賛否分かれる企画を放送しては、たびたび炎上案件になる「水曜日のダウンタウン」(TBS系)。裏を返せばそれだけ攻めているわけで、それゆえ熱狂的な番組ファンは多いが、同時にアンチも多い。そして11月12日の放送は、またもや物議を醸すかもしれない内容だった。
この日の企画は「サイレントクロちゃん」。喉にできたポリープの摘出手術を受けたため、1週間「発声禁止」となったクロちゃんに、隠しカメラが密着する。その間、番組が用意した10個の仕掛けに、声が出せないクロちゃんはどう対処するか、というものだ。
思わず声を出してしまいそうなシチュエーションの連発に、話せないことのもどかしさを感じながらも、なんとか筆談する姿を見ていたら、いくらクロちゃんが苦手な私でも、さすがに可哀想だと思ったし、もしも声を出してしまって術後の喉に大きな悪影響が生じたらどうするんだろうと、心配になった。
術後5日目に仕掛け人として登場したのは、自身の盲目をネタにした毒舌漫談で2018年のR-1グランプリ王者になった濱田祐太郎。「クロちゃんが今年、出版した本の握手会イベント(これは本当)の楽屋で、濱田と相部屋になる」というのが、この日の仕掛けである。
とはいえ、仕掛け人の濱田には「相手がクロちゃんである」ことと「なぜ話せないのか」が知らされていないという状況。さらにクロちゃんは、濱田の存在を知らなかったようで…。
挨拶する濱田に、今までのように筆談で返すクロちゃん。しかし濱田はそれを見ることができない。当初こそ困惑するクロちゃんだったが、徐々に濱田の目が見えていないことに気付く。
それでもお互い、気まずい空気になるのを避けようと奮闘し、机を叩く回数でクロちゃんの返事が「YES」か「NO」かを決めるなど、少しずつコミュニケーションがとれるように。さらにはクロちゃんが濱田の掌に指で一文字ずつ平仮名を書くという方法を思いつき、最終的に背中に指で文字を書くことで、ようやく会話らしい会話ができるようになったのだ。
当初こそ「さすがにこれは…」と目くじらを立てた私だったが、この2人のまるでヘレン・ケラーとサリバン先生のようなやり取りには、思わず感動してしまった。
コンプライアンスでがんじがらめになっている昨今のバラエティー番組で、「容姿」をイジること以上に忌避されるのが「障害」をネタにすることだ。今回の企画も、もしかすると各方面から非難や抗議を受けるかもしれない。それこそ「水曜日のダウンタウン」は以前、「説教中の『帰れ!』額面通り受け取るわけにはいかない説」なる企画で、チャンス大城からドッキリを仕掛けられたインタレスティングたけし(吃音者芸人)の、喋るたびに言葉が詰まる様子を、スタジオの芸人たちが笑って見ていたことが問題視され、NPO法人の日本吃音協会から「吃音者をからかうものだ」と抗議を受けた。
もちろん「障害」を理由にした差別は、あってはならない。しかし、ハンディキャップを乗り越えて、時にはそれすらもネタとして奮闘する者を邪魔するようなことは、もっとあってはならない。
背中に指で「おたがいがんばろう」と指文字でエールを送るクロちゃんに対して「『お互い』って言いましたけど、俺、一生なんすよ」と笑って突っ込む濱田。そんな2人のやりとりが、とても輝いて見えたのだった。
(堀江南/テレビソムリエ)

