
STVVに縁ある選手が11月シリーズの日本代表に8人。キャプテン谷口彰悟は実感「本当に貴重なクラブだと思う」【現地発】
11月9日、シント=トロイデン(STVV)はベルギーリーグ第14節でスタンダールに対し、スコアのうえでは1-0という僅差だったが、会心の試合運びで勝利した。試合後の円陣でワウター・フランケン監督が締めの言葉をかけ終わると、選手たちが水を掛け合う“ウォーターファイト”で勝利を喜んだ。
試合を完全に支配しながら、FW後藤啓介が先制ゴールを奪ったのは57分のこと。以降は2点目を奪いに行きつつ、しっかり無失点で試合を終わらせることも両立させた試合展開に、STVV在籍2季目のDF谷口彰悟主将は、チームが成長している手応えを感じていた。
「もちろん早く攻めたい気持ちはあった。しかし、相手を押し込むハーフコートゲームを進めていけば、どこかで穴は開いてくる手応えがあった。こうして1点取ってしまえば、あとは不用意にスペースを空けることなく試合を終わらせるだけ。
若い選手の多いチームなので、昨季からゴールを取りたいからどんどん攻め急いで、自分たちからオープンな展開を作ってしまうことがかなり多かった。“大人の戦い方”ができたことは、STVVにとって大きなステップだった」
アキレス腱断裂という重症からカムバックした谷口は、試合ごとに調子を上げている。
「その感覚はあります。今日は水を漏らさないゲームができました。相手のフォワードは強かったですけれど、ボールを収めさせなかった」
以前、「僕はエリートでもなんでもないので、代表で確立されたポジションはない。『常に最後』という覚悟で代表活動に行っているし、これからもそうです」と語った谷口。ここ1か月のSTVVでのパファーマンスを振り返ると、10月に引き続き、11月シリーズでも日本代表に選ばれたのは順当と言えるだろう。
11月シリーズで初めて日本代表に招集されたGK小久保玲央ブライアンはクリーンシート、後藤は決勝ゴールと、スタンダール相手に結果を残した。谷口は新鋭2人の活躍をどう見るか。
「代表前のゲームをゼロで終わらせて、なおかつ自分で点を取り、気持ち良く合流できると思います。
代表選手としての自覚が2人に芽生えている。そのことによって、STVVに良い影響力をもたらしてほしい。日本代表でトレーニングすることで、“基準”や“意識”が変わってくる。今まではSTVVから僕ひとりでしたが、今回は日本代表の“基準”を知る選手が3人に増える。その“基準”をしっかりSTVVに持って返ってくることが、僕たち3人にとって大事なことだと思います」
今回、STVVから3選手が招集されたことには、3つの意義がある。
・2018年にDMM.comのSTVVプロジェクト立ち上げ時、「日本にとって人材不足のGK、CB、ストライカーを育てる」と掲げ、第1期の冨安健洋がCBとして羽ばたいた。GKはシュミット・ダニエル、鈴木彩艶、小久保と3代続けて代表選手になった。そして今回、ストライカーの後藤が招集された。
・Jリーグから欧州のビッククラブに移籍した選手にとって、STVVはそこで足りなかったものを補う“やり直しの場”として機能している。鎌田大地(当時はフランクフルトが保有元)に続き、後藤もSTVVで実戦経験を積んでから来年夏、アンデルレヒトに戻る予定だ。
・第1期の冨安、鎌田、遠藤航のトリオを端緒に、STVVはコンスタントに日本代表に選手を送り込み続け、今回は27人中(辞退した鈴木を含む)、8人がSTVVと縁のある選手である。
「ここから世界へ」を旗印に掲げるSTVVの貢献を、谷口はどう思うか。
「それはものすごく貢献していると思います。今回も3人が選ばれたし、このクラブを経てステップアップした選手を入れると、今回の代表も相当な人数になる」
――8人います。
「それだけでも、このクラブの存在意義、価値が高い。『日本サッカーに対してものすごく貢献している』と間違いなく言える。
STVVから羽ばたいていった選手たちが結果を残して、良い人材がこのクラブに入ってきて、そこからステップアップして代表に入っていく――そんなサイクルができると思います。この流れを作る責任を僕自身、感じてますし、今回入った2人もそのことを感じないといけない。本当に貴重なクラブだと思う」
STVVの意義について小久保と後藤にも話を訊いた。まずは小久保から。
――鎌田選手に続き、後藤選手もビッグクラブからSTVVにレンタルで来て、日本代表の切符を掴みました。小久保選手もベンフィカというビッグクラブのリザーブチームで試合に出てましたが、トップチームでは出場機会がなく、STVV移籍を決めました。
「自分はちょっと特殊なケースなので。18歳で海外に渡り、ベンフィカのセカンドチームで出たり出なかったりがずっと続いた。トップチームでも1シーズン、やらしてもらったんですが、なかなかチャンスがなかった。STVVに来た時の自分の感情は『欧州でしっかりプレーをして、スカウトの人やいろんなチームの人に見てもらいたい』ということがひとつありました。まずは欧州で『自分はここまでできる』というのを見せることが大切。今季はそこを出せていると思ってます」
――立石敬之CEOは「ゴールキーパー、センターバック、センターフォワードの層が日本は薄い」ということで、まず冨安選手を獲得した。そしてゴールキーパーは3代続けて日本代表です。
「ダンくん(シュミット)から始まり、彩艶、そして自分がA代表に呼ばれました。日本人のキーパーにとってSTVVは良い環境。これまで『代表のキーパーが足りない』と言われていたんですけれど、今は『層が厚い』と言われています。それはSTVVのおかげだと思ってる。タテさん(立石CEO)からオファーをもらえて、ありがたかったです」
続いて後藤。
――ストライカーとして日本代表入りはSTVVで初めてです。
「確かにそうですね」
――これで代表初キャップを記録すれば、立石CEOの目論見通りゴールキーパー、センターバック、ストライカーの3ポジションに選手を送り出したことになる。
「立石さんに聞かないと俺もよく分からないけれど、自分もそれに貢献できているというか。STVVは5大リーグへのステップアップに良いクラブという認識が、日本の方々、日本人選手にあると思います。クラブとしてそういう方針だと思うので、自分もそういうのにしっかり乗っかれて、今回、代表に選んでもらえました。監督が『日本人の投資が実を結んだ』ということを記事で言ってました。そういう道筋を示せているのは良いことだと思います」
スタンダール戦では途中から松澤海斗が出場したことで、7人もの日本人選手が同時にプレーした。そのことを疑問に感じさせないほど彼らはファンに馴染み、4位という好順位ということもあり、スタンドは多くの観衆で埋まっている。
谷口に締めくくりの質問をした。
――これは私の感想なんですが、今日のサッカーを見ていても面白いし、順位も良いし、STVVは日本人が経営するユニークなクラブ。これはベルギー人にとって良い広告になると思う。「俺もSTVVでプレーしてみたい」という。
「そこまでくれば相当大きいと思いますが、そうなるためにもチームとして結果が必要になってくる。個人として羽ばたく選手は多いかもしれないですけれど、やっぱりチームとして何か成し遂げられるものが多くなってくると、クラブとしてベルギーの中で価値が出てくると思う。個人の結果を求めながら、チームとしてどれだけ結果を出せるか、そこは避けては通れない。僕はやっぱりプレーオフ1に出たい。その目標を持ちながら戦ってます」
取材・文●中田 徹
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