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「プライドなんてゼロでいい」お見送り芸人しんいちの“生きるのがラクになる言葉“はなぜ刺さるのか?

「プライドなんてゼロでいい」お見送り芸人しんいちの“生きるのがラクになる言葉“はなぜ刺さるのか?

10月29日に初の著書である『嫌われ者って金になる!』(徳間書店)を出版したお見送り芸人しんいち。2022年にピン芸コンクールである「R-1グランプリ」で優勝し、バラエティ番組でも引っ張りだこの彼に、著書に込めた想いや自身のマインド、これまでの人生について話を聞いた。(前後編の前編) 

“しんいちマインド”が、今の社会に1番必要なのかもしれない 

クズ芸人キャラが話題のお見送り芸人しんいち。そんな彼が「嫌われ者」の哲学を書籍『嫌われ者って金になる!(徳間書店)に込めたのはなぜだろうか。好感度狙いとは真逆を行くその理由には、人生を生きやすくするヒントが隠れているのかもしれない。

――まず、この本を出版することになった経緯を教えてください。

お見送り芸人しんいち(以下、同) これはもう出そうと企画した徳間書店さんがおかしいんですよ(笑)。「しんいちさんってなんでこんなに嫌われてて、好感度も低いのに笑顔でいられるんですか?」って失礼なことを言ってきましてですね。

――すでに面白いエピソードですね。

「普通に立ってるだけですよ!」とツッコんだら、今って芸能界だけじゃなく、下を向いて暗くなってる人が多いから「ひょっとしたら社会で1番必要なのはしんいちさんのメンタルなのかもしれない…」と、とても大切なことに、いち早く気がついてくれまして。こんな僕で良いならぜひ本を作りましょう! という流れです。

――たしかに、この本を読んでいると、あまりに痛快で自分の悩みが馬鹿馬鹿しくなるというか、小さなことで悩んでいたのかもしれないと思える不思議な魔力がありました。しんいちさん自身は今、悩みごとはないのでしょうか?

僕でも数個はありますよ。悩みがゼロになる人間なんていない。ただ悩みを抱え込んでしまうことで、楽しいことも楽しくなくなるのはちゃうんじゃない? みたいなのが、この本で伝わればいいなと思いますね。

職場とか学校も絶対楽しい方がいいし。今抱えてる悩み「ちょっとタンスにしまわん?」みたいな。「家帰ったらワンちゃんいるし」とか「推しの動画見よう」とか「宝くじで1万円当たった」とか。「他の人より私幸せやで」って絶対思った方が楽やでっていうことに気づいてほしい。僕はプライドもありませんし。

――しんいちさんはプライドが全くないということですか?

はい! プライドなんて捨ててしまって、自分をめっちゃ下に見積もって、「自分ってほんまに何にもない人間で、才能ない人間や」って思い続けたら、めっちゃ楽ですよ。もうほんとすっからかんな人間で全然いい。

というか逆に「そんな大した人間おる?」とも思っちゃいます。自分ならできる、自分はこうあるべきって自分自身を上に見積もりすぎてる人が多くない? って思いますね。

助言の通りにやってみたギターネタでR-1優勝

――しんいちさんは芸歴16年ですが、芸人を辞めようと思ったことはありましたか?

腐ってた時期もありますが、芸人を辞めようと思ったことは1度もないですね!

あの頃は、他の芸人と一緒に住んでて、ナンパとコンパとバイトだけの日々。ネタも作らないし、劇場にも立っていなかったけど『芸人です』って言い張っていました。芸人って本人が言ったら、芸人。芸人なんてそんなもん。それくらいの職業です。

――そんなこと言って良いんですか…!最近、芸人さん=才能があってすごい人というような、年々職業としての評価が上がってきている気がします。

僕はその風潮ちょっと待ってくれ!って思ってます。基本的には芸人って落ちこぼれ集団だと思ってますから。売れてる人は、昔クラスの隅っこにいたなんて人が多い。ちょっと賞レースとかが芸人をカッコよくしすぎてますよね。

――しんいちさんも幼い頃から芸人志望ではなく、サッカー選手を目指していたんですよね?

サッカー選手になりたくて、ずっとサッカー頑張ってきたけど、強豪校に行ったら、上手すぎる人もフィジカル強い人も多すぎて、すぐに「無理!」って思いました。自分は体格とかセンスに恵まれてない、自分は選ばれなかった人間ですって思いました。そこで、じゃあ、違う道でこの人たちに勝つためには何しようか?って、考えた方が早いなと思ったんですよね。

――潔いというか発想の転換も早いですね。

親父に『喧嘩に負けてもいいけど、ボコボコにされてもいいけど、一発どついてこい』とよく言われてたんです。僕にはこの言葉が全て。

試合に出れる選手になれなかったけど、彼らに追いつくためにはどうしたらいいんだろう?って考えて。監督の前でめちゃくちゃ走ったりとか、監督の前でめっちゃ、スライディングしたりとか(笑)。あいつ頑張ってるなって思わせて、練習の時にめっちゃ声出して誰よりも盛り上げましたよ。そしたら、ユニフォームもらえて試合には出ていないけど、インターハイまで行けたんですよ。僕はそれでええやん!って思うんです。

――その時の経験が今の芸人生活での負けん気やガッツに繋がっていますか?

めっちゃ繋がってますね! 漫才は無理だからピン芸人になって、ピン芸人やり始めたけど、全然あかんくて、ライブに出ても10か月連続最下位。コントやっても無理、フリップネタやっても無理、大喜利も才能ない。

そんな時に周りの芸人達が「しんいちってなんか嫌われてるよな」「ギター弾けるよな」って言い出して。最後にサンドウィッチマンの富澤(たけし)さんに「ギター弾きなよ」と言われて、ギター嫌やな…と思いつつ、舌打ちしながらもギターを持ったんですよ。

嫌われてる、ギター弾ける、「じゃあもうええやん、嫌われそうな歌を歌おう」と実行に移したら、優勝しちゃったっていうだけ。

――なんと…! でも、R-1優勝は素晴らしいことだと思います。

そう言っていただけるのはすごく嬉しいのですが、本当にそれだけの話です。自分で見つけたもんちゃうし。ただ人の話をちゃんと聞いて、素直に行動に移しました。誰かからのアドバイスって、その場で聞いても、実際にはやらへん人が多いから。やったもん勝ちやのになぁと思います。

なんでも考える前に、動いた方が早いし強いのにっていうのは自分の中であります。芸人に限らず、自分のポジションとか椅子を違う角度から見つけたら、もしかしたら目指していた人やライバルを追い抜いてる時だってあるよって。

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