「全身黒タイツに、目と口らしき穴だけ開いた白い仮面」という姿、声はボイスチェンジャーで変え、年齢も性別も不詳のベストセラー作家。それが雨穴(うけつ)である。
その雨穴の最新作「変な地図」が、10月31日に発売されている。不況が続く出版業界において、異例ともいえる「初版20万部」に加えて「発売前重版5万部」の計25万部で発売日を迎えるも、書店では売り切れが続出。早くも10万部の重版が決定しているというのだから凄い。
かく言う私も、雨穴の作品は全て単行本で購入していることは、過去にもこのページでも書いた。まあ、言ってみれば、単なるファンである。「変な地図」もしっかり発売日にゲットして、一気に読み終えてしまったほどだ。
で、今回も非常に楽しく読了したのだが、特に感心したのが、私のような以前からのファンは勿論、本作で初めて雨穴の作品に触れる人や、それこそ普段は本を読まないような人も、作品に没入しやすい工夫がそこかしこに施されているところだ。
例えば本作は過去作以上に、イラストが占める割合が多い。「主人公が今、どの辺りを歩いているか」などをその都度、地図やイラストで示してくれるので、文章を追いながら想像することに慣れていない人にもわかりやすい。
また、主人公が見聞きしたことが、のちに重要な手がかりだったとわかる場面では、そのセリフや文章がそこで改めて表記されるため、「あれ? そういえばあの時、なんて言ってたんだっけ」と前のページに遡る手間がない。
あまりに読者に優しすぎて、生粋の読書好きには逆に物足りなく感じるかもしれないが、テキストを楽しませながら、ビジュアルでより理解しやすく補足してくれるこの手法は昔、夢中になったファミコンの「ポートピア連続殺人事件」や「オホーツクに消ゆ」といった名作アドベンチャーゲームにヒント機能が付いたような趣がある。400ページを超えるボリュームながら、サクッと読めてしまう(内容が薄いというわけではない)のだ。
その風貌からホラーの文脈で語られることが多い雨穴の作品だが、今作はむしろミステリー要素が多く、「怖いのはちょっと苦手」という人にもお勧めだ(ぶっちゃけ過去作も、そこまでホラーじゃないと思う)。
さて、ここまで読んで雨穴に初めて興味を持ったものの、「今さら読み始めるのもなぁ」と思った人に、とっておきの情報がある。この10月にスタートした「今さらシロー」(TBS系)の11月11日放送回が、雨穴の特集だったのだ。「岡田准一&秋山竜次(ロバート)の仲良し2人が、テストには出ないけど人生の役に立つ情報を、時にはボケながら、時には真面目に、全力で体験しながら学ぶバラエティー」がコンセプト。
「興味はあったけど未読」という秋山と岡田に「雨穴の大ファン」という声優の小林由美子が、雨穴作品の魅力をプレゼン。11月19日まで、TVerで見逃し配信中だ。しかも次週11月18日の放送では、ベールに包まれた雨穴の自宅を訪問する、とのことである。これは楽しみ。
この機会に雨穴の「変な」世界に触れてみてはどうだろう。
(堀江南/テレビソムリエ)

