1975年リリースのサードアルバム『明日なき暴走 BORN TO RUN』で一大センセーションを巻き起こしたブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)。
それから7年が経った'82年、成功の重圧と自らの過去に押し潰されそうになっていた彼は、アメリカ・ニュージャージーで1人、4トラックの録音機の前でアルバムの制作を始める。
その裏には、父親との確執や恋人との時間、母親との思い出などがあった。
名曲『ボーン・イン・ザ・USA』の裏話
日本では洋楽を聴いてきた人と聴いてこなかった人がはっきり分かれます。でも、聴いてこなかった人でも、さすがにブルース・スプリングスティーンの『ボーン・イン・ザ・USA』はご存知ですよね。
あのサビは天才的! 80年代で最もセクシーなロック歌手。アルバムの売り上げもトップ! 顔はもちろんですが、お尻がカッコよくてデニムの穿き方が大好き。
それに最高のハスキーボイスの持ち主だから、そりゃ女性たちのハートを鷲掴みにして、男性はその色気に憧れていました。
何十年経っても曲は生き続け、スプリングスティーン自身もずっと活動してきました。
私の大好きな2008年の映画『レスラー』の主題歌も彼。オバマ大統領から勲章をもらったり、今も憧れのまなざしで彼を見つめてる方は多いと思います。
ところがどっこい、彼はお父さんが怖いという子供の頃のトラウマから生きづらさをずっと感じてきました。
【関連】女性初のエベレスト登頂映画は80歳の今も銀幕に挑む大女優・吉永小百合の演技に注目!
ジェレミー・アレン・ホワイトの演技も見事!
スプリングスティーンにとっては、そのトラウマが大人になっても残っていたせいで人に心を開くのが苦手になったのかも。素敵な女性フェイと出会いますが、せっかくの幸せを自分から突き飛ばしてるように見える。
フェイは彼を愛し、いろんなことをアドバイスしたり、素敵な言葉を彼に投げかける。
でも、ずっと引っかかる気持ちのせいなのか、スプリングスティーンの彼女に対する態度は、とても残念。うん、スプリングスティーンを反面教師として見てもいい。でも、同時に応援もしたくなる。
名曲『ボーン・イン・ザ・USA』のレコードジャケットにも裏話があって、アルバムのリリースの考え方もかなり興味深かった。
知らなかった事実に“なるほど”と頷いてしまいました。
今も頑張っているスプリングスティーン、あの力強い声と曲の裏には悲しみや葛藤がいっぱい。これから彼の曲を少し違う気持で聴くかも。良いものはいつまでも良く、彼の経験を知ってさらに好きになります。
“ドキュメンタリー!?”と思うかもしれませんが、ジェレミー・アレン・ホワイトが見事にスプリングスティーンを演じています。あの個性的な口の開け方など本当に似てます。
でも、似てようが似てまいが、スプリングスティーンの心の奥底の声を聞いてほしい。“芸術の秋”を音楽と映画で堪能するのもいいのでは。
『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』
監督・脚本:スコット・クーパー
出演:ジェレミー・アレン・ホワイト、ジェレミー・ストロング、ポール・ウォルター・ハウザー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
11月14日(金)全国ロードショー
「週刊実話」11月20日号より
LiLiCo(リリコ)
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。
