
「市船のユニホームを着て選手権に出る」夢はまたも叶わず。2年生CB篠崎健人は力不足を痛感。思い通りにいかない一年を必ず来年への糧に
「昨年は市船に入って、苦しい時期もあったのですが、それでも全体的にはすごく良い思いをさせてもらった一年でした。でも、今年は結果が出なかったり、自分自身もうまくいかなかったり。どうしてもチームの結果が悪いと、自分のプレーの質も下がってしまって、僕が助けるという部分が足りなかった。悔しい一年になっています」
市立船橋の2年生CB篠崎健人は186センチのサイズを持ち、フィジカルもキックも対人も優れた世代屈指のDFだ。鹿島アントラーズつくばジュニアユースからユース昇格を断って、憧れ続けた市船のブルーのユニホームに袖を通した。
1年時から出番を掴み、プレミアリーグEASTで12試合に出場して残留に貢献。インターハイでは全試合にスタメン出場して8強進出を経験し、U-16日本代表にはコンスタントに選ばれ続けた。
守備の要として今年は4月にU-17日本代表としてU-17アジアカップに出場するなど、大きな飛躍の年になると期待されている。だが、チームとしてはインターハイ出場を逃し、プレミアEASTでは18試合を消化して2分け16敗と1勝も挙げられないまま来季のプリンスリーグ関東1部降格が決まった。
個人としても9月のU-17日本代表候補合宿には選出されるが、現在カタールで開催されているU-17ワールドカップのメンバーからは落選。苦しい時期が続く。
「もちろんワールドカップに出たいという気持ちは強くて、入れなかった悔しさはめちゃくちゃあります。でも、僕はこの選手権にかけていたので、引きずらないように切り替えて、何がなんでも予選を突破して全国に出るという強い気持ちで臨みました」
篠崎にとって高校サッカー選手権は特別な大会だ。千葉県出身の彼は小学2年生の時、フクダ電子アリーナで行なわれた第95回大会の2回戦、市船vs.前橋育英の試合を観に行った。
ピッチにはブルーのユニホームを身にまとった3人のJ内定選手がいた。篠崎は杉岡大暉(湘南内定、現・柏)、原輝綺(新潟内定、現・名古屋)、高宇洋(G大阪内定、現・FC東京)のプレーに目を奪われた。
当時の市船には他にも真瀬拓海(現・仙台)、金子大毅(現・磐田)らがおり、その年のインターハイを制覇している代だった。試合は0-0で迎えたPK戦の末に敗れたが、篠崎の目には市船の選手たちが輝いて見えた。
「本当に格好良くて、僕も行きたいとその時に思ったんです」
中学は強豪の鹿島つくばジュニアユースでプレー。前述した通り、ユース昇格の話ももらったが、やはり市船への憧れ、選手権への憧れは消えなかった。
「市船のユニホームを着て選手権に出る」
この一心で名門の門を叩いた。だからこそ、篠崎にとって選手権出場のための大きな壁である流通経済大柏も特別な存在だった。
「市船対流経柏はもう昔からのライバルで、お互いが特別な思いを持っているなかで、僕もかなり気合が入っていました」
今度こそ選手権へ。強い覚悟を持って臨んだ流通経済大柏との千葉県予選準決勝。だが、立ち上がり早々に2失点。1点を返すも、3点目を決められて前半を1-3で終える。
「立ち上がりの強度のところで負けてしまって、それで全体的に受け身になってしまいました。入りを悪くしてしまったことで試合自体がキツくなってしまった。そこは悔いが残ります」
それでもここから篠崎を中心とした3バックが奮起し、相手の鋭い前線からのプレスや強度の高いアタックをかわしながら、攻撃の起点を作り出した。後半は失点ゼロで抑え、アタッカー陣が2点を決めて3-3の同点に追いついた。
延長戦に突入しても篠崎の集中力は切れる事なく、高い壁となってライバルの前に立ちはだかり続けた。
しかし、延長後半アディショナルタイム2分に悪夢が待っていた。相手のヘッドを篠崎が打ち返そうとするが、オゲデベ有規にうまく身体を入れられ、遠くに飛ばすことができなかった。次の瞬間、オゲデベは鋭くターンして再びヘディングで飛んできたボールに反応。置き去りにされた篠崎は、この展開からオゲデベのミドルシュートを見つめることしかできなかった。
もっとブロックしながら弾けていたら、競り合った後にすぐダッシュしてオゲデベをフリーにさせなかったら...一瞬の迷いが相手に劇的な決勝弾を与えてしまった。
タイムアップの瞬間、篠崎はその場にうずくまってしばらく動けなかった。2度目の選手権予選は昨年同様、準決勝で幕を閉じた。
「リーグ戦だったら、立ち上がりの2失点で崩れてしまっていたかもしれません。そこで踏ん張ることができたのは、インターハイに出られない分、夏合宿などできつい練習をみんなで乗り越えて、自分たちを鍛え直すことができた自信の表われだったと思います。でも、やっぱり最後は気持ちが足りなかった。自分の力不足を痛感しました」
思い通りにいかない一年だったが、この経験は必ず来年への糧となるだろう。
「来年はラストチャンスでしっかり夢を叶えられるように一年間、頑張っていきたいと思います。もっと自分が強い柱となってチームを支える存在になっていきたい」
どんなに辛くても前を向く。それだけ市船への思い、自分の決断への誇りが心に刻まれている。来年こそは青の時代を取り戻すべく、市船の壁はより強固に、より高くそびえ立つ。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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