ウイリアムズF1の育成であり、今季は欧州を拠点にカートレースを戦う15歳の女性ドライバー松井沙麗が、11日に行なわれたAthTAG GENKIDAMA AWARDで最優秀賞にあたるGOLD PRIZEに選出。活動応援費300万円を手にした。
この松井に、レジェンドアスリートとしてこのAWARDの審査員を務めた野村忠宏、伊達公子、古田敦也、潮田玲子が、エールを送った。
AthTAG GENKIDAMA AWARDは、参画企業が支出した活動応援費等の一部で、若いアスリートが活躍するためにサポートしようというもの。参画した企業は、レジェンドアスリートたちの肖像権を自社の広告等に使えるなどのフィードバックがある。
今年の同AWARDには、総勢121名の若いアスリートが応募。その中から選出された8人が11日に10分間のプレゼンを行ない、そこで自身の目標、それにかける想いなどを語った。その8人の中のひとりが松井で、そのプレゼン内容が評価されてGOLD PRIZEに選出されたわけだ。松井はファイナリストの中で最年少、唯一の中学生だったが、堂々たるプレゼン内容。「絶対にF1ドライバーになって、そしてF1で優勝したい」と訴え、会場を訪れた関係者や審査員の心を掴んだ。
そんな審査員を務めたのが、前述の野村、伊達、古田、潮田という4名のレジェンドアスリート。もはや説明の必要もない、日本を代表するアスリートの面々である。彼らは8名の登壇アスリートのプレゼンを聞き、そしてPRIZEに相応しいと思うアスリートに投票するわけだが、4人全員が松井の名を挙げたという。
その彼らは、一体どのくらいモータースポーツを知っているのだろうか? 話を聞いた。
「私はまだモータースポーツを生で見たことがないんです。でもすごく興味があります」
そう語ったのは、かつて日本のバトミントン界を牽引した潮田玲子である。
「モータースポーツって、男女が同じフィールドで戦うわけですよね。なかなかないスポーツだと思います。そこで女性が、なおかつその頂点のF1のさらに頂点を目指すというところに対しては、同じ女性として本当に頑張ってほしいと思いますし、それが実現するのを見たいと、率直に思いました」
またヤクルトスワローズの正捕手として長く活躍し、名球界入りした古田敦也は、以前はF1をかなりじっくりと見ていたという。
「かつてF1はすごく人気ありましたからね。たくさん見ましたよ。最近はあまり見られなくて、ちょっと残念に思っています」
そう古田は言う。
「世界的に見れば、我々が思っている以上に人気のあるスポーツなんですよね。大きなマーケットもある。そこに日本人の女性として飛び込んでいくというのは、すごいことだと思います」
「ブームだった当時を考えれば、浮かれて『やってみようか』と思う人もいたかもしれません。今はそういうブームでもないのに、志高く、飛び込んでいくというのは、本当に応援したいです」
「しかし松井選手はまだ15歳。それなのにあんなにしっかりしていて、いやいや感心しました。モータースポーツは奥が深いと思いました」
柔道でオリンピンク3連覇という偉業を持つ野村忠宏は、実際にF1日本GPの現場を訪れたことがあるという。そして、今年公開された映画『F1/エフワン』も見たようだ。
「自分は1回だけ、鈴鹿にF1を観に行かせてもらいました。そこでドライバーの方たちとお話する機会もあったんです」
野村はそう語る。
「最近はF1の映画もあったじゃないですか。あの映画だったり、実際に目にしたモノ……あの世界に彼女がチャレンジしているというだけで、すごいなと思いますよ」
「普通の感覚では、女性がトップを狙うというのはイメージできないと思います。でも彼女には、その壁を打破して、乗り越えていってほしいなと思いました」
「F1は外から見ると華やかですが、おそらく中での競争はものすごい。その世界にチャレンジする、自立した15歳……楽しみです」
テニスのグランドスラムでベスト4入りした経験を持つ伊達公子は、かつてミハエル・クルムと結婚していたことでも知られる。そのため、他のレジェンド3人と比べると、モータースポーツに造詣が深い。
「この中ではおそらく、私が一番レースを観ていると思います……F1じゃなくて、その下のカテゴリーですけどね。だから、ちょっとは内情が分かっているところもあります」
そう伊達は語りはじめた。
「でもF1に行くというのはハードルが高いし、しかも女性でというのは本当に大変だと思います。でもこうやって夢を感じさせてくれるというのは、魅力を感じます」
「今F1はアメリカでも大人気です。かつてはヨーロッパのスポーツと言われていましたが、今はアメリカでのマーケットが拡大している。その中で彼女が一歩進んで、扉を切り開いてくれることを信じたいと思います」
■モータースポーツ選手が選ばれたことに感謝:編集長取材記
ひと通り話が終わると、前出の古田氏がこう興味津々に尋ねてくれた。
「今、F1ってどうやったら観られるの?」と。
そこで私はこうお知らせした。
「今はDAZNと、フジテレビNEXTで見られます。私も実は、DAZNで解説をやらせていただいておりまして……」
すると古田氏はこう答えた。
「そうか! すると君は、かつての川井ちゃん(フジテレビNEXT解説の川井一仁氏)みたいなもんか!」
いやはや比べていただくのもおこがましいが、古田氏がかつてはかなり熱心にF1をご覧になっていたであろうことが、よく分かった。
しかし今回のAthTAG GENKIDAMA AWARDのファイナリストに残ったのは、松井の他にブレイキンの岸本美麗選手、スキーエアリアルの五⼗嵐晴冬選手、ゴルフの⼩池愛莉選手、テニスの⼩坂莉來選手、陸上競技の⽥原佳悟選手、ピックルボールの藤原智仁選手、競泳の松⼭陸選手という錚々たるメンバーであった。その中で、F1を目指す松井がGOLD PRIZEに選ばれたことは素晴らしいことだし、モータースポーツの世界に身を置くひとりとしては、大いに感謝したい。
「motorsport.comです。少しお話をお聞かせください」
そう我々の媒体名を挙げた際、レジェンドアスリートの皆さんは「おーっ! 今日は良かったねぇ」と、なぜか祝福された。
私はこうお伝えしておいた。
「今日のAWARDで、モータースポーツの選手を選んでいただいて、本当にありがとうございます」
さて、期待は松井沙麗の双肩に託された。当然プレッシャーもかかるだろうが、ぜひそれを乗り越えていってほしい。そして、この後押しの輪をもっともっと広げていってほしい。そのためにも必要なのは、目の前にあるレース、そして課題に勝つことだ。

