
「爪痕を残さないといけませんね」日本代表に初招集。ベルギーで奮闘する2人に問いかけた。答えは――【現地発】
ベルギーリーグは14節を終え、7人の日本人選手が所属するシント=トロインデン(STVV)は4位という好成績を残している。
直近2試合のアントワープ戦、スタンダール戦はともに1-0の僅差ながら、内容では相手を圧倒。ポゼッションで相手を翻弄し、ボールを失ったら即時回収を図り、すかさずショートカウンターを仕掛けている。
11月シリーズに臨む日本代表にはDF谷口彰悟に加え、初めてGK小久保玲央ブライアン、FW後藤啓介が選ばれた。チームを率いるワウター・フランケン監督は「今回、3人が日本代表に選ばれたのは喜ばしいこと。うちには他にも伊藤涼太郎、山本理仁という中心選手がいるんですよ」と胸を張った。
スタンダール戦では今季4点目となる決勝ゴールを決めた後藤に、地元記者が「夏にアンデルレヒトからSTVVに期限付き移籍した時、チームが上位6チーム内にいるなんて想像したか?」と尋ねた。
「いや、自分が(STVVの順位を)上げるつもりで来たので、そのとおりになってホッとしてます」
点取り屋らしい、後藤の強気な言葉。しかし、この短いコメントの行間には“チームを勝たせるために、俺はすべてを尽くす”というニュアンスが含まれている。
それを証明する1つが、“前線のストッパー”と呼びたくなるような激しい守備。後半のアディショナルタイムにもやってのける。スタンダール戦では、どういう思いで相手DFのボールを奪いにいったのだろうか。
「前半、自分たちが良いプレーをしていたけど、ゴールを奪えなかったのは攻撃陣の責任です。そのなかで、守備陣がしっかりゼロで抑えてくれた。あの場面では“チームが助かるプレー”を考えて、ファールでもいいと思って行った。
自分も最終ラインをやっていたことがあるので、ああいうプレーをすると(みんなが)助かるなと思ってやりました。中学1年生から2年生くらいまで、自分はセンターバックで試合に出ていて、年代別代表はディフェンダーとして呼ばれていたんです」
アンデルレヒトのリザーブチーム、RSCAフューチャーズ時代の後藤は、与えられたタスク以外のことも自身で考え、実行していた。ボールが遠くまで飛んでいくと、後藤は走って拾いに行って、そのままロングスローを投げていた。
「フューチャーズは選手が若く、経験が少ない。自分はジュビロ磐田で、Jリーグを大人の中でプレーする経験値があった。お手本にならないといけない年齢でしたし、そういうことを意識してやってました」
今季の後藤はスタッツ上4ゴールだが、実際には不運としか言いようのないオフサイドの判定でゴールを何度か取消されている。彼がゴールネットを揺らしたシーンを振り返ると、“触れば1点”というところに潜り込むゴールの嗅覚と、チームとして一手詰みの状況を作り出すことが噛み合っている。
「それは間違いないと思う。自分が持ってるもの(=得点感覚)も多少はありますけれど、チームがあそこまで押し込んで、ポケットを取って、崩し切ってるからこそ、最後、こぼれてくるんだろうなと思うので、やっぱりチームのおかげだと思います」
アントワープ戦、スタンダール戦と続けてSTVVが押し込んだため、GKにとってはリズムを作りづらい試合だったが、小久保は両ゲームで後半、貴重なビッグセーブを披露した。
小久保の成長にフランケン監督は目を細める。
「昨季のレオ(小久保)はプレーに波があったが、今季は安定している。シャルルロワ戦で1個、ミスがあった。ユニオン戦の1失点目も止めることができたかな。でも今季は本当に良い。私たちはレオに全幅の信頼を置くとともに、練習で“プッシュ”(ニュアンスとしては激を入れること)し続けてます。
キーパーコーチが変わり、メソッドも変わったのでレオも新鮮な気持ちで取り組めているのかもしれません。キーパーコーチはディテールにこだわるタイプで、レオに映像を見せながらフィードバックしてます。日本代表に選ばれたのは、彼が頑張ってきたことに対しての贈り物です」
――集中力を切らすのは、彼の課題です。
「だから、我々は彼に“働け! 働け! 働き続けろ!”とプッシュしてるんです。改善点を差し引いても、レオは確実に成長しています」
そんな話を小久保に伝えると、「一昨日、5分くらいでしたが監督とミーティングをしました」と教えてくれた。
「『代表、おめでとう』ということと、『去年と比較すると、波がなくなった』と言われました。とても嬉しいです。やっと安定してきました」
プレーが安定した秘訣とは?
