・最終リハーサル
リハが行われるのはだいたい週末の夜。3回公演を終えて掃除や点呼を済ませ、いったん仕事が終わった後に関係者がテント内に集まる。当然、一般公開はされない。
集まるのは芸を行う本人の他、指導をした先生、さらに本番で道具を用意したり命綱を持ったりする「黒子の役割」をする裏方団員。サーカスでは後見(こうけん)と呼ばれる。そして音響照明スタッフも本番と同様に配置につく。
舞台の準備が整うと社長が登場。音響スタッフがマイクを渡し「それでは始めましょう」という合図で、社長はリングサイドの最前列に座る。仕事を終えた他の団員たちもリハーサルを見守るために空いている客席へ。独特の緊張感が舞台を包む……
デビュー当日よりも「社長見せ」のリハが最も緊張する。これは本人だけではない。共同生活を送る仲間たちは、必死に練習をする姿も、悔し泣きをする姿も、諦めずに挑戦し続ける姿もすべて見てきた。
だからこそ客席から見守る団員たちも本人と同じくらい……いや、それ以上に緊張しているのだ。
・成功と失敗
芸を指導してくれた先生のためにも、仲間である団員のためにも、もちろん会社のためにもリハーサルを成功させなければならない。その重圧の中、団員たちは舞台で芸を披露する。
リハーサルを終え、社長からOKが出ると客席から拍手が沸き起こる。「ありがとうございました!」……長い練習からの解放という安堵の気持ちと達成感、そして先生や仲間たちへの感謝の思いがあふれ、涙を流す団員もいる。
「明日からな」「よく頑張った」「緊張しすぎやで」など先輩たちから声をかけられる。そして本人より涙を流す同期の仲間たち。
一方で、練習ではいつも成功しているのにリハーサルでうまくいかない場合もある。「もう少し練習をしましょう」と言われた団員は、その場で悔し泣きをする。練習に付き合ってもらっている先輩にも仲間にも申し訳ない……
社長見せのリハを乗り越えないと舞台に立てないので、チャンスを逃した悔しさは計り知れない。それでもまた練習を重ね、次のチャンスを待つ。それがサーカスの世界なのだ。
