『THE SECOND』をRPGのように楽しんでいる
――この挑戦をいちばん近くで見ているキクチさんから見て、LLRさんは変化していますか?
キクチ どちらかと言うと、昔はクールにネタをやってるタイプだったと思うんです。けど、ここ2年くらい、福田の人間力が出始めてるというか。この20年くらい感じたことがなかった熱量みたいなものが見えてきて楽しいですね。『THE SECOND』のノックアウトステージは、ネタの内容で勝っても人間力で負けるところもあるんじゃないかと思うなかで、素直に賞レースで勝ちたいっていう気持ちが出てきてるのがいいなと思いますよね。
福田 もともとネタは好きなので、いま思えば『M-1』にも、もっと真剣に向き合えたはずなんです。けど、まだ若いから遊びたいとか、そんなに頑張ることじゃないみたいに当時は思ってたんだと思います。去年1年間、ネタを頑張って、結局、『THE SECOND』の選考会は落ちちゃったんですけど、それはそれで納得はできたというか。ネタ自体は好きだったし、お客さんも笑ってくれたしな、とか考えていると、ロールプレイングゲームをやっているような感覚になってきたんです。
キクチ それが大きかったんだ。

福田 はい、僕、ロールプレイングゲームが好きで。大学受験は高校3年生の夏までまったくしてなくて、僕と伊藤はクラスでケツから数えたほうが早いくらいの成績だったんですけど、大学に行こうかなと思い始めて兄貴の参考書をやってみたら、受験がロールプレイングゲームに思えてきて。楽しくなって勉強していたら、大学に入れたんです。『THE SECOND』もそんなふうに、熱中できているんだと思います。
伊藤 当時の僕らからすれば、『M-1』も頑張ってはいたんですけどね。いま思えば、もうちょっと楽しんで挑戦できればよかったなとは思います。
キクチ われわれの世代はカッコつけだから、本気になっているところを人前で見せたくないところがあったんだよね。コンビ仲がよくないほうがカッコいい、みたいなところもあったなかで、僕がやってたトリオ(ポテト少年団)は信じられないくらい仲がよかったけど。いまは「M-1に懸けてます! ここで勝ちたいです!」っていうのがカッコいいっていう感じだもんね。あと、『THE SECOND』自体、カッコつけてる人じゃ受からないっていうのが、出ている人はみんな、わかってるんだと思います。
伊藤 みんな、熱量は高いですよね。モンスターエンジンの大林(健二)くんもクールなイメージだったけど、一緒になったとき、すごく熱いなと思いました。
キクチ 時を経て、みんな、そういうところが出せるようになったんだろうね。
17時から閉店まで喫茶店で「お笑い」を考えている
――となると、若手のころよりお笑いのことを考える時間も増えましたか?
福田 最近、めっちゃ考えてます。ネタどうこうというより、『THE SECOND』を攻略するためにどうしたらいいのか、まわりに勝つにはどうすればいいのかみたいなことが多いです。もともと、そういうことを考えるのは好きだったんですけど、パチンコにもいっさい行かなくなりました。
キクチ パチンコより攻略を考えるほうが面白くなった?
福田 そんな時間があったら、喫茶店に行って考えようと思うようになりました。たぶん家の近くのチェーン店で、僕、あだ名つけられてると思います。17時くらいから閉店まで、グラスを目の前に置いてずっと座ってるんで。
伊藤 (笑)。喫茶店に行くと、たまに1人でぼーっとしてるおじさんがいて、この人、何やってるんだろうと思うことがあったけど、あれは一生懸命、何かを考えてるのかもしれないってことか。
キクチ あのころに見たおじさんに、いま福田はなってるのかもしれないね。

福田 はい(笑)。毎回、Suicaで支払ってるんですけど、最近は言う前にレジのSuicaボタンを押されるようになりました。
――「いつもありがとうございます」って声をかけられたら終わりですね(笑)。
キクチ 終わるね。始まりかもしれないけど。