
柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)
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アンパンマンの大ブレイクももうすぐか
『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんとその妻の暢さんをモデルにしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』は、いよいよ最終の第26週「愛と勇気だけが友達さ」に入っています。今週はいよいよ、『アンパンマン』が大ブレイクしていく時代が描かれそうです。
126話では担当編集者が絵本『あんぱんまん』について、評論家から「自分の顔を食べさせるなんて残酷だ」と評判が悪いことを話す場面がありました。一方、同話終盤では、主人公「柳井のぶ(演:今田美桜)」がカメラ店に写真の現像をしに行った際、店主(演:石橋蓮司)が孫が『あんぱんまん』の読み聞かせを何度も頼んできて、自分も覚えてしまったことを語り、のぶを喜ばせています。
126話は『あんぱんまん』に関して、大人からの批判と子供からの評価の両方が描かれた重要な回となりました。
1973年の絵本『あんぱんまん』(フレーベル館)に関して、当時厳しい批評があったのは事実で、やなせさんの自伝『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)によると、ある批評家からは「こんなくだらない絵本は、図書館に置くべきではない。現代の子どもは、この絵本を読んでも少しも面白がらないはずだ」とまで酷評されたそうです。
また、『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)という本では、やなせさんは編集者から「こんな馬鹿馬鹿しいものを描いても、読者には喜ばれません。もうちょっとショッキングなもの、そういうものでないと。こんな、自分の顔を食べさせてやっていくような生ぬるい話では……」と言われたことを語っていました。
上記のように、最初はひどい扱いを受けていた絵本『あんぱんまん』ですが、あるとき、やなせさんが「(人気になる)最初の予兆」だったと振り返る出来事があったそうです。
それは絵本発売から約5年ほどたったときのこと、やなせさんが近所のカメラ店にフィルムを買いに行くと、店主が「先生、うちの坊主がアンパンマンの絵本が大好きでね。毎晩『読んでくれ』ってせがむんだよ。人気あるねえ」(『人生なんて夢だけど』より引用)と、話しかけてきたといいます。
そしてその後、やなせさんは似たような話を各所で聞くようになりました。やなせさんは『アンパンマン』の人気が「幼稚園や保育園で野火のように広がっていきました」と振り返っており、その後、『アンパンマン』以外の仕事がほぼできなくなるくらい忙しくなったそうです。『人生なんて夢だけど』では、出版社の態度が一気に変わって続編の絵本シリーズを次々と描いたことや、「アンパンマン」の体型を初期のスリムなスタイルから、幼児向けに三頭身にしたこと、話を広げるために「しょくぱんまん」や「カレーパンマン」らアンパンマンの仲間を増やしていったことを語っていました。
やなせさんに勇気を与えたカメラ店の店主のエピソードは、やなせさんのさまざまな書籍に出てきます。『あんぱん』で、この店主を大ベテラン俳優の石橋蓮司さんが演じたのも納得です。
予告されている『あんぱん』127話のあらすじを見ると、「柳井嵩(演:北村匠海)」が「のぶの“うれしいの話”を聞き、愛すべき悪役を描き始める」とのことで、店主の言葉が『アンパンマン』に欠かせない敵キャラ「ばいきんまん」誕生につながるものと思われます。物語も残り4話、『アンパンマン』の人気爆発も近そうです。
