ポルシェは、先日のバーレーン8時間レースで終了した2025年シーズンを持って、世界耐久選手権(WEC)のハイパーカークラスから撤退。この決定について、ライバルメーカーから悲しむ声が相次いでいる。
ル・マン24時間レース最多19勝を誇り、耐久の王者とも称されるポルシェ。2023年からLMDh車両の963をWECと北米のIMSAスポーツカー選手権に投入した。しかしわずか3シーズンでプログラムを縮小。WECハイパーカークラスから撤退することとなった。
この決定は主に財務上の圧力によるもの。中国での売り上げ低迷とEV普及の鈍化が同社の今年第3四半期の11億ドル(約1700億円)の損失の一因となった。
また、ポルシェはWECの性能調整(BoP)のプロセスに不満を募らせており、LMHとLMDhを統一規則に統合することを最も強く主張しているメーカーのひとつとなっている。
ポルシェは来年もIMSAで963のプログラムを継続する予定であり、将来的なWEC復帰の可能性も否定していない。
フェラーリ
フェラーリの耐久レースカー責任者であるフェルディナンド・カニッツォは、ポルシェの撤退はWECにとって後退であると認めたが、自動車界とモータースポーツ界の両方における長年のライバルが今後数年のうちにこのカテゴリーに復帰することを期待している。
「これはチャンピオンシップにとっても、スポーツにとっても、そして我々にとっても良いニュースではない」と彼はバーレーンで語った。
「我々がライバルの決断を尊重しているのは明らかだ。我々の夢は、今後数年のうちにポルシェが再びWECに参戦することだ」
「ポルシェとフェラーリは、耐久レースにおいて大きな伝統を持つふたつのメーカーだ。パドックにいるすべてのメーカーにとって、将来再びポルシェの活躍を目にすることが夢なんだ」
アルピーヌ
アルピーヌの耐久レース部門を率いるフィリップ・シノーは、カニッツォの意見に同調しつつ、ポルシェの決定は現在の状況下で自動車メーカーが直面している困難を浮き彫りにしていると指摘した。
「確かに悪いニュースだ。ポルシェのようなブランドは耐久レースの世界の一部だ」とシノーはmotorsport.comに語った。
「アルピーヌは戦いを望んでいる。アルピーヌの歴史において、ラリーや耐久レースでは常にポルシェと戦ってきた。そのニュースを受け取ったとき、我々はとても悲しくなった」
「しかし、それは我々の新しい世界の一部であり、特に自動車業界ではそうなのだ。時には彼らはそれを止めようと決断する」
トヨタ
ポルシェ、トヨタ、アウディのライバル関係はLMP1時代のハイライトであり、2010年代半ばにはこの3メーカーが激しく争っていた。
ハイパーカーカテゴリーの新設に伴いポルシェがWECのトップクラスに復帰したことでトヨタとのライバル関係が再燃し、2024年にはポルシェがドライバーズ、トヨタがマニュファクチャラーズとタイトルを分け合うことになった。
ポルシェのWEC撤退について問われたTGR-E副会長の中嶋一貴はmotorsport.comに対し、「悲しいニュースですが、同時にこの3年間、WECでポルシェのようなビッグブランドと共闘できたことは幸運でした。私たちにとって光栄なことでした」と語った。
キャデラック
ポルシェはペンスキーと提携してファクトリーチームを運営するほか、IMSAやWECの他のチームにもカスタマーカーを供給している。
これまでで最も成功したポルシェのプライベーターはJOTAだ。JOTAは2023年と2024年にポルシェ963を走らせていたが、今季はキャデラックと提携し、ファクトリープログラムを運営しているため、マシンをスイッチしていた。
JOTAのチーム代表であるディーター・ガスは、ポルシェがハイパーカープログラムを縮小するという決定はWECにとって「残念なこと」だと述べた。
「もちろん、ポルシェは耐久レースの一部であり、彼らは長年にわたり活躍してきた」
アウディのモータースポーツプログラムを率いたり、トヨタのF1チームで活躍した経歴を持つガスはmotorsport.comにそう語った。
「市場にとってもシリーズにとっても重要な名前だ。だからこそ、シリーズにとって残念だ」
「個人的には、ここ数年間、一緒に多くの仕事をしてきたプロジェクトマネージャーのウルス・クラトレが、もうチャンピオンシップにいないのは残念だ。彼はとても気さくな人で、一緒に仕事をするのが本当に楽しいレーサーだった」
BMW
ポルシェは、2022年にまだ開発段階にあったLMDhプロジェクトを中止したアウディに続き、WECを撤退した2番目のドイツメーカーとなった。これで来季のWECハイパーカークラスに参戦するドイツメーカーはBMWのみとなったのだ。
「正直に言って悲しい」と、BMW Mモータースポーツの責任者であるアンドレアス・ルースはmotorsport.comに語った。
「特にドイツのメーカーである私たちにとっては、少し残念だ。ハイパーカーレースに残るのは私たちだけになったからだ。だから彼らが戻ってくることを願っている」
「彼らと(再び)競えたら最高だ。彼らは耐久レース、スポーツカーレースにおいて長い歴史と伝統を持っている。ル・マンでは今でも最多の総合優勝を誇っている。だから、彼らが去ってしまうのは残念だ」
「しかし一方で、現在の自動車業界の困難を見れば理解できる部分もあり、我々も合理的にならなければならない」
ポルシェは、WECハイパーカークラスとIMSAのGTPクラスの両方に参戦すべく、チーム・ペンスキーと提携した。この協力を通じて、ロジャー・ペンスキーはル・マン24時間レースでの総合優勝を目標としていた。これは、彼のトロフィー棚に欠けている最後のビッグレースだった。
アウディのLMDhプロジェクト中止を受けて、BMWと組むことになったWRTチーム代表のヴァンサン・ボッセは、ポルシェとペンスキーの両チームがチャンピオンシップから離脱したことに失望していると語った。
「我々は前向きでいなければならない。選手権には十分な数のメーカーがあるが、ポルシェはただひとつだ」
「ポルシェはおそらく耐久レースの歴史に最も深く関わってきたメーカーだろう。そしてここ2年間、私にとってベンチマークとなってきたペンスキーのようなチームを失うのは、本当に悲しい」
「ロジャー・ペンスキーが長年追い求めてきたル・マンでの勝利を求めて戦えなくなったのは少し残念だ。私は彼と、彼の仕事、そして彼の会社に大きな敬意を抱いている」
「そしてもちろん、ポルシェが撤退するのは良いニュースではない。問題はクルマの数ではない。誰が撤退するのかだ」