「昨季は『自分からアクションしないといけない』というのがあったのかなと思います。だけどキーパーは“受け身のポジション”。相手の打ってくるシュートに反応したり、バックパスに対応したりする。こうしてプレーが安定しました。それに加えて、プレッシャーが自分の頭の中から少し減りました」
――オナナのような“積極的なGK”もいますが、小久保選手は“受け身のポジション”という本来のGKの姿を取り戻した感じでしょうか。
「そうですね。なにか自分でしなきゃいけない、評価を上げたい、というのが去年はちょっとあったのかな。STVVに来たばっかりで、早くチームにフィットしなきゃいけないというのもありました。今年は逆に余裕を持ってプレーできている。そこが安定感になっている。もうちょっとそのことに早く気付けば良かったんですけれど、今は良いシーズンを過ごせてます」
――監督が「キーパーコーチが変わったことで練習も変わったことが、レオにとって刺激になっているのでは」と言ってました。
「新しいコーチは練習で基礎をしっかりやって、それを試合に持っていくことを意識している方です。試合が何より大事なので、試合から逆算して考えて練習メニューを組んでくれます。本当に細かい方で、試合前・試合後のミーティングも多い。今日は『クロスが多いぞ』と言われました。すごく良いコーチに出会えました」
アントワープ戦では、相手のGK野澤大志ブランドンがビッグセーブを連発した。日本代表の11月シリーズで、選ばれていた鈴木彩艶が負傷により不参加となり、野澤が追加招集された。
「アントワープ戦後、大志は『ベルギーリーグにフィットしてきた』と話してました。彩艶が怪我をして『大志が絶対に選ばれる』と思ってました。パリ五輪で頑張ってきた大志、そして彩艶が代表に選ばれていることは自分も嬉しい。あと00世代の(菅原)由勢、(久保)建英、(瀬古)歩夢とプレーするのはすごく久々。一緒にプレーするのは7年、8年ぶりなので楽しみです」(小久保)
最後に、2人に「日本代表は11月の活動が終わると、次は来年3月。それからワールドカップはあっという間です。ワールドカップに行くためには、今回、しっかり爪痕を残さないといけませんね」と問いかけた。
まずは後藤の答えから。
「それは全選手が思っていること。そのために練習からアピールが必要だと思います。確かに日本代表は3月まで活動がないですけれど、U-22代表は1月に試合があります。自分が呼ばれたら、代表の方に見てもらえるチャンスが増えます」
次に小久保。
「天皇杯に出場するチームから呼ばないことを自分は知らなかった。だから自分の中では招集はサプライズでした。それでも、しっかり任されて日本のゴールを守りたい。『ワールドカップで、自分に日本ゴールマウスを守らせてくれ』という気持ちで行ってきます」
取材・文●中田 徹
【画像】どこもかしこもデザイン刷新! 世界各国の北中米W杯“本大会用ユニホーム”を一挙公開!
【記事】「良いオファーが来ないぞ!」STVV指揮官が日本人MFに説く“ステップアップへの条件”。「質がとてつもなく高い」「仲間のプレーを引き上げるんだ」とベタ褒め【現地発】
【記事】欧州1年目の24歳日本人MFが“衝撃ゴラッソ”で待望の初得点をゲット!「あそこまでは持っていける自信があります」【現地発】
