ロシア外務省は、日本政府による「ロシアへの敵対的な政策」の対抗措置として、日本人30人を新たに無期限の入国禁止措置にする決定をしたと発表した。
対象のひとりとなった慶応大学の広瀬陽子教授は日経新聞電子版のコメント欄に「まったく驚いていない」と冷静な対応をしている。東京財団の柯隆主席研究員は「制裁を受ける日本人のみなさんにとって何も実害はないが、プーチン政府のいら立ちの現れといえる」と同欄にコメントしたが、これに噛みついた人物がいる。30人の制裁リストに名を連ねる朝日新聞の駒木明義・元モスクワ支局長だ。
駒木氏は自身のXで、次のように反論している。
〈「何も実害はないが」は、私にはまったく当てはまらないと断言させていただく。私の人生を左右する重大問題です〉
11月13日付の朝日新聞朝刊を見ても〈本紙記者ら入国禁止、日本政府が抗議〉との見出しはあるものの、記事からは駒木氏の「人生を左右」するような事態になっているとの説明は見受けられない。
朝日新聞に出ている駒木氏の経歴を見ると、1990年に入社し、モスクワに研修で派遣された後、2005年から2008年までモスクワ支局員、2013年から2017年までモスクワ支局長を務め、現在は論説委員。
ロシア専門家とはいえ、今のロシアには批判的な視点で論説を書かざるをえない。ロシア政府から「入国禁止」措置を取られるのはむしろ、名誉ではないだろうか。
それとも、再びモスクワ駐在を目論んでいたものの、それが叶わなくなったのか。ぜひロシアとの間で何があったのか、駒木氏には紙面で検証してほしいものだ。
(喜多長夫/国際ジャーナリスト)

