
欧州王者撃破でGS首位突破。3バック→4バック→5バック、臨機応変な対応で示した廣山ジャパンの進化【現地発】
[U-17W杯]日本 2-1 ポルトガル/11月9日/Aspire Zone – Pitch5
残された時間は後半アディショナルタイムを含め、20分以上あった。2−0でリードしているとはいえ、欧州王者・ポルトガルの圧力に耐えるのはあまりにも長い。10人で戦うなかでどれだけ耐えられるのか。不安をよそに選手たちは逞しく戦い、勝点3を手にした。
11月9日に行なわれたU-17ワールドカップのグループステージ・第3戦。他会場の結果に関わらず、2位以上での突破が決定的だった廣山望監督率いるU-17日本代表はポルトガルと対戦した。
前半に2点を奪い、最後までリードを守り切り、2−1で勝利を掴んで首位通過を決めた。だが、90分を振り返れば、簡単な戦いではなく、チームが発足してから最も厳しいゲームだったのは間違いない。
前半から真っ向勝負を挑み、個性豊かなアタッカー陣の封じ込めに成功。組織的な守りで相手に得点を与えない。相手の圧力をうまく交わしながら攻撃を展開し、試合を優勢に進めた。
前半は文句なしのパフォーマンス。後半に期待が持てる内容だった。だが、ハーフタイムを終えると、ギアを入れ直してきたポルトガルに苦戦。今大会3得点をマークしている大型FWアニシオ・カブラル(ベンフィカ)の投入で相手の勢いは増し、自陣で守る時間帯が増えた。
そして、71分。ゲームの分岐点が訪れる。右ウイングバックのMF長南開史(柏/1年)が相手と接触した際に足を出してしまう。FVS(リクエスト方式のビデオ判定)で報復行為が認められ、一発退場となったのだ。
優勝候補の一角で圧倒的な攻撃力を誇るポルトガルに対して、10人で戦うのは至難の業。数的不利になった直後の75分に3バックの左を本職とするDF藤井翔大(横浜FMユース/2年)を投入し、3バックから4バックに変更。左CBに入っていたCBメンディーサイモン友(流経大柏/2年)を右SBに配置転換し、4−4−1の形で凌ぐ策を取った。だが、簡単には事が進まない。
シャドーからサイドハーフにポジションを変えていたFW吉田湊海(2年/鹿島ユース)とFW浅田大翔(横浜FM/3年)が押し下げられ、6−2−1のような陣形で守ることになった。
「他の試合の結果を見て、『レッドカードがあるよ』という話をしていた。心づもりはあったし、ハーフタイムにそういう話もしていた。そのなかで実際にやるとなると、また全然違う」と廣山監督が明かしたように、思うような守備ができなくなった。
最終ラインが押し上げられず、中盤もMF野口蓮斗(広島ユース/2年)とMF和田武士(浦和ユース/1年)の2枚では広大な範囲をカバーしきれない。80分にはゴール前の混戦から1点を返され、土俵際に追い込まれた。
緊急事態を乗り切るべく、ベンチが再び動く。5バックで戦う決断を下したのだ。88分に浅田を下げてDF竹野楓太(神村学園/2年)を投入。右ウイングバックに竹野を置き、メンディーを再び左CBに置き、藤井を左ウイングバックに配する5−3−1に舵を切った。
「4−4−1で守れないわけではないけど、より選手がはっきりプレーできるように5枚にした。個人の特徴を活かす配置にし、それが結果的にうまくいったと思う」(廣山監督)
指揮官の狙いについて選手たちも守り方が整理されたとし、やるべきことが明確になったと振り返る。
「(4−4−1にしてから)廣山さんからは繋ぐ指示が出ていたけど、自分たちはかなりきつかった。相手のCBにボールを持たれ、特に4番が保持した時が嫌。自分たちもキツくなって最終ラインが下がった。スライドも間に合わなくなり、失点もしてしまって。4バックではきついと思ったなかで5バックになったので、そこは本当に良かったなと思う」(メンディー)
5分のアディショナルタイムも含め、再構築した守備で凌ぎ切った日本。2−1で逃げ切りを果たし、見事に首位でグループステージ突破を決めた。
真剣勝負の場でこれほどまでにタフなゲームを味わえたのは、選手にとって大きな財産になる。何より、試合中に戦い方を変え、最適解を模索しながらやり切れたのは大きい。
「今回10人で戦えたことでプラスになった。グループステージを乗り越えたので、ノックアウトステージを戦ううえで相当自信になったと思う。どんな状況でも冷静に戦うことができる」と、和田も胸を張った。
思い返せば、チーム立ち上げ当初から守備が課題。不用意な失点が目立つなかで、4月のU-17アジアカップの第2戦(ベトナム/1−1)でも土壇場に失点するなど、盤石とは言えない守りだった。
それでも経験を積み、個人でも組織でも大きく成長。ノックアウトステージでは強豪国との戦いが続くなかで、手にした自信は次につながる。ラウンド32の対戦相手はまだ決まっていないが、ポルトガル戦を乗り越えた価値は何事にも変え難いものだった。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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