「先発投手に完投グセをつけさせた」新庄監督のファインプレー
新庄監督の功績に、「先発投手に完投グセをつけさせたこと」も挙げられる。たんに完投させたのではない。「完投グセ」に価値がある。私が現役のころならいざ知らず、継投策を用いることをよしとする今の野球界において、ある意味「プロ野球のあるべき姿」に戻したといえよう。
新庄監督が就任して以降(2022年から2025年まで)、パ・リーグ全体の先発投手陣の完投数は次のとおりである。※チームの順番はその年のチーム成績順
2022年 オリックス9、ソフトバンク8、西武2、楽天3、ロッテ3、日本ハム9
2023年 オリックス5、ロッテ1、ソフトバンク4、楽天1、西武10、日本ハム8
2024年 ソフトバンク5、日本ハム11、ロッテ9、楽天6、オリックス5、西武6
2025年 ソフトバンク5、日本ハム23、オリックス6、楽天3、西武10、ロッテ4
2022年から2024年までの3年間を見ていると、日本ハムの完投数はパ・リーグのなかでは多い部類だった。それが2025年シーズンには、完投数が「23」と飛躍的に増えた。
そこでこの年の日本ハムの完投している先発投手の成績を見ていく。
伊藤大海 27試合登板 14勝8敗 防御率2.52 完投数6
北山亘基 22試合登板 9勝5敗 防御率1.63 完投数4
加藤貴之 20試合登板 9勝6敗 防御率3.40 完投数3
金村尚真 28試合登板 5勝7敗5ホールド 防御率2.93 完投数4
山﨑福也 20試合登板 7勝5敗 防御率2.27 完投数2
達孝太 16試合登板 8勝2敗 防御率2.09 完投数3
古林睿煬 7試合登板 2勝2敗 防御率3.62 完投数1
勝ち頭の伊藤を含め、7人の投手が完投している。何度も申し上げるが、昔なら当たり前のことであっても、令和の今では異例だ。
私が感心しているのは、「新庄監督は野球の本質がわかっている」ということだ。先発投手はできるだけ長いイニングを投げ、できれば完投するのが望ましい。先発で好投している投手を、「6回100球投げ、ゲームを作ったから」という、まったくもって説得力のない理由で降板させてしまうのはナンセンスだと考えているのではないか。
新庄監督がインスタグラムで書いていたこと
新庄監督は自身のインスタグラムで、こんなことを述べている。
「9回投げれるんだというメンタルの慣れ 疲労に耐えれる肩 体力 後は3人の投手が2回完投してくれさえすれば、負けず嫌いの人間が多いこの世界 次は俺がやったる その気持ちが四球を出さない ゴロを打たせてダブルプレーを取り球数を減らさないと完投できない意識が高まり完投人数が増えて行く」(原文ママ)
こう説明したうえで、次のように続ける。
「僕が日本のプロ野球を変えていきたいと言った1つに先発投手は最後までカッコよく投げて試合を終わらせる昭和の野球をもう一度です」(原文ママ)
「カッコよく」というのはいかにも新庄監督らしい表現だが、先発投手を長く投げさせることは私も大賛成である。
さらに、インスタグラムではこんなことも言っている。
「アメリカで3年プレーしましたが、はっきり言って学んだ事は試合に入るまでのスイッチの入れ替えの凄さだけで、後は全て日本の野球の考え方の方が上回ってると個人的に思います 先発投手がもうすぐつかまりそうの想像だけで、中継ぎに変えてたら先発投手の成長を止めてしまう ピンチを抑えるからこそレベルアップするし次につながると僕は判断してこの4年間やって来ての今です」(原文ママ)
私は長年、契約上のこととはいえ、100球をめどに先発投手を降板させるMLBのやり方に疑問を持っていた。ここにきて日本の現場で、ようやくこうしたことを口にする人物が現れてきたのを嬉しく思う。同時に、日本ハムがここ2年間で大きく躍進した理由もよく理解できた。投手は先発完投を目指してこそなのだ。日本ハム以外の11球団でも、こうした考え方が浸透してほしいと願う。
文/江本孟紀

