
地元・名古屋でのバンド活動を経て23歳で上京し、俳優としては遅めのスタートだったものの、真摯に芝居と向き合い、さまざまな有名作に出演してきた宇野結也。11月20日(木)には烏旅人役を演じる舞台『ブルーロック -EPISODE 凪-』が開幕する。演技の道にのめり込み、ひたすら走り続けた彼に、ここ数年での変化や印象的な出会い、今後の課題などを語ってもらった。
■心の渇きが前に進むエネルギーになる
――「ザテレビジョン」では3年ぶりのインタビューです。この3年間を振り返ってみていかがですか?
舞台『巌流島』の前のタイミングでしたね。あれからもう3年経ったんだ、というのが一番の実感です。何かが劇的に変わったというより、さまざまな作品に関わらせていただく中で、少しずつ価値観が変わっていった感覚があります。役者としてというよりも、自分の“人生ベース”で物事を考えるようになりましたね。
――“人生ベース”というのは、どういう意味でしょうか?
3年前はうまくいかないことや苦しいことに対して、マイナスな感情を持ってしまうことが多かったんです。でも最近は、心が渇きを感じることで頑張ろうと思えるし、それが幸せなことなんだと感じるんです。すべてが順調で、時間もお金もあって…すべてが満たされてしまったら、意外と退屈なんじゃないかって。現状に満足できないことが、むしろ前に進むエネルギーになるというか。
――以前はそう考えていなかったということですか?
昔は嫌なことがあると「もっと頑張ろう」とひたすら思っていました。でも頑張ったからといって、すぐに結果が返ってくるわけじゃない。やり続けることに意味があるんだと思えるようになりましたね。
それに今は「うまくいかなくても、しょうがないよね」と思えるようになりました。肩の力が抜けたというか、少し冷静になれた気がします。
――目標や道筋を立てて進むタイプですか?
それは昔からそうですね。でも、目標通りに行かなくても「これはこれでいいか」と思えるようになったことが、自分にとって一番の変化かなと。寄り道した先でも出会いがあるし、楽しめばいい。今は後輩から相談を受けることも増えたんです。相談を受ける中で、昔の自分を見ているような感覚になることもありますし、これまでの道筋を振り返ることも多くなりましたね。

