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大阪・関西万博パビリオン『よしもとwaraii myraii館』AIによる実証実験『Smile Log』の分析結果を発表

『笑いと健康プロジェクト』監修
大嶽浩司・昭和医科大学医療イノベーション担当教授コメント

まず、感情分析についてです。これほど大規模な検証は世界的にも類を見ない取り組みです。これまでの感情分析研究では、身につけるスマートデバイスやバイオフィードバックセンサーなどを用いて、数十人規模の被験者があらかじめ用意されたコンテンツを視聴し、その感情を分析する形式が主流でした。今回『よしもとwaraii myraii館』では、生体パラメータにより感情状態を定量化するという点では同様ですが、以下のような点で、極めて独自性の高いユニークなプロジェクトと言えます。

・総計2,600万人あまりが来場した大規模なイベント空間において半年間という長期に渡り実施されたリアルワールド検証
・来館者にデバイスやセンサーを装着させない非接触型の手法
・展示やステージ観覧の“前後比較”という構造を取っている点
・分析の焦点が「笑いと感情の変化の関係」に特化している点

次に、笑顔検知についてです。進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンや「アメリカ心理学の父」と呼ばれるウィリアム・ジェームズの時代から、「笑顔をつくると幸福感が高まり、しかめ面を抑えると怒りや不快感が和らぐ」といった表情と感情の関係性が指摘されてきました。表情筋の変化が感情体験に対して小規模かつ一時的な影響を与える可能性について、長年にわたり研究が行われてきたのです。

これまでにも、大学のキャンパス内、病院、ゲーム中などの限定的な環境下での笑顔の実験は実施されてきました。万博のような大規模イベント空間を舞台として、国籍や年齢など多様な人々に対するリアルタイムの笑顔分析は、先行研究が存在せず、今回の『よしもとwaraii myraii館』での取り組みは、まさに世界初とも言える「実地での大規模笑顔検証」です。
実際、入館者数が増える時間帯に笑顔の割合も上昇したり、1日の後半にどんどん笑顔の数が増えていく傾向が確認されており、「周囲の人が笑っていると、自分もつい笑ってしまう」という“笑いの相乗効果”の仮説が示唆されました。

以上のように、『よしもとwaraii myraii館』では、スマートフォンアプリと館内のカメラを活用して大規模な「体験前後の生体・感情解析」と「リアルタイム笑顔分析」を統合的に同時実施しており、これは万博という特別な舞台において実現した、世界初の先進的かつ極めて価値の高い取り組みです。ギネス世界記録™に認定されたことも納得できる検証だと考えます。

大嶽浩司教授 プロフィール

出典: FANY マガジン

2013年 昭和大学医学部 麻酔科学講座教授
2016年 昭和大学病院 副院長
2022年 スタンフォード大学 Clinical Informatics Management修士(MCiM)修得
2024年 昭和大学医療イノベーション担当教授 ※2025年に昭和医科大学に改称
【参考文献】
1)Wearable Emotion Recognition Using Heart Rate Data from a Smart Bracelet (South China University of Technology, 2020)
2)Emotion recognition based on heart rate and skin conductance (University of Angers, 2015)
3)James, William. (1884). What is an Emotion? in Mind 9 (1884), pp. 188-205.
4)Mood Meter: Counting Smiles in the Wild(Massachusetts Institute of Technology, 2012)
5)Identification of Smile Events Using Automated FER in ASD(University Hospital Leipzig, 2025)
6)Felt Emotion and Social Context Determine the Intensity of Smiles in a Competitive Video Game(University of Southern California, 2013)

吉本興業 コメント

この実証実験を通じて、これまで抽象的であった「笑い」のチカラを、感情のポジティブな変化(つながり)という「質」と、数多くの笑顔という「量」の両面から捉えることに成功しました。これはエンターテインメントとしての「笑い」が、人々のウェルビーイングに貢献するという価値をデータで証明したものであり、笑いと健康プロジェクトが目指す「笑いの処方」の実現に向けた、大きな一歩となりました。

吉本興業は、この実証で得られたデータを大阪・関西万博の貴重なレガシーとして受け継ぎ、「笑い」が持つ可能性の探求をさらに深化させてまいります。創業以来110年以上にわたって発信してきたお笑いコンテンツを活かし、これまでと変わらず純粋な「笑い」を世の中に届けていくと同時に、「笑い」のチカラに共感する企業や研究機関、自治体、大学、その他の皆様との連携も深めながら、「笑いと健康」の効果を付加価値とした新たなコンテンツ開発にも積極的に取り組み続けます。

その先に目指すのは、「笑い」が単なる娯楽の領域を超える社会です。「心のコンディションを整えに、劇場へ行こう」「少し疲れた日は、お笑いでパワーチャージ」。そんな一人ひとりの意識変革と行動変容を促し、ポジティブな健康行動が生まれる社会の実現へ、これからも挑戦を続けます。

なお、分析結果の詳細および『笑いと健康プロジェクト』の詳細は、公式WEBサイトにて後日ご紹介します。ぜひご覧ください。


配信元: FANY Magazine

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