
いしいしんじの同名小説を原作にミュージカルアニメーション化した本作は、なにかに夢中になるとほかのことが目に入らなくなってしまい、街のみんなから”トリツカレ男”と呼ばれている主人公ジュゼッペが、風船売りの女の子ペチカに恋をする様子を描くラブストーリー。
初日舞台挨拶の際に高橋渉監督が感想をエゴサしていると明かしたことに触れ、「エゴサって言葉はなかなかアイドルは使わないと思うけれど、僕もやってます!」とにっこりの佐野。エゴサを通しても作品が幅広い層に広がっていることを実感しているという佐野は「小さいお子さんから、おじいちゃん、おばあちゃんまで愛される作品になっていることをうれしく思います」と笑顔で感謝を伝えた。

「想像の範疇を超えてみなさんの心に混じり気なくストレートに伝わって、いい心で劇場を出ている方が多い気がします」と感想を検索するなかで感じていると話した上白石は、そういった反響になる「自信はあった!」と力を込める場面も。身近な人からの感想も多いなか「ずっと連絡をとっていなかった高校の友達からも連絡がありました」と話した上白石は、「そういった形でも人と人とを繋げるいい作品になったと思います」と笑みを浮かべて報告した。
佐野演じるジュゼッペ、上白石演じるペチカはもちろん、森川演じるタタン先生を推す声も多く、人気のキャラクターになっているとのMCの紹介を受け、ステージに登場した森川は「公開から2週間経った舞台挨拶に参加するのは多分初めて」と笑顔。「劇場に足を運んでもらって、ご覧いただき、多くのリピーターさんが(感想を)発信してくれたおかげで、登壇することができました!」と会場を見渡しながら感謝する森川に、たくさんの拍手が送られていた。

イベントでは作中の印象的なシーンについて、場面写真を見ながらトークを展開するコーナーも。ジュゼッペがペチカに「友達になりたい」と話しかけるシーンは、様々な言語で話しかける必要があったため、とても大変だったと振り返った佐野。アフレコではメキシコ在住の上白石の友達とオンラインでレクチャーを受けたという。「レクチャーを受ける前からよどみなく話していた。(その言語が)話せるのかな?と思ってしまうくらいで騙されました。正しくジュゼッペだと思いました!」との上白石の言葉に、佐野は「騙されたと思ってくれたなら、ジュゼッペとしてはよかった!」と安堵。アフレコでたくさんの言語を話さなければいけないような機会はあるのかという佐野と上白石からの質問に「あります!」と即答した森川は自身が吹替えを担当するトム・クルーズの名前を挙げ、「スパイ的なところで。いろいろな言語を喋ったりするので、(このシーンのジュゼッペ)そのまんま!フランス語、イタリア語、スペイン語、中国語、それぞれの先生がつきます。前日眠れないくらい、結構不安になります」と告白し、佐野の心境が手に取るようにわかるとも話していた。

ペチカの前にガラス窓越しにタタン先生が現れるシーンについては森川が「切ないよね…」とポツリ。上白石のアフレコ時には森川の声がすでに入っていたそうで、「一緒のアフレコではなかったので、(存在を)想像するような形での収録。1枚ガラスを通しているような状況に似ていました」と心境を明かした上白石は「会えたよろこびと切なさのあるシーンでとても心に残っているシーンです」と説明していた。
一方、森川と一緒にアフレコができたという佐野は「いまだから言えるけれど、とても大変だった」と振り返る。とあるシーンでは「98パーセントくらいを森川さんがしゃべって、ジュゼッペは一言。噛めないから震えながらやっていた」と、ものすごい緊張感があったという佐野は、「(噛んだらいけないと)めっちゃ怖かったけれど、レジェンドのアフレコを現場で間近で見れて本当によかった。ほぼワンテイク、震えました。感動しっぱなしです!」と感激を伝える。そんな佐野の言葉に森川は「今日はいい日!」とご満悦だった。

イベントでは「今年の漢字」を発表するコーナーも。麻辣湯にハマったという上白石は「辣」と答え、今年声優デビュー40周年を迎える森川は「祝」と回答。「音」と書いた佐野は今年は2回声優の仕事をしたこと、そして楽器に触れる機会も多かったという理由で「音」を選んだと話していた。さらに3人はジュゼッペの相棒、ハツカネズミのシエロをモチーフにしたネズミのアートバルーン作成に挑戦したり、スパークバルーンセレモニーも実施。それぞれが作成したアートバルーンを手にフォトセッションにも応じた。
取材・文/タナカシノブ
