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「家族」も「会社」も人生の依存先にできない…不確実な時代を生き抜くために求められる力とその実践的トレーニングとは

「家族」も「会社」も人生の依存先にできない…不確実な時代を生き抜くために求められる力とその実践的トレーニングとは

学び直しの習慣を身につける

リクルートワークス研究所の調査(Global Career Survey 2024)によると、欧米では社会人の9割が、就職後も継続的に学び続けているという。それに対して日本では、「就職」という関門を突破した瞬間に、勉強をやめてしまう人が少なくない。社会人になってからも学び続けている日本人は、わずか5割弱にとどまり、これは世界でも最低レベルの水準だという。

私はこの「学ばない社会人生活」こそが、日本の経済成長を阻む大きな要因だと考えている。そしてAI時代の到来によって、その傾向はさらに深刻化する可能性がある。

少し余談になるが、先日、通勤電車の中で熱心に参考書を読んでいる若い女性を見かけて、思わず感心した。というのも彼女の周囲にいたビジネスパーソンたちは、ほぼ全員がスマートフォンに目を落とし、多くはゲームや動画視聴に没頭していたからだ。以前、韓国のカフェで、静かに勉強に集中しているビジネスパーソンが多数いた光景を思い出し、改めて学ぶ姿勢の違いを痛感した。

スマホもAIもない時代の古代の賢人の言葉が、むしろ現代でこそ胸に響く。情報に溺れ、思考が浅くなる社会のなかで、自ら学ぶ姿勢を取り戻すことが重要だ。暇つぶしを100年繰り返したところで、人生は決して豊かにならないのである。

さらにリクルートワークス研究所調査の別の項目では、「今の会社を辞めても同じ給与を得られると思うか」という問いに対し、欧米や中国の若者の7〜8割が「イエス」と答えたのに対し、日本ではわずか2割強にとどまっていたという事実も報告されている。日本では会社内の研修や個人のスキルアップに投資する文化が根づいておらず、企業内研修といえばハラスメント対応などの危機管理研修が中心になってしまっている。

では、目の前の仕事に直結はしないものの、自らの見聞を広げるような行動はどうかというと、こちらもかつてに比べて減少しているのではないだろうか。私が若かった頃は、国立大学では多くの若手教員にサバティカル(研修のための長期休暇)が与えられ、海外留学の費用も文部省(当時)が負担してくれた。

私もその恩恵にあずかった1人である。しかし今では、そうした制度はほとんど消滅している。そもそも若手で正規の教員になる人が限られている。若者を社会的に育成する公的支援も減少し、海外留学を志すなら自ら費用を工面するほかない時代だ。

不確実な時代を生き抜くための実践的トレーニングとは

こうした状況の中で、あえて問いたい。

「もし明日、あなたの会社が突然倒産したら、あるいはリストラに遭ったら。それでもあなたは『個』として食べていけるだけの力を持っていますか」と。

この問いは若者に限ったものではない。キャリアを積んできたと自負する中高年に対しても問いたい思考実験である。産業構造は常に変化し、今年好調な業界が、2年後には壊滅的な状況に陥っている可能性だってある。大企業神話は砂上の楼閣である。

そうした時代に、どこで、どう働き、生きていくのか。自分は異業種へ転職できるのか、あるいはフリーランスとして生計を立てられるのか。

「この機会に1カ月、旅に出よう」「半年間、語学留学してみよう」「失業中にこのスキルを習得しよう」「家族で地方に移住してみよう」。そんな妄想や仮定を、日常的に巡らせることは決して無駄にはならないはずだ。むしろ、こうした柔軟な想像力こそが、不確実な時代を生き抜くための実践的トレーニングとなる。

文/山田昌弘

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