アマチュアスポーツ界が抱える、知られざる「セカンドキャリア問題」

多くの女子サッカーチームの選手は、企業に所属し会社員として働くことになるが、その仕事内容の大半が工場での作業や簡単な入力事務などだという。雇用する企業からすると、本業がスポーツ選手である以上、どうしても大きな責任を伴わない仕事を任せるしかない。しかし、その仕事をずっと続けたところで、選手の引退後のキャリアに活かすことは難しい。指導者やトレーナーなど、スポーツに関わり続けることのできる者は一握り。このような「引退後のセカンドキャリア問題」は、女子サッカーに限らず、アマチュアスポーツの抱える大きな課題のひとつなのだ。
一方でFC越後妻有の選手たちは、NPO法人越後妻有里山協働機構に所属し、ほかの職員と同じ仕事をこなしている。40人ほどの職員を擁する組織で、サッカー選手であるか否かによる業務の垣根は存在しない。
元井監督は「責任のある仕事をしているからこそ、内面も鍛えられて、サッカー選手としても伸びていくという好循環が生まれている。地域住民の生活の中に入って仕事をすることで、選手たちが磨かれていくのを感じています」と語る。
つまり、このプロジェクトのメリットは、地域にとって若い労働力が得られることだけではない。選手にとっても、農業やアートに関わる仕事を通して社会経験を積むことで、人としても社会人としても成長できる機会となる。いわば、サッカーチームと地域の双方がメリットを得られる、ウィンウィンの仕組みなのだ。
スポーツ選手が地方でこのような取り組みを行うことで、地域や地域の人々にどんな影響を与えているのだろうか。後編では、FC越後妻有の選手たちが送る1日の様子や、地域との関わり方、そしてその影響力を詳しく紹介していく。
text by Miu Tanaka(Parasapo Lab)
写真提供:FC越後妻有