■演じることの意味を特に感じた3年間
――この3年の中で、印象的な出会いはありましたか?
舞台 『巌流島』で共演した山口馬木也さんと横浜流星くんですね。お二人が今年の日本アカデミー賞の舞台に立っている姿を、うらやましく感じました。
馬木也さんは映画の主演が『侍タイムスリッパー』までなかったと聞いてびっくりしたんです。あれだけ実力のある方でも長い時間を積み重ねて、輝く瞬間を迎えるんだなと。馬木也さんから受賞のお話を聞いたときは、自然と涙が出ました。
横浜くんが賞を取ったときも心からうれしかったです。そうした先輩方の姿を見たことで、自分の進むべき方向もより明確になった気がします。いつか自分もレッドカーペットに立ちたいですね。
――3年前と比べると、雰囲気もどこか穏やかになった印象です。
それが自分のベースだから忘れたくないですね。けれど今は、焦っていても仕方ないこともあるんだなと思っています。オーディションや役のチャンスって、自分の力だけじゃどうにもならない部分もある。
だからこそ、焦るよりも「やるべきことを続けよう」と。最近では50代から役者を始めた人と出会ったりして、いろいろなお話を聞くうちに、回り道をすることも悪くないんだなと思えるようになりました。
――そういったお話の中で、例えば影響を受けた言葉などはありますか?
舞台『日本三國』の脚本・演出を担当した西田大輔さんが「役者って、新しい感情に出会うから楽しいんだよ。だから自分たちは演劇を作っているんだよね」とお話されたときに、本当にその通りだなと思いました。芝居は、自分の人生では経験できない感情に触れられる場所なんですよね。それが演じる楽しさだと思います。
――役者を始めた頃に印象に残っている言葉もあるそうですね。
はい。当時、育成機関の方に「映画や作品はなぜあると思う?」と聞かれて、「歴史を残すためですかね」と答えたら「その通りだと思う」と言っていただけたんですよ。先日、その方に10年ぶりにお会いして、今でもこのお話が心に残っていると伝えたんです。そうしたら、「その言葉には続きがあって、紡いでいくことだと思う」と言われたんですね。「紡いでいくこと」という言葉はまだ消化しきれていませんが、これから少しずつ理解していきたいなと思っています。
――3年前はプライベートの時間も出演作品に関する調べ物などに費やしているとお話していました。仕事以外の時間の過ごし方に変化はありましたか?
あまり変わらないですね。作品の時代背景を調べたり、役柄に関する勉強をしたり。さきほどお話した「歴史を残す」という言葉が根底にあるからこそ、最大限努力して演じきりたいんです。
例えば刀の使い方ひとつも、何も考えずに演じて間違っていたらよくないですよね。けれど、最大限努力をしたうえで間違いに気づいたときは、自分の成長につながると思っています。演じることは、間違いを正してアウトプットしていくことの繰り返しなのだと感じています。
唯一変わったことがあるとしたら、「テニスの王子様」の原作の許斐剛先生がコンペに誘ってくださったことがきっかけで、最近ゴルフを始めたんです。ゴルフが趣味の俳優仲間が多くて、馬木也さんと打ちっぱなしに行ったり、岡本悠紀さんからコンペに誘っていただいたり、渡辺大さんとご一緒したりしています。
ゴルフはどんなに短くても5時間くらい一緒にいるので、作品の話を真剣にすることもあれば、他愛のないことでふざけることもあって、とにかく楽しいんです。自然が多い場所に行くと、野生動物に出会うこともあって、いい息抜きになっていますね。

■明日も頑張ろうと思えるような作品づくりをしたい
――まもなく、舞台『ブルーロック -EPISODE 凪-』が始まります。
「ブルーロック」は世代を超えて多くの人が知っている作品で、注目度が高いと感じています。出演するのは3作品目になるので、3度も大好きな役柄を演じられることがありがたいですし、よりよい演技をしたいなと気合が入っています。それに、烏旅人は、自分と重なる部分が多いキャラクターだと思っているんです。
――役柄に一番共感した部分はどんなところですか?
自分のことを凡人だと思っているところです。スーパースターのようなキャラクターがたくさんいる中で、物語が進むにつれて、彼に人間味を感じていくようになりました。スーパースターやヒーローのように完全無欠ではなく、自分が「よしできた」と思ったことを振り返ったときに、でもやっぱり違うなとか、まだまだだなと考えているようなキャラクターだと感じるんです。だからこそ、他の人と違って自分は凡人だと思っているのでしょうし、僕と同じように、自身に満足していないキャラクターなんです。そこに特に共感しました。
――長い期間向き合ってきた役だと思いますが、最初のころと印象が変わった部分はありますか?
最初は口の悪い関西人という印象で、底が見えないキャラクターだなと思っていたんです。けれど、演じていくうちに、自分自身の評価よりもチームの勝利を優先する姿勢に強く惹かれましたね。今回は過去の姿を演じるということで、「ああ、こういう経験があったから今の烏旅人がいるんだな」と思えて、さらにこの役が好きになりました。
――それでは最後に、役者として今向き合っている課題や今後の展望について、お伺いしたいです。
課題だらけです(笑)。だからこそ、舞台に立っていることに感謝しながら、観に来てくださったお客さんが明日も頑張ろうと思えるような、元気づけられる作品づくりができる人間になりたいですね。
それに、この3年で後輩が増えてきて、少しずつ頼られることが多くなってきたと感じています。僕自身、10年前にかけてもらった言葉が、今でも自分の行動の根っこに残っているように、自分も誰かに残る言葉や行動を届けられる先輩になれたらいいなと考えています。

◆取材・文=イワイユウ
ヘア&メーク=田中宏昌
スタイリング=北村梓(Office Shimarl)

