腸内細菌叢は脳より古い起源をもっている

この研究により、ニューロンの謎に包まれていた起源が、消化システムを制御する細胞(ニューロイド)から派生した可能性が示されました。
ニューロイドで同じような遺伝子が働いているだけなく、ニューロンのシナプスにソックリな接合部を持ち、同じ神経伝達物質を分泌し、細菌叢の維持にもかかわっていました。
神経系が存在しない海綿動物の消化システムでみつかったニューロイドは、その類似性から、後のニューロンの原形であり、ひいては神経系や脳の起源となったと考えられます。
そして腸内細菌などの共生細菌の存在は脳にとって、自分の親である腸と友誼を結んだ、古株のオジキ的な存在と言えるでしょう。
脳が腸内細菌の指令を受けて活動を変化させるのも、進化の過程をみれば納得できます。
ただ全てのニューロンがニューロイドを起源にしているかまでは、断定できません。
いくつかのニューロンは消化システムの制御機能よりも、筋肉細胞のほうにより多く一致する部分があるからです。
研究者たちは今後、海綿動物の細胞を分析することで、神経系の複雑な起源を解明できると考えています。
生命の進化過程の探求は今後も、豊かな思考の糧を与えてくれるでしょう。
参考文献
More than a gut reaction
https://www.embl.org/news/science/more-than-a-gut-reaction/
元論文
Profiling cellular diversity in sponges informs animal cell type and nervous system evolution
https://doi.org/10.1126/science.abj2949
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

