つとに厳しい練習で知られる広島カープが秋季キャンプで目立つのは、投手陣の「投げ込み」だ。3年目の斉藤優汰は日南で304球と、自身最多を更新。最初は200球を目安にしていたが、投げるうちに感覚が良くなり、自然と目標を300球に切り替えたという。「後半のほうが腕が気持ちよく振れた」と笑い、フォーム固めの手応えをつかんだようである。
一方で、投げ込みの疲れがそのままパフォーマンスに影響したかのようなケースも。辻大雅は11月6日に261球を投げ、4日後の侍ジャパン戦で4回10安打6失点。結果だけ見れば厳しい内容だったが、新井貴浩監督は「向かっていく姿勢は良かった」と前向きに評価した。
離脱者も出ている。滝田一希はキャンプ中に200球以上を投げてアピールしたが、腰痛で無念のリタイヤ。11月16日には育成1年目の竹下海斗も同じく腰痛で、キャンプを離れた。それでも新井監督は「限界を決めずにやった証し。いい経験になる」と語り、若い投手たちの意欲を尊重している。
こうした投げ込みの背景には、黒田博樹球団アドバイザーの存在がある。黒田アドバイザーは「無計画に投げればいいわけじゃない」と前置きしながらも「リスクを避けてばかりでは成長しない」と強調。疲れた状態で体を使いこなす感覚をつかむことで、シーズンを乗り切れるフォームが身につく、という考え方だ。
かつて北別府学のように投げ込みで大成した投手がいる反面、同じやり方が全ての投手に当てはまるわけではない。
投げ込みが結果につながった例としては、2021年の九里亜蓮がある。春季キャンプで347球を投じ、底なしのスタミナをシーズンで発揮して13勝。最多勝のタイトルを獲得した。
やり方を誤れば、故障のリスクが高まる。広島に求められるのは、投手個々の状態を丁寧に見極めながら、無理のない形で力を伸ばしていくことだ。再建を急ぐあまり、ケガ人を増やしてしまっては元も子もない。
この秋の投げ込みが来季、どんな形でチームの力になるのか。カープファンはその行方を、静かに見守っている。
(ケン高田)

