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『ばけばけ』ヘブンが女中に月20円も出すのは単に「お金に無頓着」だから? 超高給取り・小泉八雲の衝撃的な金遣いとは

『ばけばけ』ヘブンが女中に月20円も出すのは単に「お金に無頓着」だから? 超高給取り・小泉八雲の衝撃的な金遣いとは


『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)

【画像】え…っ! 夫婦で立って並ぶと「なんか小っちゃくてかわいい」 コチラが小泉八雲さん(ギリシャ人)と小泉セツさん(日本人)の身長差です

ハーンさんは当時の教師の20倍貰ってた?

 2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツ(節子)さんがモデルの物語です。

 第32話では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の家で、女中として働き始めました。トキの給料は月20円で、すでに前金として全額を受け取っています、

 親友の小学校教師「野津サワ(演:円井わん)」の月給の5倍もの大金を貰うトキは、自分が単なる女中ではなく夜の相手もする、いわゆる「洋妾(ラシャメン)」だと思っており、緊張と恐怖のなかで初日を過ごしていました。

 諸説あるものの、トキの月給20円は現代に換算すると「60~80万円」といわれており、たしかにただの女中に払う給料としては、かなり高額です。洋妾としての給料も含まれていると考えても、無理はないでしょう。

 ただ、同僚の「錦織友一(演:吉沢亮)」や島根県知事「江藤安宗(演:佐野史郎)」ら、周囲の人間はヘブンに洋妾を用意しようとしていますが、彼本人は一度もそのような要求は口にしていません。

「大金を払っているから、家事以外に夜の相手も仕事に含まれている」と考えてしまうのは仕方ありませんが、ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーンさんが貰っていた金額や性格を考えると、普通の女中に破格の給与を払ってもおかしくないと思われます。

 ハーンさんは、島根県尋常中学校と師範学校の英語教師として、当時の県知事に次ぐ高給だった月100円の給与をもらっていました。彼は1891年2月頃から女中として働き始めた小泉セツさんに、月15円を払っていたそうです(1891年6月28日の山陰新聞の記事より)。トキより少ないですが、十分な高額といえます。

 当時、同じように尋常中学と師範学校を兼務していた校長の給料は55円でした。また、1890年時点の小学校教員の平均月給は約5円だったそうです。ハーンさんは一般的な小学校教師の、20倍もの給与をもらっていました。

 総務省による2023年の地方公務員給与実態調査結果によると、小学校教師の平均月給は32.2万円です。単純計算でその20倍となると、ハーンさんは現代なら月644万円も貰っていることになります。

 それだけの高給なら、給料の5分の1もの金額を女中に払って、身の回りの世話を全部任せようと考えてもおかしくはないでしょう。

 また、セツさんはハーンさんの死後に発表した『思い出の記』という手記で、「ヘルンは性来、金には無頓着の方で、それはそれはおかしいようでした。勘定なども下手でした。そのような俗才は持ちませんでした」と語っています。 

 セツさんによれば、ハーンさんは気に入ったものであれば相場の何倍もの値段を出そうとする人で、京都見物をした際には、本来5~10銭ほどの拝観料に対し、50銭、1円出そうと言ったそうです。また、上野の絵の展覧会に行って気に入った絵を買おうとしたときには、画家からどんな値段を提示されようと「安い安い」と、もう少し金額を上乗せしたといいます。

 ハーンさんは松江を去って熊本の高等学校の教師になった際は月給200円、さらに東京帝国大学の講師になると月給400円と、お雇い外国人としてどんどんキャリアアップしていきました。加えて、さまざまな著作の印税も入っていたと考えると、上記のような金銭感覚でも問題ないほどの大金を持っていたと思われます。

 おそらくヘブンもお金に無頓着ゆえに、ただの女中のトキに20円も払っているのでしょう。いつ頃誤解が解けるのか、今後に注目です。

※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」

参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『思ひ出の記』(ハーベスト出版)、『物価の文化史事典: 明治/大正/昭和/平成』(展望社)

配信元: マグミクス

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