアスなどの人間の心理特性にこそ、意識的なアテンションを払う必要があるといえるだろう。

広がる「インプレッション稼ぎ」

問題は、こうした自覚のない投稿による拡散や炎上だけではない。近年では一般のユーザーであっても、まさにこのアテンション・エコノミーの経済原理を活用して広告収益をえようとするインセンティブが働くようになっている。

たとえばXでは投稿のインプレッション数(表示回数)が多ければ多いほど、広告収益の配分がえられるアルゴリズムが一般ユーザーにも導入されたことで、単に自己主張をしたり承認欲求を満たしたりするためではなく、金儲けのためにアテンションを集めようとする人も増えている。

その中には、デマや虚偽情報を流す悪質なものも多い。

このような行為は「インプレッション稼ぎ」といわれ、意図的に人々の不安や怒りの感情をあおるような(アテンションをえやすいような)情報を流すことで、自分自身のアカウントのインプレッション数を上げようとする行為を指す。

実際、2024年の能登半島地震では、被災者を装って助けを求める投稿や、2011年の東日本大震災の津波の動画を加工して、あたかもそれが2024年に発生したかのようにみせかける投稿などが相次いだ。

これは、災害のように情報に対する需要が高くアテンションを多く集めやすい状況において、共感や拡散を狙った虚偽のコンテンツを投稿することで、アルゴリズムを活用して自身のアカウントのインプレッション数を増加させようとしたものである。

このような意図的に虚偽情報を流す行為は決して許されるものではないが、そもそも「インプレッション稼ぎ」が成り立つのは、SNSのアルゴリズムがアテンション・エコノミーに最適化され、投稿の真偽よりもアテンションを重視するしくみが構築されてしまっているからである。

脚注
*1  Kahneman, D. (2011=2014). Thinking, Fast and Slow. Farrar, Straus and Giroux. (村井章子訳『ファスト&スロー─あなたの意思はどのように決まるか?』上下巻、ハヤカワ文庫NF)

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