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J2クラブ内定ボランチが飛ばした檄「インターハイを思い出せ」。全国に導く決勝弾。選手権連覇に「一つひとつしっかり戦っていく」

J2クラブ内定ボランチが飛ばした檄「インターハイを思い出せ」。全国に導く決勝弾。選手権連覇に「一つひとつしっかり戦っていく」


 値千金の決勝弾は、MF柴野快仁の頭から生まれた。11月16日に行なわれた選手権の群馬県予選決勝で、前橋育英は前橋商と対戦。前半アディショナルタイム1分、DF瀧口眞大の左CKに、ニアで柴野がヘッドで合わせてゴールネットを揺らした。

 1-0で接戦を制した前年度の選手権王者が、全国行きを決めた。

「去年は夢に見ていたことが実現した。逆に今年は相当なプレッシャーがあるなかで、勝ち抜くのが難しい県予選を突破できたことは素直に嬉しいです」

 試合後、まずは1つの大きな関門を突破したことを素直に喜んだ柴野。決勝弾以外にも、ダブルボランチでコンビを組む竹ノ谷優駕スベディ(モンテディオ山形内定)と共に、中盤での激しいプレスの連続の中で安定したプレーを披露。ゲームの組み立てだけではなく、セカンドボールの回収、ディフェンスラインまで落ちてきて、ボール奪取からの運び出しと、攻守において大きな存在感を放った。

「今日のように球際を好んでくるチームに対して、同じようなプレーで対応したら、相手に軍配が上がってしまうこともあるので、ボランチとしていかに早くボールをプレスから逃してあげられるかをずっと考えていました。

 ボールが来た時に抜け出せるスペースを見つけられるように、いつも以上に首を振って、見つけておいた状態でパスが来たらそこに運ぶというのを意識してやっていました」

 相手の狙い、試合展開を読みながら適したプレーを選択する。5年連続28回目の選手権出場を引き寄せたハイレベルなプレーは、前橋育英の3年間で培ってきた『利己と利他』の融合がもたらしたものだった。
 
「1年生の頃はボールロストもすごく多かった」と口にしたように、ドリブルに夢中になってしまうあまり、パスがおろそかになってしまったり、周りとの連係が噛み合わないプレーをしていた。だが、学年を追うごとに相手が一番怖がるプレーとは何かと考えるようになった。

「積極的にドリブルをされるのも怖いのですが、やっぱり一番嫌な位置に常にいられるのが自分としてはものすごく嫌。そういう選手になるために、常にスペースを探して、攻守において嫌な場所に居続けて、ボールを受けたらどんどん仕掛ける。

 このプレースタイルを目ざすようになって、ボールを持つ前の状況把握や身体の向き、予測などの準備を徹底してやって、今はナチュラルにできるようになりました」

 自分がやるべきプレーがどんどん整理されていくなかで、最高学年になった今年も大きな学びと向上心への刺激があった。インターハイでは2回戦の高知中央高戦では1-0で迎えた後半アディショナルタイムに、まさかの2失点。1-2で敗れた。

「ちょっと『勝てる』と思った瞬間にガタガタと崩れて2点を奪われて、結局その波に飲みこまれての逆転負け。誰も緩んでいるつもりはないけど、どこかで緩みがある選手がいるなら、周りから何を言われようと僕には強く言う必要性しかないと思っています」

 前橋商戦でも事あるごとに「インターハイを思い出せ」と周りに檄を飛ばしてチームを鼓舞。最後の最後まで集中力を切らさない強いメンタリティを示した。
 
 そんな柴野は、10月23日にJ2のFC今治の加入内定が発表され、進路が決まっている。

「小山哲司GMから『プレーが面白い』と言ってくださったことが本当に嬉しくて、環境や雰囲気などを含めて、ここでやりたいと思って決めました」

 1週間の練習参加の際にコーチから「サポートに入る時は、自分がもらえなくても全力でする必要があるし、そこを全力でやらないと成長はしていかない」と言われ、大きな感銘を受けた。

「本当にその通りだと思いました。自分の動きで誰かを活かせられるなら、僕は犠牲になれるという考えは持っていますし、プロ内定選手になったからには、チーム全員が納得してくれる選手にならないといけない。そのなかで自分の色を出し続けないと周りから評価をされない。一つひとつのプレーに責任を持つようになりました」
 
 刺激を受けるたびに自分を見つめ直し、心身共に階段を着実に登ってきた。12月28日にはいよいよ高校最後の選手権が幕を開ける。

「慢心することなく、一つひとつしっかりと戦っていく。それしか考えていません」

 前橋育英の“心臓”は2連覇という言葉に惑わされることなく、地に足をつけて、その目をギラつかせながら全国のステージに立つ。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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